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第二十二話:指揮官の思惑

トラント卿の腹心・ブランジッド卿は先頭を切って戦うまだ幼さの残る少年とそれを守るように戦う青年二人を苦々しく見ていた。

またあの悪魔のような強さを持つ少年が自分たちの行く手を邪魔する。

先程本陣に戻ってきたトラント卿の配下としては異色の存在である老将ジャグレイは機知に長ける人物だと評価しているようだったが、それは得てして自分たちにとり厄介な人物であるといっているのと同じである。

(それにダッチェンボルト卿のこともある)

今回はやけに張り切ってジャグレイに引っ付いて奇襲組に参加していた奴が、『傭兵』と一緒に連れて行かれたと報告されている。

(あいつは知らなくてもいい情報を持っているからな)

口が堅い人物だとは思っているが、自分の命が関わればそれもどうなるかわからない。それを証拠に今現在、傭兵たちの動きが鈍くなり出している。

とくに右舷を任していた『グローブナー』とか名乗る傭兵師団長の部隊は完全に武力を放棄しているようにも見える。

「それもこれも、あの小僧が何かを吹き込んだからか」

唸るようなブランジッドの声に傍に控えていた側近が怯える。それを気にすることもなく、彼は目の前の戦場で戦い続ける少年を睨みつけた。

見目だけは麗しい少年だ。それだけの美貌をもっているのなら色小姓として控えていればいいものを、自分たちに仇するなど言語道断だ。

(この戦が終わったら、刻み殺してやる!いや、手足の腱を切って、本当の色奴隷にしてやる)

下卑た考えを胸にブランジッドは側近が差し出していた槍をその手に取った。




ソルディスは妙な視線に悪寒を感じ、騎兵の中心へと視線を走らせた。

視線を向けてきたのは先頭の騎兵の中にいる壮年の将だ。

(……変な想像をしてんな)

頭に送られてくる彼の強烈な『思念』のヴィジョンはあまり口では言い表せられない、というか口にしたくもない下品な想像だった。

もともと読もうと思えば簡単に他人の個心の奥の置くまで読み取れる彼にとり、一番面倒なのはあからさまに『きもち』を垂れ流す連中である。とくに怒りと共に考えをしているときはその妄想はかなり強烈に自分の心に届く。

(うざい……)

少年は流れ込んでくるヴィジョンを意志の力で何とかシャットアウトすると、ぐるりと辺りを見回した。

大分、人が死んでいる。自分たちが切り伏せたトラント卿側の人間は勿論のこと、自分が指揮している部隊の人間も大分、屍や重傷者として地面に伏せている者がでている。

(さっさと決着をつけないと、更に被害がでる)

ソルディスはもう一度辺りを見回した。その視線の先に鞍をつけた馬が主もなく歩いている姿があった。たぶん先行の騎兵が乗ってきたものだろう。主はすでに野に臥しているのだろうか。

(ちょうどいい)

ソルディスは近場の兵が持っていた槍を拾い上げると駆け足で馬に近づき、見事な跳躍でそれに跨った。驚いた馬が嘶きを上げて振り落とそうとするのを、手馴れた手綱さばきでいなすとまるで最初から自分の馬であったかのようにその馬を繰り始めた。

「副隊長っ!」

突然の動きに慌てたマキシムがその後を追おうとするが、もとより馬と人の足では速さが違う上に未だ自分たちに切りかかってくる歩兵と対峙しなくてはいけない。

盛大に舌打をしたマキシムにフレイルは諦めたように

「ビージェットに文句を言えなくなっちまったな」

と嘆いてみせた。




歩兵だらけの戦場から馬を駆り駆け出してきた少年の姿に、騎士団は少しひるんだ。

先程から自分たちの部隊を相手に鬼神の如き強さを晒している少年だ。最初に聞いた話では単なるランズール卿の色小姓だと聞いていたのに、この強さは反則的である。

それでも向ってくるのはたった一騎であることに少しだけ余裕を感じていた騎兵団に向って、ソルディスは持っていた槍を投げつけた。それは狙い済ましたように騎士団の中心にいるブランジッド卿を守るように配置されていた一人の兵の眉間へと突き刺さった。

少年が飛ばしたとは思えないほど鋭利に正確に、そして威力を持って飛んだ槍に騎士団の中に脅えが広がる。

その一瞬の隙を逃さずに、彼は騎馬のまま身体を落とし地面に突き刺さっている槍を拾い上げると空かさず二投目を放った。


しまった……昨日考えついたはずのこの話のサブタイトルを綺麗さっぱり忘れてしまいました。急遽で名前をつけたものの、こんなんだったかなぁと困惑しちゃうできです。

やっと次で戦が終わります。

戦が終われば、クラウス&シェリルの方に話が移ります。

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