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第三十一話:王女の主張

手紙に書かれた短い文章にガイフィードは二人の言葉の意味を改めて理解した。


『貴殿よりお預かりしているソリュード・アドラムの推挙にてそちらへ軍師を紹介したい

 詳しい内容は後日、定期便にてお送りする、連絡請う。 K.オージェニック』


目の前の王女はこの文章を読んで、末兄王子ソルディスの今の居場所を知ったのだろう。

王子が一人旅立ちを決めたあの場で彼は『オージェニック卿に自分の仕官先を紹介して貰う』と言っていた。ゆえに彼女は末兄が南方ではない『何処か』へ仕官しているのだと信じていたのだ。

もちろん、軍に属しているグレイやルアンリル、目の前のケイシュンもソルディスの仕官先はすでに知っている。

だが彼らは一様にして彼女へその場所のことを知らせていなかった。つまり、彼女がそれを知り、彼の元へと旅立ってしまう危険性を根源から排除していのだ。

実際、この執務室の主であるガイフィードも副官・ストラウムも同じ考えでいた。

(しかし偶然にも伝書鳩の手紙を読み、その仕官先を知ってしまったこれは、偶然としてもできすぎているな)

ケイシュンが軍の施設にシェリルを連れてきたのは、この後をどうするのか大将軍とも呼ばれるガイフィードに判断を仰ぐためだ。そうでなければ、ケイシュンがグレイが外部に出ている時に軍施設へと彼女を連れてくることなどないだろう。

(さて、どうするべきか)

最近の王女は、昔馴染みに囲まれて暮らしている次兄といるよりも、自分達を護るためにたった一人で旅立ち、暮らしている末兄の元へと行きたいと思っている。

次兄であるグレイ───クラウス王子からしてみれば『何故、旅立ったのか考えろ』という所だろうが、王女にはそこまで考えが巡らない。

(それにソルディス王子が推挙している軍師というのも気になる)

あの王子のお眼鏡に適うとはいったいどういう人物なのだろうか。勿論、自軍の軍師として迎え入れることはやぶさかではない。

(とりあえずは、詳しい内容の書面が来てからこちらに来てもらう旨の手紙を出すか)

その場合にはこちらから迎えの人間をやらねばならないだろう。

(いや、これはいい機会かもしれない)

王女の不満と、何よりもこれからの対処などを含めて、この機会は最良に感じた。

ガイフィードはそこまで考えを巡らせてから、目の前で待っている少年達に視線をやった。

「オージェニック卿からの連絡、届けてくれて感謝する。キャレット少尉には迎えに行って貰うかもしれぬから、その用意をしておいてくれ」

急な申し出に、スターリングは目を丸くしたが、すぐにそれを理解するとぴっと背筋を伸ばして承諾の敬礼を取った。

「私もっ!」

スターリングが命令を受けたのを見て、シェリルは慌てて自分も随行すると申し出た。あちこちで起きている『偽王子』による事件の解決のため、兄・グレイは暫く帰ってこない。こういう時でないと自分がソルディスの元に行く機会はなくなってしまう。

「シェリル、これは遊びじゃ……」

「わかってるっ!わかってるわっ!だけどっ!!」

嗜めようとする少年に、シェリルは身を震わせながら言い募る。

「私は、ソリュート兄さまの所に行きたいの!会いたいの!どうして駄目なのっ!?」

声を荒げる少女にスターリングは「だからっ!」と言葉を遮ろうとした。だがそんな彼の口を、後ろで見守っていたケイシュンが大きな手で塞いだ。

(なんでっ!?)

自分がそうされるりゆぐあ判らず、スターリングはぎっと自分の口を塞いでいる龍の副長を睨みあげる。

しかしケイシュンの視線で諭され、仕方なく「わかりました」とばかりに肩を落とした。


シェリルファーナ、未だ、別れの際の王妃ははおやの言葉を実践できていません。

この状態だとシェリルはわがままな王女ですが、それでも人一倍、兄弟が大切で、その兄弟が一人でいることは耐え難いこと、というわけです。

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