表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
第2章 過去編
16/66

第3話



◆◇◆◇◆


 片桐が来て一年が経った。

 厳しい日々だったが武術の方も、実力がついてきたと実感している。これも片桐のお陰だ。

 一年間一緒に過ごして、片桐のこともよく知ることができた。

 相変わらず無愛想だが。

 それでも、少し微笑を見せてくれるときもある。本当に、綺麗な微笑だ。

 おそらく、あの表情が一番好きだ。


 ☆


 私がこの家に来て、一年が経った。

 正直驚いた。

 決して、楽ではないことも彼はやってのけた。最初は、もって半年くらいだと思っていたのだが。

 もともと、成績は良かったし運動神経も良かった。だが、一番凄かったのは彼の精神力だった。

 ーー少し見直した。

 といっても、嫌悪感がなくなったわけではないが。

 彼は、夕方まで中学校にいる。私は、高校にいる。彼は、陸上部らしい。

 家に帰ってくるのは、6時頃。そこから8時半くらいまで、勉強。それから、トレーニングや、私と武術や組織に関する勉強。途中夕食を挟み、再開する。全てが終わるのは、12時頃。それが、彼の平日のスケジュールだった。

 休日は、午後から実践訓練。さまざま状況を想定して行う。日々のトレーニングも忘れない。

 そんな生活を1年間出来たのが凄い。当然、遊びに出かけることは少なかった。

 そのぶん、実力はかなりついた。組織内では、まだまだ彼より強い人はいるが、あと2年ある。間に合いそうだ。ーーこのまま順調ならば。


◆◇◆◇◆


 その日紫苑は、久しぶりに友達と遊びに出かけていた。

 今は友達ーー愛梨と一緒にデパートにいる。


「ねぇねぇ、これ似合う?」

「まぁ、似合うな」


 愛梨に聞かれたので、応える。


「ビミョーな反応ね」

「大丈夫だ。愛梨は、何着ても似合うよ」

「……褒めてんの?」

「……一応」


 すると、携帯が鳴った。姉さんからだ。


「はい。どうしました?」

「紫苑、貴方が片桐と特訓していること組織にバレたみたい」


 いいじゃないか。何か問題あるのだろうか?


「それがどうかしました?」

「貴方のことをよく思ってない人達は、黙っていないでしょう。気を付けなさい」

「……それは、俺が襲われる可能性があると?」

「……ないとは言えない。むしろ、その可能性が高いわ。片桐にも伝えておくわ。もし、危険を感じたらすぐに逃げなさい。相手はプロかもしれない」

「……わかりました」


 そう言って、電話を切った。


「どうしたの?」


 愛梨が、心配そうに見つめてくる。


「……ごめん、急用ができた」


 俺が狙われているなら、近くにいる愛梨も危ない。


「……うん。仕方ないよ……」


 愛梨は、哀しそうな笑顔で言う。


「ホントごめん。埋め合わせはいつかするから」


 そう言って、デパートから出る。

 すると、今度は片桐から電話がきた。


「片桐?」

「紫苑様、大丈夫ですか?」

「姉さんから事情は聞いたよ。今のところ大丈夫だ」

「今、どちらに?」

「デパートを出たところだ。今から家に帰る。片桐も外か? 車の音がする」

「はい。買い出しに行っていたところです」

「そっちも大丈夫なのか?」

「はい、問題ありませ……っ!」

「片桐?」

「紫苑様、早く家にお戻りを」

「おい! 片桐!?」


 電話は、一方的に切られた。

 そんなことよりも、片桐の身が危ない。彼女は、焦っていた。

 いつもは、言葉に感情がなかったが今回は違った。

 ーー俺のせいで片桐を傷付けるわけにはいかない。

 仲間を何より大切にする紫苑にとって、それは耐えられないことだ。

 ーー買い出しと言っていたから、スーパーの近くか。それほど遠くない。

「陸上部を舐めんなよ」

 紫苑は全速力で走り出した。


◆◇◆◇◆


 片桐は、7人の男に囲まれた。

 彼女の片手には、食材の入ったバッグ。

 ーー面倒なのに巻き込まれた。

 彼女の顔は涼しい。相手がそこまで強くないとわかったからだ。これが、皆武闘派だったら、彼女も無傷では済まないだろう。

 ーーこの程度なら、大丈夫そうだ。

 彼女の頭をよぎったのは、紫苑のこと。彼は無事に帰れただろうか。

 ーー彼を嫌悪していたはずなのに……私も柔らかくなったな。

 そんなことを考えていると、一人が殴りかかってきた。


 くだらないと思いながら、片桐は殴りかかってきた男の顎を、長い脚で蹴り上げる。

 すると、他の6人が一斉に懐からバタフライナイフを取り出した。

 脅しではなさそうだ。上から、命を奪ってよいと言われているのか。

 片桐の顔から余裕が消える。油断するとグサリだ。

 片桐は、本気の殺気を放ち神経を尖らせた。


 ☆


 紫苑が見たのは、片桐が男を蹴り上げる場面。

 ーーあの程度では、片桐の相手にはならないな。

 だが、次の瞬間他の6人が一斉にバタフライナイフを取り出し、片桐に向ける。

 片桐の表情も強張っている。

 仲間が、傷付けられる?

 それはダメだ。


 ーーぷつんっ

 紫苑の頭の中の何かが切れた。



 

 紫苑は、このときのことをよく覚えていない。

 だが、その代わり片桐はこのときのことを鮮明に覚えているようだ。


〜続く〜


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

何か感想や改善した方が良いところがありましたら、コメントしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ