第12回 アラート
〝ビビービビービビービビー〟
警報音があたり一面鳴り響く。
謙蔵はその音ではっと飛び起きた。
――頭が痛い……ここはどこだ?
自分がなぜエアシップにいてなぜベッドで寝ていたのかなかなか思い出せない。
朦朧とする意識の中、なんとか頭をフル回転させ、徐々に記憶を辿っていく。思い出したくない記憶。最悪な一日。
部屋の壁に掛けられている時計の針は、かなりの時間寝てしまっていたことに気がつく。耳につく警報音と嫌な記憶からくる頭痛をなんとか和らげようと深呼吸をして、頭をさすりながら客室を出ようとする。客室の扉を開けると、乗組員の一人が走ってきてぶつかりそうになり、その男は謙蔵にガンをつけた。
「あぶねぇじゃねーか‼︎ ガキは引っ込んでろ」
「す、すみません。――あの、いまどうなっているんですか?」
「戦闘だよ、戦闘‼︎ ヤバい相手を敵に回してしまったらしい……。いけね、話してる場合じゃなかった。怪我したくなければ引っ込んでな」
乗組員はそそくさとその場を後にする。
謙蔵は先ほどよりも揺れるエアシップ内を、壁伝いで歩いていく。階段を登り、声がする方へ向かうと、開けた一室に数人が集まっていた。そこの中央に何でも屋のリーダー、ファギーは難しい表情で立っている。
「リーダーどうしますよ? 大空賊『ブラックスパイダー』って言えばかなり有名ですよ。俺らよりも規模が数倍は大きい飛空艇ですよ……」
「うるせぇ。いま考えているんだ‼︎」
その時、操縦席に接続された(はめ込まれた)第三世代型アンドロイドを通して無線が入ってくる。
『こちらブラックスパイダーのエリック・シュナイダー副艦長だ。規定の時間になった。ブツを潔く引き渡してくれることを願うんだが、どうだろう?』
「どうせお前ら、ブツを渡してそれで終わりだなんてオチはないだろ。くそったれ、やってやる‼︎」
『そうか……。今回我々には依頼人がいてな。何でも屋のファギー一味がしくじった時の保険として雇われたのだよ。そしてもう一つ。ファギー一味がブツを手に入れた場合、一味を殲滅してブツを届けろとの依頼人からのご命令があるのだよ』
「な、なんだと‼︎」
『あんたらも気の毒だ。足をつけないための繋ぎ役として使われたのだからな』
「攻撃できるものか‼︎ こっちにはブツがあるんだぞ‼︎」
『その機械人形、ちょっとやそっとじゃ壊れないシロモノだと聞いているんでな。悪いが派手にやらさせてもらうぜ。いつか地獄で会おう。じゃあな』
無線が途切れた。数秒間の沈黙が流れる。すると、
『ミサイル接近中、ミサイル接近中でス。直撃まで三、二、一……』
衝撃があったと感じたのは最初だけだった。体は天井にぶつかり、機材はそこら中に投げ出される。
ファギーは頭から血を流しながらも立ち上がり叫ぶ。
「せ、戦闘準備‼︎」