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第六話:先を読んだ者

マキシムが率いている本隊が動き出す音に反応してにソルディスは奇襲部隊への攻撃を止めた。

彼は逃げ惑う兵たちを深追いしないように指示を出すと進軍する方向を変え、二つ目の伏兵が潜んでいる茂みの裏から一気に切り込んでいく。

驚きのあまり武器の準備も出来ぬままに次から次へと兵が切り伏せられる。それも狙い済ましたようにその部隊の中核となる人物ばかりを狙って、ソルディスの剣は息の根を止めてゆく。

残る兵は、頭脳となる人物を失い、烏合の衆が如く四方八方へと茂みから飛び出してゆく。

周りを確認もせずに飛び出してきた敵兵を、弓兵達は確実にしとめていく。

「伏兵と奇襲部隊の敗退で、本隊の足並みが落ちてくれると助かるんすけどねぇ」

ソルディスの横でプライムは苦々しげに口を歪めながらぼやいて見せた。

奇襲部隊ごときの数の相手ならばこちらの被害はそうないだろうが、本隊同士がぶつかればそう簡単には事はすまないだろう。

一番早い馬をクローリーとウェネットにあてがって使者に立ててあるが、援軍がつく時間は準備の期間を合わせて考えて、どう早く見積もったところで7日ほどかかるはずだ。

それまで本隊が到着しなければ・・・陣を構えてこちらを燻す作戦に出てくれれば、こちらの勝ち、

だが、そのまま突っ込んできたら・・・

(副隊長の顔に泥を塗る真似だけはしたくないな)

この村に留まる兵たちは隊長であるランズールは勿論、この年若い副隊長にも多大な恩を感じていた。

そして、彼を守るためには何としても・・・命をかけても惜しくないぐらいは思っている。

「敵の本隊は足を緩めないだろうね。彼らも俺たちが使者を放っているのはわかっているはずだ。奇襲ともいえる総攻撃を成功させ、ここにいる部隊を駆逐するためには容赦はしてこないだろう」

ソルディスは面白くなさそうに近場の兵を切り捨てながら呟いた。

「だけど、手は打ってある。4日前に出した使者がどこまでやってくれているかが勝負の分かれ目だ」

ここから狼煙をあげる物見台までは1日もなく到着できる。それを見て、ランズール卿とオージェニック卿がどれほどの速さで着てくれるのかが本当の勝負の分かれ目になるはずだ。

「いつのまにそんなの出してたんです?」

プライムは目を丸くしながら隣にいた自分よりも身体の小さな副隊長を見やった。

「ここ数日、バニッシュが居ないのはそのせいだよ。兵を行かせるわけには行かなかったからね。俺からの書状を渡して物見台に行かせた。報酬は『本屋のキャシィを紹介しろ』だそうだ」

バニッシュはこの村で何でも屋みたいなことを商っている青年だ。すばしっこさが売りで、情報収集から犬の世話まで何でも引き受けてくれる。

「キャシィか・・・マキシムの奴が目くじらを立てるんじゃないっすか?」

本屋のキャシィはマキシムの年の離れた妹だ。彼は彼女のことを目に入れても痛くないほどに可愛がり、自分のお眼鏡に叶わない青年が彼女に近づこうとするのを悉く排除していた。

現在、彼女に近づく『許可』がおりているのはこの目の前の副隊長のみだ。

「紹介するだけさ。交際するかどうかは俺の知ったことじゃないし。それにその後、マキシムにも紹介したむねを伝えればどうにかなるだろ」

しれっとのたまうソルディスの言葉に周りの兵は苦笑してみせる。本当にこの年若い副隊長は食えない人物だ。

「それじゃ、今度、俺が報酬を要求するときは仲を取り持ってくれと頼みますよ」

二人の会話を聞いていたザックはおどけた口調でウインクをする。

ソルディスはそんなザックのそばに一気に詰め寄ると、彼の周りにいた敵兵2人を瞬殺する。

「よそ見してると怪我するよ。そんな相手に女性を紹介するなんてできないな」

「あいいい・・・」

ザックは肩をすくめて見せると、自分の役目を済ませるために敵の荷駄の元に駆けていく。

陣形を崩されただけでなく、荷駄まで奪われるわけにはいかないと敵も必死に応戦してくる。あまりの抵抗に苦戦の色をにじませるザックをフォローするようにソルディスとプライムは倒れている敵の弓兵から武器を奪い、的確に力を削いでいく。

「本隊まで後退せよ!」

ソルディスの軍の猛攻に、荷駄を守っていた将が苦渋の決断をする。その声に、敵兵たちはいち早く反応すると我先にと本隊がいる方向へとかけていった。

「これで、とりあえずこちらの作戦は一旦終了だな。荷駄の検分の後、次の作戦に入るから少しの間休憩してくれ」

ソルディスは少し息の上がっている瓶子達に指示を出すと剣を鞘に収め、村の方角へと視線を向けた。

(さて、あっちはどういうふうに動くかな)

誰にも気づかれないように口元をゆがめると、彼は今手に入れたばかりの荷駄を検分するためにザックの元へと歩いていった。

先を読む者、要するにソルディスのことです。

彼は5日ほど前にすでにある程度の情報を得て、先手を打っています。

あまり地形のことを考えずに文章を考えたので、一度、紙面に地図を引いておかしい所を修正したいとは思います。


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