プロローグ
学園祭編です。
◆◇◆◇◆
入学から二ヶ月。六月になった。
紫苑は忙しい学校生活を送っていた。
うちの高校では、六月末に学園祭が控えている。学園祭では、クラスごとの出し物やクイズ大会、造形、担任似顔絵などがある。ここまでは、二日間にわたって一般公開される。
学園祭三日目には運動会がある。こちらは、一般公開されない。
これらは全て順位がつけられ、得点化される。そうして、クラスやブロックで競うのだ。
紫苑は1年5組。赤ブロックだ。赤ブロックには、2の7と3の5がいる。
目標は、ブロック優勝と学年優勝か。
総合優勝はさすがに三年生だろう。まだ一年生にそれは難しい。
ところで、紫苑は他のクラスメイトより忙しかった。
なぜかというとーー
「これから学園祭実行委員を決めます。各クラスから二人は出せとのことです」
委員長が言った。
面倒な仕事だと紫苑は思った。絶対にやりたくない。帰りも遅くなってしまう。
「誰かやってくれる人いますか?」
委員長君、そんなのやりたい人いるわけないでしょ。
なんて紫苑が思っていると
「はい! やりたいです!」
勇者がいた。というか聞き慣れた声だ。
愛梨じゃん。あいつは学園祭ガチ勢か。
「それじゃあ一人は平岡さんね。あと一人はーー」
◆◇◆◇◆
やっぱりこうなった。実行委員なんて面倒な仕事をやりたいという人の方が圧倒的少数なのだ。
愛梨以外の立候補がない。
「うーん、困ったな」
委員長は困惑した表情になった。
「やっぱりここはジャンケ「紫苑やろうよ」ン……」
愛梨のやつ! やりやがった!
「一条か。確か平岡さんと仲良かったよね」
おいおいおい。待て待て。
「ちょっと待って。俺は実行委員なんてやる気はない」
「なんで?」
愛梨が不思議そうに聞いてくる。
「なんでって……」
まず面倒。それと、帰りが遅くなると片桐の仕事が増えるし心配させてしまう。
が、そんなこと言えるはずもなく。
クラスの雰囲気は一条でいいんじゃないかという感じになってきた。
やばい。何とかしなければ!
「推薦でいいかな」
委員長がとんでもないことを言い出した。
お前さっきジャンケンにしようとしただろ! 推薦じゃあ俺確定じゃん!
紫苑の心の叫びも虚しく、クラスの大半は紫苑を推薦した。皆紫苑に実行委員を押し付ける気だ。
紫苑は、愛梨と委員長を恨んだ。
「紫苑、頑張ろうね」
「ふざけんなよ。何してくれてんの」
「いいじゃん。思い出になるでしょ?」
紫苑は片桐への説明と仕事が少なそうな役職は何かと考えることに必死だった。
◆◇◆◇◆
帰宅後。片桐と夕食を食べていた。相変わらず美味しい。
「片桐、今月末に学園祭があるんだけど俺、実行委員になっちゃった」
「そうなのですか? 頑張ってください。紫苑様ならきっとお役目を果たせるでしょう」
片桐は紫苑を励ます。
「それでね……帰りが遅くなると思うんだ」
それを聞いた瞬間、片桐がほんの少しシュンとしたような気がした。
「大丈夫です。こちらは任せてください。紫苑様は楽しい高校生活をお過ごしください」
「本当にすまない」
「いいえ、紫苑様に頼って頂けるなら本望です」
片桐は出来過ぎの部下だ。
◆◇◆◇◆
次の日、実行委員は会議室に召集された。基本クラスから二人。中には、三人来ているクラスもあった。
今日は、実行委員を各担当に分けるらしい。
紫苑は色々と考えた挙句、風紀委員が楽だと結論付けた。
なぜなら、風紀委員は当日の見回りだけだと思っていたからだ。実際にマニュアルにもそう書いてある。
結果、紫苑は風紀委員になった。風紀委員は学園祭時期だけ設置される。そもそもこの進学校に風紀を乱す生徒はほとんどいない。
だが、学園祭中は違う。うちの高校の学園祭は誰でも入場可能だ。老若男女誰でも入れる。
毎年五千人程度くるらしいが、その中には危険な人もいないとは限らない。
そういった人を見つけ次第、教員が待機する場所に報告する。また、規則違反などを取り締まる。
まぁ何も起こらないだろう。
このときの紫苑はそう考えていた。
〜続く〜




