作中神話要素解説
当方基準のクトゥルフ神話要素解説と成ります。
本文のネタバレを含みます。
適宜お楽しみください。
作中神話要素解説
◇『死霊回帰』【魔道書】
『キタブ・アル・アジフ』のギリシア語訳である『ネクロノミコン』のペルシア語訳版をポルトガル語に訳した物。邦題が付いているが中身はポルトガル語。ペルシア語訳者はアトバラナ、あるいはガラパゴロス。日本には江戸時代初期に宣教師によって持ち込まれた。
紆余曲折あって鳥取大学に臨時で設立した民俗学研究室に秘蔵された。
一冊しか存在しない筈だが、戦後写本が出回ったようだ。
◇『二道草子』【魔道書】
餓鬼道と畜生道に関して書かれたもの。別名『鬼畜草子』。成立は室町後期。
その内容は屍食や死体姦、民間呪術など実践的な要素が多く、平安期より日本文化として開花した地獄絵図や死後解説とは明らかに一線を画している。
研究者によって『屍食経典儀』との類似性を指摘されている。
◇『宝龍権現経』【魔道書】
北関東から東北地方に分布するホウリャウ権現と言う龍蛇神信仰に関わる古文書。
ホウリャウ権現はおそろしく分布が広い割には全く謎の多い存在であると言う。
遠野物語の聞き取りの中でも登場するが、あちこちにあると言う事しかわからない。
古代の蛇信仰が関わるとされ、河川の氾濫を鎮める為に社はほぼ河川付近の丘に存在する。
この経典は宝龍権現にまつわる隠し神事を記したものであるが、一般的な神事とはかけ離れており、また呼び名も『いあ・ほろぐげん』と訛っている。
これは表向きの呼び名とは別の、古の支配者への神事であると言われている。
三陸沿岸には章魚と竜を混ぜたような海神伝説が多く、その流れを組んでいるとも言われる。
◇『東日龍海三郡史』【魔道書】
昭和二十年代に東北地方の豪雪地帯で発見された古文書。
写本とされており、原本は行方不明。
かつて日本の東の海に、三つの国が争いをしていた、と言う内容になっている。
特筆すべきは文中の一部はムー大陸での言語であるナアカル・コードと思われる文章になっており、この古文書が極めて重大な物である事を物語っている。
一時は偽書の烙印を押されて表舞台からは消えたが、価値を理解している一部の研究者によって研究が続けられている。
ナアカル・コード部分まで完備されている写本の価値は滅茶苦茶高い。作中では約三百万円だったが、おそらく完全写本ならばその倍は出てもおかしくない。
◇『ソトアマツコウキ』【魔道書】
日本史上最大の偽書と名高い竹内文書の研究書の一つ。
竹内文書自体は当時の社会情勢に対応した『日本中心説』を後押しするトンデモ歴史書で、学者からは無視されたが、民間や軍人に支持が多かった。
しかし、実はその内容は蛇足気味の皇室礼賛部分を除くと、宇宙真理に通じる部分が出てくるため、当時から注目していた人々も存在する。
この古文書は昭和初期の著名なオカルト研究者である怪人・内藤靖臣伯爵が竹内文書の蛇足部分を削ぎ落とし、真実を記した部分のみを編纂したものである。
その内容は皇室も日本も全く無関係であり、外天津神と呼ばれる人智を超越した存在と、中心に座する至高神の存在を記したものとなっている。
◇内藤伯爵【人物】
昭和初期に名前が現れるオカルト研究者。生没年不明。伯爵は自称。研究者であると同時に国内屈指の古文書・稀覯本の保有者でもある。
当時は世界的にオカルト古代文明論最盛期であるが、それは国家民族の優越を証明する為の一論法に過ぎなかった。
しかし内藤伯爵はその中でも少数派である真理追及の徒であり異端者だった。
特に1925年初頭に起きた奇怪な集団昏睡について、超古代文明とその信仰に関連付けた説を発表している。
彼が所有していた多くの稀覯本は内藤コレクションと呼ばれていたが、後に世界中に散逸した。
ホナド・タブレットが発見された宝那戸遺跡発掘の出資者の一人でもある。
◇星の智慧学術協会【団体】
作中では考古学を推していたが、実際は最先端医療・考古学・原子力発電まで幅広い研究を行うアメリカでも屈指の実力を持つ新興のグループ。
その前身は『星の智慧派』と呼ばれる新興宗教団体である。
もっともその実態はカルト教団であり、摘発・潜伏の繰り返しで原型は留めていない。
1970年代にとある神父が再建し、紆余曲折の後にモルモン教のスタイルを取り入れた2000年代型サイエンス系新興宗教と呼ばれるスタンスに変化する。
上位組織の宗教団体は正真正銘の邪神カルトで、下位の研究団体は無関係の研修者たちである。
最近、大学研究者と衝突が絶えないらしい。
◇トワイライト・シルバーズ【団体】
寄付金を効果的に運用する団体。しかしその前身は『銀の黄昏錬金術会』と言う団体であり、慈善事業を隠れ蓑にする正真正銘の邪神カルトだった。
1983年ごろに上位組織のカルトが壊滅し、下位の慈善事業部だけが幾つかに分派して継続していた。トワイライト・シルバーズはその一つである。
2000年代になってその規模はかつて以上に拡大し、アメリカ全土まで支部を広げた。大きな信頼の元、後進国などにも積極的に人材を派遣している。
実際は、壊滅した上位組織が魔術師の指導の元、新たな実践団体として運用されている。
寄付をしているセレブたちが邪神カルトの信者だとは言わないが、一方で退廃的な儀式に会員制と称して参加させたりしている。
最近、大学研究者との衝突が絶えないらしい。
◇黒乃ナイ【化身】
這い寄る混沌ニャルラトホテプの化身。詳しくは当方の著作参照。
◇愛宕氏【人物】
愛宕と言えば昨今は「ぱんぱかぱーん」なのだがもちろん違う。
説明するまでも無く、『星から訪れたもの』の老作家のローカライズ。即ちラブクラフト。
世の中のクトゥルフ神話作品には、病死したラブクラフトは実はミ=ゴの手術によって脳が取り出され、宇宙に向かったと言う物もあるらしい。
読んで気付かない人はこの小説を読んでいないとも思うが、念のため。
◇アーミティッジ女史【人物】
おそらくフルネームはアリシア・ヨグ・アーミティッジ。
◇叔父のトランク【マジックアイテム】
内側が女性の人皮で造られたトランク。これに魔道書を保管する事で、魔道書を保有する事で発生する超常現象を回避できる。ただし魔道書を狙って襲撃してくるカルトは人災なので防ぐ事はできない。
また、魔道書を所有する事で得られる特殊な効果、例えば旧支配者の念波を遮る、と言うような効果も発生しなくなる。
耐久力は普通のトランクと同程度。また、内側の皮が切り裂かれた場合、トランクの効果は消失する。
制作の為には特殊な儀式を行い、生きた女性のまま加工する必要がある。
もちろん、被害に遭った女性は死ぬ。
竹内文書は、電波な部分だけ取り出すとクトゥルフ神話になります。