第8話
◆◇◆◇◆
恵理からのメールを貰って一週間後。
紫苑の予想は、的中した。紫苑は、人材を集めやすい土日に仕掛けてくると思ったのだ。
今は、土曜日の午前中。敵は、紫苑が部活に行っていると思っているはずだ。
庭の木に、外部からわからないように設置した監視カメラにバッチリ映っていた。
紫苑は、監視カメラの映像をリビングのモニターに映す。敵は、確認出来るだけで20人はいる。
しかし、紫苑に情報が漏れ、一条家のセキュリティを考慮していない時点で、素人だ。
さらにこの一週間、紫苑は何もしなかったわけではない。一条家の抱えるボディガードを集めた。その数10人。数は少ないが、個々の力はかなり強い。その筆頭は、一瀬仁だ。
「……お客様が来たようだ。皆、持ち場につけ。敵には容赦するな。でも、殺すなよ」
紫苑の命令を受け、それぞれ持ち場につく。紫苑は、片桐と共にリビングで戦況を眺めることにした。
☆
仁は、背後から敵に近づく。敵は、気付いてないようだ。やはり素人。勝利を確信した。
ナイフを3本取り出し、投擲する。
見事、相手の足に命中。一本につき一人、ナイフが刺さった。これで、3人戦闘不能。
残りの2人は、それに気付き仁に突進してきた。
仁は、一瞬で2人のアバラや腕の骨を砕いた。
あっさりと終わってしまった。
仁は、紫苑が激怒していることに気付いていた。こいつらは、紫苑の逆鱗に触れたのだ。
仁は、ナイフが足に刺り血を流して呻いている3人の顎を、蹴り砕いておくことにした。
☆
その他のところも同じような感じだ。
結果は、紫苑たちの圧勝。当然だが。
結局、敵は30人程度いた。逃走3人、軽傷2人、その他は入院や手術が必要な重傷。
こちらの被害は、ほとんどなかった。
今回も弱かった。紫苑を捕まえるため、人材を温存しているのか、それともいないのか。
どちらにせよ、この程度では片桐を捕まえるなど不可能だ。もし、片桐1人が襲われたとしたら、軽傷くらい負ったかもしれないが。
捕らえた奴を少し拷問すると、あっさりはいた。やはり、首謀者は宮代殿のようだ。
ーー次はこちらから仕掛けてやるか。
紫苑は、部下に出かける支度をするよう命じた。
◆◇◆◇◆
〜宮代家〜
勉は、逃げ帰ってきた部下から報告を受けた。
紫苑に、情報が漏れていた。当然、計画は失敗。
ーー次は全力で潰しにいかなけれは。
勉は、部下を集めようとしたが、思わぬ来客によって阻まれた。
「宮代殿、そんなに慌ててどうしましたか?」
「……さ、澤登……」
「いきなりの訪問で、驚かせてしまったようだ。これは失礼」
「……澤登殿、どのようなご用件で?」
勉の額に冷や汗が浮かぶ。勉は、平然を装うのに精一杯だった。
「いや、それがですな。澤登家と協力体制を敷いている家が、襲撃されまして」
「……それは、お気の毒に…」
「ですから、宮代殿にもご忠告を、と思いましてな」
「……わざわざ、ご丁寧にありがとうございます」
「それと、もうすぐ一条殿がこちらに到着するようです」
「なっ!……」
「もう無駄です。あなたの部下も捕らえました」
「なんだと! 澤登殿にそんなことができるわけがない!」
いくら前武闘派代表だからといって、今の純一に反対派全てを捕らえるなど、不可能だった。
「一条殿から、武闘派を動かす権限を与えられまして」
「くそっ……」
「一条殿は、仲間のこととなると私のように甘くない。覚悟しておいた方がいいでしょう」
勉は、膝から崩れ落ちた。
◆◇◆◇◆
紫苑が、宮代家に到着すると武闘派の人たちが出迎えてくれた。
どうやら、澤登殿は上手くやってくれたらしい。今頃、勉はどこかに監禁されているはずだ。
「一条殿、宮代殿は捕らえました」
「澤登殿! ご協力感謝します」
純一に案内され、勉が監禁されている部屋にきた。
「一条殿、宮代殿も反省しておられる。あまり、やり過ぎないように」
「澤登殿、自分は今回のことを許すつもりはありません」
純一が心配そうに見つめる中、紫苑は部屋に入った。
部屋の中には、項垂れている勉がいた。魂が抜けたようだ。
紫苑の姿を確認すると、恐怖に染まった。
「宮代殿、私はあなたを許しません」
「……そうか……」
勉は、もう諦めている。
「罰を受けていただきます」
「……どのような?」
「ご安心ください。宮代家を失脚させようなどとは思っていません。少し、痛い目に遭ってもらうだけです」
そう言って、部屋から出た。
すると、武闘派の一人がきた。
「紫苑様、宮代家次期当主、宮代勇様がおりません」
逃げたか。だが、必ず捕まえ罰する。
「必ず捕まえろ。奴も首謀者だ」
「はい!」
そうして、紫苑は今回の計画に関わった人間に刑を執行する準備を始めた。
〜続く〜
組織加入編も終盤に差し掛かってきました。10話くらいで終わる予定です。