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第三十六話:覆面の剣士

「副隊長っ!ご無事ですかっ!!」

剣が交わろうとしたその時、大きな声が割って入ってきた。

視線を移すと、明らかに手だれに感じる青年が自らの腰鞘から剣を抜き放ちこちらに駆けてくる姿が映った。

(せっかく、久々の大金が目の前だってぇのに)

自分達と相手との戦力差は確実に負けてしまっている。この現状で攻めて、一味を全滅させるような真似など彼にはする気はなかった。仕方なしに見切りをつけた頭領は、さっさと撤退の指示を出す。それと同時に案外統率の取れた彼らはあっという間に村から遠ざかっていった。

ソルディスはその後姿を冷静に見つめてから、剣についていた血をぬぐい、腰の鞘に戻した。

「マキシムが早く追いついてきてくれたおかげで、無駄に殺さなくて済んだよ」

ふぅと息を吐きながら応えるソリュードは、大きなため息をついてみせた。

「敵や賊は殺してかまわないですよ、自分の身さえきっちり護ってくだされば」

「マキシムは時々、物騒なこと言うね」

補佐官の物言いに、ソルディスは少し呆れる。相変わらずこの補佐官の心配事の第一位は副隊長ソルディスの安否のようだ。

(前はもうちょっと過保護じゃなかった気がするんだけどな)

そう昔を懐かしんでいると、マキシムはふぅっと大きくため息をついてみせた。

「自分を一番大事に護ってくださるなら、こんなこと言いませんよ」

彼自身も自分が護るべき副隊長が呆れていることを感じてはいるが、その態度を改めることはしない。心配しすぎるほどぐらいの方がこの少年に対しては丁度いいのだ。

そんな二人のやり取りを横目で見つつ、ウィンザは剣を鞘に戻して手短な幹へ体を預けた。

長い間、子供を庇いつつ逃げ続けたせいで、息があがっている。覆面の下から洩れる息は、少し熱かった。

「えっと、あなたがウィンザさんですか?フレイルの知り合いの……」

息を整えているウィンザに、マキシムが探るように訊いてきた。その瞳にいぶかしむ様な光が見える。

(確かにいきなり覆面の男が現れたら怪しい、か)

彼はマキシムの態度に納得すると、すぅっと背筋を伸ばして目の前の青年に手を差し出した。

「ウィンザ・バーキットです。連れの子供たちを救ってくれたこと、感謝します」

変わった風貌をしながらもどこか品のある答えをした青年に、マキシムは警戒を強めた。

しかし、ソリュードの気配からは彼への敵意や警戒感が不思議なほどに感じられない。とりあえず彼は態度を改め、差し出されていたウィンザの手をとり軽く握手をした。

「マキシム・ビルウォットだ。そして君に加勢をしたのが、うちの副隊長で」

「ソリュート・アドラム、さっき紹介したよね」

マキシムの言葉を切ってソリュードはもう一度名乗ると、軽い感じに手を差し出した。

「この辺りを防衛を任されている方ですね。ランズール隊の副隊長をなされている素晴らし(くおもしろ)い方だとフレイルの手紙に書いてありました」

言外のニュアンスを残しながらも、握手をするウィンザにソルディスは小さく嘆息する。

そんな少年の様子に彼は覆面から唯一見ることのできる、綺麗な深い青の瞳を細く眇めた。

「おーい、マキシム、ソリュード、ウインザ、無事かぁ?」

そんな三人を呼ぶ間の抜けたフレイルの声が、上の方から響く。彼は先ほど助けた子供を後ろに庇いながらこちらを覗いている。

「もう大丈夫だよ」

ソルディスが手を振ると、子供達は我先にと駆け下りてきて未だ疲れを隠しきれていないウィンザに抱きついた。

「「無事でよかった」わ」

腹部に圧迫を受けたウィンザは少し咳き込みながらも、そんな小さな彼らの感謝に優しく目を細めたのだった。

ウィンザは怪しい格好をしていますが、中身は優しいお兄さんです。

とりあえず、場面はまたブロージェカへと移動します。いろんな人物が移動を開始します。

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