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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
第2章 過去編
18/66

第5話

過去編第5話です。



◆◇◆◇◆


 結局、今回の事件はこちら側の正当防衛が認められた。

 普通なら、やり過ぎだ。相手の7人のうち、最初に片桐に顎を蹴り上げられた奴を除いて、全員ほぼ再起不能になった。

 組織が警察に手を回したとも、考えられなくもない。

 だが、そんなことを紫苑が考えても仕方がない。

 当然、千冬の耳にこのことが入った。

 紫苑と片桐は、事件の詳細を話した。

 ーーといっても、紫苑はほとんど覚えていなかったが。

 片桐も、平気で嘘を付く人間ではない。当然、正直に話した。


 千冬は、激怒した。それを、紫苑も必死に宥める。

 それでも、今も片桐は怒られている。


「片桐! どういうことかしら? どうして、紫苑が怪我をしたの? あなたは何をしていたの!?」


 相当お怒りだ。


「……も、申し訳……ありません」


 片桐は、声を出すのも精一杯のようだ。紫苑ですら、縮こまっている。


「片桐、あなたには事前に話をしたわよね。あらゆる場合をにおいて、紫苑を守りなさいと」

「……はい」


 そうだったのか……

 紫苑は初めてそのことを知った。


「今回のようなことが起こることも、想定済みだったはずよ。

 それなのに、このザマよ」

 「……」


 ーーもう片桐のライフポイントは、ゼロに近い。


「姉さん、もうそこらへんでいいでしょう。勝手に暴走したのは、俺です」


 さすがに、紫苑もこれ以上は見かねたようだ。だが、


「いいえ、今回は一歩間違えば貴方の身が危なかった。それを防ぐことも彼女の役目だったの。私は、片桐を信頼してたわ。だから今は、凄く失望しているわ」

「姉さん! 少し言い過ぎでしょう。片桐も反省しているようですし、これ以上言っても意味はありません!」


 いつも紫苑の前では、へらへらしてる姉さんも今は真剣だ。一人称が、「お姉ちゃん」から「私」に変わってる。


「……貴方がそう言うなら、この辺でおしまいにしましょう。

 でも、彼女には罰を受けてもらうわ」

「……片桐はどのような罰を受けるのですか?」


 紫苑は、ある程度察しはついたがそれでも、聞くのは怖かった。


「……現在、片桐家は鷹司家の傘下にあり、両家は協力体制をとっているわ。

 でも今回、彼女は一条家次期当主の貴方を危険にさらした。その結果、貴方は決して軽くない怪我を負い、彼女は自分の務めを果たせなかった。

 これは、決してあってはならないことだったわ」


 片桐も、どのような処分が下されるか、覚悟が出来ているようだ。

 片桐の目には涙などない。

 あるのは、絶望感。


「……今回のことで、鷹司家は片桐家との関係を解消、つまり片桐家を鷹司家の傘下から除名します……」


 ーーやはりそうきたか。

 いや、そうせざるをえなかったのだろう。姉さんも辛そうだ。

(それにしても、厳しい社会だ)

 紫苑は、組織の厳しさを実感した。


 ☆


 ーー除名か……

 覚悟はしていた。自分は、それだけのことをしてしまったのだから。

 ーーこれからどうしよう。

 鷹司家という、大きな後ろ盾もなくなった。さらに、今回のことが組織内に知れ渡れば、片桐家の評判は池に落ちる。

 それも、時間の問題か。

 鷹司家や九条家などと、肩を並べるまで家を成長させたいと思っていたのはいつだったか。

 逆に悪くしてしまった。

 それだけではない。今回のことで、鷹司家も他の家から叩かれるかもしれない。

 除名は仕方ない。組織から追放されないだけマシだ。

 だが、片桐家は完全に組織内で孤立してしまった。

 ーーもう、絶望しかない。

 だけど、涙は流さない。

 今日で、紫苑様の側にいるのも最後だ。以前彼は、私の笑顔が一番好きだと言ってくれた。こんなことになるなら、もっと笑って過ごしたかった。

 また、泣きそうになる。必死で堪える。

 最後くらい、笑顔でいたい。

 彼が一番好きだと言ってくれた笑顔でーー別れを告げたい。

 病院で、彼が「あとは任せてくれ」と言ったときは、少し期待してしまった。

 ーーまだ、彼の側に居れるかもしれない。

 だが、現実はそんな甘くない。

 今は後悔と、彼への感謝でいっぱいだ。

 私を庇ってくれた。

 私を慰めてくれた。

 私の笑顔が一番好きだと言ってくれた。

 私を「仲間だ」と言ってくれた。

 彼はもちろん、千冬お嬢様のことも恨んでいない。

 もう心残りは無い。

 片桐は、千冬と紫苑に別れの挨拶をしようとした。



 ーーピピッ

 そのとき、紫苑のポケットの中にあった携帯が鳴った。


〜続く〜


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

もし、感想や改善した方が良いところがありましたら、コメントしていただければ嬉しいです!


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