第14話
◆◇◆◇◆
私の名前は、橘恵理。橘家次期当主で現役の女子高校生。
今年から組織に加入した。
私は前から組織加入を楽しみにしていた。もっと家を繁栄させたい。組織で一番になりたい。
そんな欲望があった。
だが、今年から組織に入るのは私だけではない。
奴もだ。
奴が私より上の位になったことについてかなり驚いた。というか激怒した。
なんであいつがNo.3なのよ!
私だって負けてないのに!
昔から私は一番にこだわっていた。
あいつのことを考えるとイライラしてくる。
あれ? 私ってばあいつのことばかり考えてる? そんなことはない!
そう自分に言い聞かせる。
そういえば、あいつと出会ったのはいつだっけ?
◆◇◆◇◆
恵理が小学校を卒業を終えた頃。まだ春休みだった。
私の住んでいる石川県は、雪がよく降る。今年も沢山降ったお陰で、まだ雪が残っていた。
そこに恵理の父、橘家現当主の橘泰宏が来た。
「恵理、明日東京で集まりがある。お前も中学生になるし、出席してみるか?」
「お父様? 私が出席してもいいの?」
「ああ。お前を見たいと言っている人もいるんだ」
「そう。じゃあ私も行く!」
橘親子は、東京の九条家に向かった。
◆◇◆◇◆
周りは、大人だらけだった。恵理が泰宏と歩いていると必ず声をかけられた。
「可愛らしいお嬢さんですね」とか「いくつなの?」とか色々と言われた。
少したじろぎながらも、恵理は質問に対し一つ一つ答えた。
さすがに疲れたので、恵理は壁際で休むことにした。
父の泰宏は、ひっきりなしに誰かと話をしている。人気者だなと思った。
そのとき、一人の少年を見つけた。私と同じくらいの歳だ。
どこの子かしら?
少し話してみようと決めた。
「ねぇ君! 名前何?」
「えっ⁉︎」
その少年は、いきなり話しかけられて驚いている様子だった。
「私は橘恵理。子どもが珍しかったから、話しかけてみたの」
「そうなんだ。僕は一条紫苑。よろしくね」
一条? どっかで聞いたことある。
あ! 前にお父様が言ってた。たしか、主要家だけど当主不在のため軽んじられているとか……
「一条君は長男?」
「うん。そうだよ」
ということは、いずれ組織に加入する。ライバルだ。
「私のことは恵理って呼んで。私も紫苑て呼ぶから」
「わかった」
「ねぇ紫苑、あなたもいずれ組織に入るんでしょ?」
「多分ね」
「私も一人っ子だから、組織に入る。あなたには負けない」
「う、うん」
このときから、恵理の紫苑に対するライバル心は芽生えた。
◆◇◆◇◆
それから、恵理も紫苑も中学生になった。
聞くところによると、紫苑は既に実戦訓練をしているらしい。
これは負けられない。私も強くならなきゃ。
だが、恵理には片桐のような専属の指導者はいなかった。
◆◇◆◇◆
中学二年の夏。久しぶりに紫苑と会った。メールや電話でなら連絡を取り合っていたが、直接会うのは初対面のとき以来だ。
「紫苑、久しぶりね。訓練を受けているらしいけど、調子は?」
「強くなっていると実感してるよ。片桐は、いい指導者だ」
「……片桐?」
「片桐のことは知らなかったのか? 俺に指導してくれてる人だよ」
「へー」
片桐という人には大して興味がわかなかった。
しかし、
「紫苑様! こんなところに居たんですか。探しましたよ」
随分綺麗な女性が紫苑に話しかけた。二人はかなり親しいようだ。
なんかモヤモヤする。
「紫苑、この人は?」
「あ、この人が片桐。俺の指導者だよ」
はい? この超美人が?
恵理は、驚きで十秒ほどフリーズしてしまった。
「恵理?」
「これはどういうこと⁉︎ 女の人じゃない!」
「そうだけど?」
「そうだけどじゃないでしょう! なんで女の人なのよ⁉︎」
「片桐が優秀だからだ。片桐以上の人を俺は知らない」
「紫苑様……」
紫苑は、随分と片桐を信頼しているようだった。片桐という女性も嬉しそうだし。
なんか悔しい。だから、つい口走ってしまった。
「女の人をはべらせてるなんて不潔よ! この変態!」
「なっ……」
いきなり変態扱いされた紫苑は、絶句してしまった。
だが、次の瞬間絶対零度の眼差しが恵理を貫く。
「ちょっとあなた、紫苑様に対して失礼でしょう」
片桐が怒っていた。怖い。声が出せない。
その場から逃げるように恵理は、走った。さすがに言いすぎた。
だけど、片桐にデレデレしてる紫苑も悪いのよ!
無理矢理自分を正当化した。
◆◇◆◇◆
その後、何度か紫苑と会った。変態扱いしたことはすぐに許してくれた。紫苑のみだが。
相変わらず片桐は私を暴言を吐く女だと見ているらしい。
紫苑が許してくれたならそれでいいわ。
何故かそう思った。
◆◇◆◇◆
「……懐かしいわ」
恵理は紫苑との記憶を思い出した。
まだまだ沢山の思い出があるが、今の私は過去に浸っている場合ではない。
紫苑の組織加入に関して、騒動が起きた。
そのときは、私が情報を提供してあげた。もっと感謝してほしい。
結局、ライバルを助けてしまった。
なんかシャクだ。
私も紫苑と同じくらい出世しなければ。
見てなさい。いつか貴方を追い越してみせるわ!
恵理は心の中でそう宣言した。
〜続く〜
今回は、恵理メインでした。
次回で過去編は終了です。