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第二話:初恋の思い出

彼が一番最初にベネフ村に現れたとき、村はディナラーデ卿の配下の軍の侵攻というなの略奪を受けて陥落の寸前だった。

要塞を有する村ではない。いつ、落ちたところでおかしくなかった。

だがその青年はふらりと村に現れると戦いに慣れない村人に奇策ともいえる作戦を与え、見事にディナラーデ卿の軍を退け、その軍団のトップを捕獲することに成功した。

他にも越境をしてきたレナルドバードの兵隊崩れ達の攻撃を受けていたピューリットの街や、度重なる野盗の略奪を受けていたエッツジェイドの街など、攻撃してきたものを追い払うだけではなくその首領を捕まえ、その後の防衛策を築いていく彼はすでに南方ここでは有名になっていた。

報告書でも、彼の手腕は称えられ、もしこの村に来ることがあれば軍に入るように説得して欲しい旨がかかれていた。

「天才的、軍師、ねえ」

どういう人物なのか、会ってみたい。彼がしく布陣はどことなく異母兄の教えてくれた作戦に似ていたから。

「まあ、俺たちにはアドラム副隊長がいるから必要ないけど」

人懐っこい笑みを浮かべる少年が、そう言うと彼らは「確かにそうだ」と笑う。

「誉めても、何もでないぞ」

ソルディスは本を読むのを完全に諦めて、小さな冊子を地面に置いた。

「何もでなくていいです。女の子、紹介してくれたら」

「それか、お前の恋愛話とかきかせてくれたら」

「そういや副隊長からそういう話ききませんよねぇ」

「っていうか、ちゃんと初恋してるか?」

次々に好き勝手に宣う彼らにソルディスは文句を言おうとした。

「俺にだって、初恋ぐらい・・・」

そこでソルディスの言葉が止まった。

初恋────、そんなモノしたことあっただろうか。

ふと、思い出したのは幼馴染みの義姉である少女だった。王都陥落の日、中庭の茂みの中で自分の腕の中で震えていた少女。怖かっただろうに気丈に振舞い、『大丈夫だから』という自分ソルディスの声にこくりと頷いていた。

今思えば、初対面に近い相手を純粋に守ろうと思ったのはあれが初めてだった気がする。

「おい、どうした?黙りこくって」

言葉を切ったまま考え込んでしまったソルディスに回りの人間が不思議そうな視線でこちらを見ている。

「いや、たぶん、あれが初恋だったのかもというのを思い出していて」

「お、むっつりすけべかぁ?」

少年の一人がにやりと笑うとみんなが一斉にソルディスに詰め寄る。

今まで村中の女の子にもてまくっているくせに、誰一人として真っ当に相手にしないソルディスの情報を得るようにと、彼らは自分の女友達からせつかれていたのだ。

「どういう子?」

「友人の義姉あねだよ。美人系統の顔立ちだけど仕草は可愛かったと思う」

友人レティアも美人系では有るが壊滅的に女らしさがない性格をしていた。しかし彼女はそんな義妹とは正反対で少しだけ触れたその精神も、立ち居振舞いもすべて可愛かった。

「なんだよ、あやふやだな」

「一緒にいたのはたった二日だけなんだ。その後、行方知れずだから」

いや居場所は知っている。だがそこに入っていく事が自分には出来ないだけだ。

しかし、彼のその一言で回りは適当な誤解をしてくれたのか、「まあ、落ち込むな」とかいろいろと慰めの言葉を掛けてくれる。

ソルディスはそんな彼らの誤解を解こうとはせずに小さく嘆息してみせた。

「それで、俺の情報でどこの女の子を落とすつもりだ?」

お前たちの考えなどお見通しだとばかりに言う彼に今度は回りの少年たちが言葉を詰まらせた。

「まったく、そんなことだと思ったよ・・・そんなことで」

ソルディスはそこで言葉を切ると急に本を持って立ち上がった。無言で耳を澄ませどこか遠くを見つめる瞳で辺りを窺う。

「馬の蹄・・・馬車隊もついている。本格的な攻めだ」

彼らには聞こえない音を聞き、感じない風景を見る彼の言葉に全員が緊張感を漲らせる。

その言葉を裏付けるようにソルディスの補佐をしている青年の部下が彼の元へと全速力で走ってきた。

「副隊長!敵襲です!!」

叫び声に近い報告に彼は目の前の少年たちに指示を出す。

「わかった、グレッグ、ザック、馬庭に言って馬の準備を。ビクターとプライムは村長の家に言って村人への対応の準備を。後は俺についてきて、マキシムの報告を元に作戦会議をする」

「了解×7」

年若いとはいえ、経験を十分に踏んでいる彼らはすぐに礼をするとそれぞれの持ち場へと走っていった。

いきなり初恋話です。

ソルディスの初恋の相手はルミエールのようです。

話を聴いている少年たちはまさか『友人』までも美少女だとは思っていません。

話としては少しだけ風雲急を告げてきました。

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