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第八回 うっすらと浮かぶ思い出

「じじぃ、津村ヒカリと津村光って同一人物だと思うか?」

「うーむ……わからん」


 謙蔵はHBNo. 1のことをある程度は知っていた。謙蔵の親友である堀口駿はHBNo. 1が大好きで、そのチームの一つであるホワイトフェザーのことをよく口に出しているからだ。また、謙蔵の父親が有名なレーサーだったことも相まって、幼い時から知っていた。

 謙蔵はふと父親のことを思い出していた。

 彼の記憶に薄っすらと蘇る父親の記憶。酒好き女好きで、自分の嫁さんをよく困らせていた男。しかし、ボードに対する愛情は人一倍で、レースをしている姿が謙蔵は大好きだったのを覚えている。


 彼はレース中に命を落とした。

 謙蔵の父親が在籍していた時の当初のHBNo. 1は、軽いチャージのみが有効で、決められたコースを規定回数走るというスピード競技だ。このルールは定着しつつあり、十年余り、このルールが適用されてきた。しかし、協会組織が変わったと同時に、過激で過酷な内容にルール変更されていく。

「迷宮トンネル」と言われる真っ暗闇のトンネルが始めて導入された時のこと。事故はその中で起きた。

 タイミングよく衛生カメラが故障していたため、中で何が起きていたのかは分かっていない。謙蔵の父親はそこで事故死したのだった。

 謙蔵は父のようなレーサーになることが夢であったが、父の死をきっかけにその夢は消え去った。

 一時期はボードに乗らなかった期間もあった。しかし、気がつくといつの間にかまたボードに乗っていた。謙蔵の考え方も変わっていった。ホバーボードの楽しさを知ってもらいたいと思うようになり、フリースタイルの分野でボードを日々、磨いてきたのだった。


 謙蔵は椅子から立ち上がり、茂樹にタオルと着替えを置きに行くと伝えてその場を離れる。

 入間家は打ちっ放しのブロック状の一軒家だ。茂樹は隣の工場で寝泊まりしているため、謙蔵一人で暮らしている。一人で暮らすのには十分すぎる大きさの家だ。

 一階は、広々とした吹き抜けのリビング。左隅にあるキッチンは故障したままの状態だ。右端には階段があり、そこを上ると左に廊下がつながっている。その廊下からは吹き抜けのために一階が見渡せるようになっていた。

 謙蔵は靴のまま家の中に入る。というのも、一階は使われておらず、茂樹の荷物置き場として使われていた。歩くたびに埃が舞う。

 謙蔵は考えながら階段を上っていく。

 津村ヒカリという名前だけが唯一の情報。話からして津村光に接触するのはとても危険だ。同一人物という保証も一切ない。それでも、謙蔵はもしかしたら父親のことを何か聞けるかもしれないという思いから、津村光に会ってみたいと思い始めていた。謙蔵ももうすぐ十七。父親を亡くしてから十一年だ。自分の親がどのような人物だったのか、知りたいと思っても不思議ではない。

 階段を上るにつれてシャワーの音が耳に入ってくる。バスルームの隙間から湯気が上がり、シャンプーの良い匂いが漂っていた。

 謙蔵は自分の部屋の前で靴を脱ぎ、部屋の中でタオルと着替えを探す。


――サイズが合いそうな服がないな。


 謙蔵は部屋の中をひっくり返して衣類を探している。そもそもあまり私服さえ持っていなかった謙蔵にとって、今貸し出せる服は黒のスウェットだけだった。


 謙蔵はタオルとスウェット片手に部屋を出る。すると、彼の目の前に裸姿の彼女が廊下から一階の方を見ながら立っていた。

第2話までを今月中に出せたらいいのですが……。すでに原稿は完成しているのですが、いかんせん手直しするところが多くってorz


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