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第四十話:王女の旅立ち

ブロージェカからベネシェンドへと続く街道を3騎の騎馬が移動していた。

うち二つはようやく青年期へと向かおうとしている少年・スターリングとまだ幼さが顔に残っている王女・シェリル、そして残りは長い黒髪を後ろにしばっている青年・ケイシュンである。

「この辺りからさらに南に下ると人買いが出てくる。子供だけで旅をしていると確実に狙われるから、行動には気をつけて」

「わかったわ」

小さい頃から旅慣れているスターリングの言葉に、シェリルは軽く答える。

どこか楽しさを隠しきれてない少女の様子にスターリングとケイシュンは心の中で溜息をついた。

少年はシェリルを彼女の末兄の所に連れていくのを未だに迷っている。彼ら兄弟には何か人に言えない事情があるのは見て取れる。この旅に同伴してくれたケイシュンや彼の一番上の責任者たる将軍はそれらを知っているから、最終的にシェリルを彼のもとに連れていくかの判断を自分に委ねた。

なぜ、彼らがこんな重い決断を自分に託してくれているのかわからないが、任されたからには責任をもって見極めるつもりだ。

「そういえば、名前はシェリルのまんまでいいのか」

唐突なケイシュンからの問いかけに、シェリルは首を傾げた。

しかしスターリングには思い当たる案件があるのか、「そうですねぇ」と思案顔になった。

「シェリル・エイシェスじゃだめなの?」

未だどうしてそんな話題が出るのかわかっていない彼女の科白セリフに、二人はとりあえず馬をとめて神馬を繰るシェリルの元へと集まった。

「シェリル、君はエイシェス隊長の仕事をわかってる?」

真剣に訊ねてくるスターリングに、彼女は「それぐらいわかってるわ」とばかりに不満そうな顔をした。

「兄さま……じゃなくて、兄さんの仕事は偽物王子を退治することでしょ?」

単純に答えを告げる彼女にケイシュンとスターリングは大きく溜息をついてみせる。

「そう、偽物……でも、本当に偽物かどうかをわかるのはグレイという人物を知っているルアンを含む俺たちのような人間や大将軍、それにグレイの部下たちだけだ」

クラウスの正体を公表できない以上、彼がやっていることは貴族達にとり『下賎なる者が利己的に王族を狩っている』ようにも映るはずだ。すでにブロージェカに逃げ込んでいた下級貴族たちは、そう裏口を叩いていた。

「貴族の中にはグレイは本当は本物の皇族を狩っているのではと、目の敵にしている者も多い」

その妹が兄や大将軍の庇護から抜けて旅に出たなどと知れれば、『グレイ・エイシェス』を苦しめるための絶好のチャンスとなる。

実際、どこからか出立を聞きつけた貴族が流れの傭兵を雇い、彼女を捕獲しようと画策していた。町を出たところからつけてきていたその人物を、彼女の気の付かないところで金を攫ませて追い払ったのはスターリングだ。元々、貴族からの仕事に乗り気ではなかった傭兵は、貴族の報酬よりも少なかったが、少年の申し出を快く引き受け、適当に処理をしてやると確約してくれた。

今回の件は『運よく』そう進んだが、次がそうなるとは判らないのだ。

未だそれらの事を理解できていない彼女の態度に、今度はスターリングが言葉を続ける。

「隊長が排除した『王子』たちを使ってわざと資金を集めようとしていた貴族やにとり、隊長の存在は目の上のタンコブに他ならない。それは判る、よね?」

スターリングの言葉に彼女はようやく事の重さを理解し、小さく頷いた。兄が任務として引き受けていることが、どれほどの危険を伴うことか改めて見せ付けられる。

「そういえばソリュードは、今現在、『ソリュード・アドラム』だったよな」

ふと思い出したようにケイシュンが言うと、スターリングはそういえばと手を叩いた。

クラウスの次はシェリルにスパンです。

第三十三話の『王女の答え』からすぐに書き始めていた部分だったのですが、時系列を考えて2つ程、別のエピソードを挟んでから再度書き直しました。

少年・少女と人間と関わりを持たない龍族の一行……目立つことこの上ないメンバーです。


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