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とある男子高校生の裏事情  作者: 烏丸 遼
第1章 組織加入編
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第10話



◆◇◆◇◆


〜九条家・大広間〜


 早くも、この場に来るのは今年度2回目だ。今は、中央ではなく列の中にはいっている。

 序列順なので、紫苑の目の前には千冬が座っている。さっきからずっと、ニヤニヤと紫苑を見てくる。

 紫苑の後ろには、片桐が控えている。

 前回に比べ、人数が少ない。今いない人のほとんどが入院生活を送っているからだ。

 周りからの怯えるような、化け物を見るような視線。紫苑は、前回とは違った意味で居心地が悪かった。

 どうやら、ほとんどの当主たちから敬遠されてしまったようだ。

 すると、九条真美が部屋へ入ってきた。紫苑を一瞥し、クスリと笑った。


「さて、今日は急遽皆さんに集まってもらいました。もう知っていると思いますが、先日組織の反逆者による暴動が起きました。紫苑さんが率いる武闘派によって、鎮圧されましたが組織が崩壊しかねない事件になるかもしれませんでした」


 姉さんを睨むと、プイッと顔をそらす。

原因を作ったのは、姉さんなのだが。


「以後、このようなことがないようにしてくださいね。今回の事件では、紫苑さんが大変活躍してくれました。やはり、紫苑さんに代表を任せて正解でしたね」

「……ありがとうございます」


 一応、紫苑率いる武闘派が鎮圧したことになっているが、実際紫苑は何もしていない気がする。


「これで紫苑さんのことを否定する人もいないでしょう。この調子で、頑張ってくださいね」

「……はい」


 このとき紫苑は、悟った。

 姉さんと叔母上は、最初からこうなることを予想していたのだ。反対派が何かしらの行動に出て、それを紫苑が鎮圧することを。

 ーーやられた…… 最初から姉さんと叔母上の手のひらの上で動かされていた。

 だからといって、2人を恨んだりはしないがーーなんか癪だ。

 

◆◇◆◇◆


 その後、解散して一条家の部屋へ戻ろうとしたーーのだが、


「ちょっと待ちなさい!」


 後ろから聞いたことのある声が聞こえる。でも、面倒だから無視することにした。


「ちょっと! バカ紫苑! 聞こえてるの!?」


 うん。しつこい。片桐に至っては、声の主を睨んでるし。


「……何だよ、恵理」

「何だよとは何よ! 私の情報のお陰なのに! 感謝の言葉は?」


 これだから、お礼を言いたくなかったのだ。だが、恵理の情報のお陰で被害もなかったのは、事実だ。


「ありがとう、恵理。お前のお陰で俺も片桐も無傷で済んだ。感謝している」


 片桐も「ありがとうございます」と一応言った。少し嫌そうだったが。

 紫苑が本気で感謝の言葉を述べると、恵理は少し照れた様子になった。


「よろしい。最初からそう言えばいいのよ。これ、貸しだから」


 こいつに貸しを作ると、ろくなことにならない。片桐、舌打ちはよそうね。


「でも、お前も反対派に加わろうとしたんだよな?」

「結果的に計画に関わってないんだからセーフよ」


 まぁ確かにそうか。


「絶対あんたなんかに負けない。あんたがNo.3なら、私はNo.1かNo.2になってやる」

「……あの2人には敵わないだろ」

「……そうね……」


 素直に認めちゃったし。姉さんと叔母上に敵わないことは、理解してるようだ。


「俺は、部屋へ戻る。じゃあな」


 さっさと部屋へ戻って、片桐の淹れてくれる紅茶を飲みながらゆっくりしたい。


「……待ってて」

「は?」

「だから!……私があんたと同じくらいになるまで待ってて!」

「あ、うん」

「絶対だからね!」


 そう言って、恵理は走り去ってしまった。一体何だったのか……


「俺たちも部屋へ戻ろうか」

「はい」


 紫苑と片桐は、部屋へ向かおうとしたーーが、


「お兄様!」


 今度は、白雪の声だ。しかもちょっと怒ってる?


「白雪か。どうした?」


 すると白雪は、紫苑に抱き付いてきた。両手を背中に回し、ギュっと紫苑を抱き締める。発達途上だか、決して小さくない二つの双丘があたる。


「白雪?」


 名前を呼ぶが返事はない。

 柔らかい感触と女の子特有の香りで、理性を保つの大変なので、そろそろ離してほしい。


「……お兄様、心配しました。一条家が襲撃されたと聞いたときは、頭が真っ白になりました。それなのに、お兄様は私にお声を聞かせてくれませんでしたね」

「……ごめんね、白雪。あのときは、いろいろ忙しかったんだ」


 白雪は、本気で心配してくれたようだ。


「……一言、大丈夫だと連絡をしてくだされば、私も安心できましたのに」

「心配かけたな」


 そう言って、紫苑は白雪を抱き締めながら、彼女のシルクのような滑らかな黒髪を撫でた。

 すると、白雪も機嫌を直してくれたようだ。


◆◇◆◇◆


〜一条家プライベートルーム〜


 部屋へ戻ってきて、片桐と共にティータイムを楽しんでいた。


「紫苑様、先ほど白雪お嬢様を抱き締めて、頭を撫でていらっしゃいましたね」

「ああ、そうだな」


 別に不思議ではない。昔から、白雪は紫苑に飛び付き、紫苑は白雪の頭を撫でていた。改めて、確認することでもないはずだ。


「それが、どうかしたか?」

「……いえ……その……」


 片桐が両手を前に、もじもじしている。顔を赤らめ、上目遣いだ。

 ーーえ、何これ、めっちゃ可愛いんですけど!


「もしかして、お前も撫でてほしいの?」

「っ!……」


 当たりのようです。

 紫苑は、片桐の頭を撫でてあけだ。

 しかし、片桐はまだ不満そうだ。


「……抱き締めてください……」

「そこまで、するのか…」


 といっても、このままでは片桐の機嫌が悪くなりそうなので、抱き締めて、撫でる。

 なんだか、この前から片桐がやたらと甘えてくる。どうやら、紫苑の周りに甘えん坊が増えたようだ。

 全然嫌ではないのだが、白雪より大きい胸がもろに当たってます。片桐は、スタイルがいいから実際よりさらに大きく感じる。

 ーーこれはマジでやばい。頭がくらくらしてきそうだ。

 理性が吹っ飛びそうになったので、慌てて身を離す。


「……紫苑様、もっと……」

「……せめて、頭を撫でるだけにしてください」


 片桐は、少し残念そうだったが了承してくれた。というわけで、なでなで。

 髪がサラサラと気持ちいいので、こちらも癖になりそうだ。

 そんな心地良さを長い時間感じていた。


◆◇◆◇◆


 紫苑が九条家から自宅に帰る日、白雪と姉さんに会った。


「……姉さん、今回は思惑どおりになってよかったですね」

「あら? 何のことかしら?」


 あくまでシラを切るつもりらしい。


「何のことですか?」


 白雪も聞いてくる。


「いや、何でもない。そろそろ行くよ」

「お兄様、ちゃんと連絡くださいね!」

「わかった」

「あ! ずるい! お姉ちゃんにも連絡頂戴ね!」

「はいはい」


 そんなこんなで、帰路に着いた。


◆◇◆◇◆


 自宅まで、あと少し。


「組織加入早々、いろんなことがありましたね」

「そうだな。組織でやっていけるか、不安になってきたよ」

「紫苑様は、私がお支えします」


 片桐が、いつもの言葉を言う。


「うん。ありがとう」


 紫苑もいつものようにお礼を言う。


「今日は、疲れたな。明日からまた平和な日常を過ごそうか」


 そう言って、玄関の扉を開けた。



組織加入編 完


組織加入編は、これで終わりです。

次章は、過去編です。紫苑の過去に何があったのかーー

次もなるべく、早く投稿します!

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