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第二十話:本陣との激突

村の前の陣営を指揮していたのはビージェットだった。

「副隊長!どうしてこちらに?」

ただでさえ大きいどんぐり眼を驚きで大きくしながら聴いてくる青年に、ソルディスは事の次第をかいつまんで説明した。

この時、他の場所とは違い、村の正面側はまだ本格的な攻撃を受けていなかった。

だが、もう自分たちのすでに見える位置にトラント軍の本隊と見える騎馬隊は展開しており、何時、ときの声を上げて襲い掛かってきてもおかしくは無い状態ではある。

「そうなれば本格的な戦場はここだけだ。一番、剣が使える人間がここに来るのは当たり前だろ」

なんてことは無いという風体で最前線となるだろう場所に行こうとする少年の腕をビージェットは慌てて掴んだ。

「何で一番危ないところに行こうとするんすかっ!」

「さっきのと理由は同じ」

確かに、確かにこの目の前の少年が自分たちの部隊の中で一番強い。あのマキシムですら打ち負かされるほどの剣技を持っている。だからといって彼を最前線に出すのは許されざることだ。

「普通、部隊の一番偉い人は後ろにどぉんと構えているもんじゃないですかっ!」

何故そんなにも必至で自分を止めるのか解からないと顔に出しながら、ソルディスは自分よりもかなり上にあるビージェットの顔を見上げた。

「この部隊で一番偉いのはランズール卿。それにそのランズール卿だって戦になると最前線に出られる」

ソルディスはそれだけ言ってビージェットの腕を払うと、ずんずんと歩兵達が緊張して構えている場所へと向かう。

「だからって副隊長が真っ先に戦火の中に飛び込む理由になりませんって!」

どうしても最前線に向おうとするソルディスをビージェットは早足で追いかけながら、もう一度ソルディスの腕を掴もうとした。

しかしその前にソルディスは自分の腰に携えている剣を引き抜くと中空に刃を閃かせた。

カインッ!

鋭い音と共に矢が落ちる。

ときの声があがるぞっ!開戦だ」

ソルディスの鋭い声に、その場の空気が一瞬にしてピンと張り詰めた。先程までソルディスに文句をつけていたビージェットもすぐに自分の剣を抜き、盾の影に隠れる。

それと同時に大きな声が敵陣からあがり、無数の矢の雨が自分たちの陣へと注がれた。

「弓矢隊、準備、射てっ!」

ソルディスの号令と共にこちらも矢を放つ。ソルディスもその場に倒れている弓兵から弓を借りると敵から飛んできた矢を2、3本掴んで敵に射返した。

「あともう少しで矢の攻撃が止む、そしたら打ってでる」

ソルディスの言葉どおりに敵からの大量の矢の雨はすぐに止んだ。もちろん、その代わり、準備を終えた本隊が一斉に前に進軍を開始する。

その進軍する姿をソルディスは確認すると傍に控えているビージェットに深く頷いて見せた。

ビージェットも頷き返すと陣の後方で巨大な器具を扱っている部下へと合図を送る。

パシュンッ!

張り詰めていた綱が切れ空を切る音と共に大量の瓦礫が宙を待って敵軍へと投擲される。

バシュッバシュッ!

飛んでくる無数の石に少し怯んだところに追い討ちを掛けるように2度、3度と瓦礫を発射する。それにより揃っていた軍列が乱れたところで、ソルディスは剣を高々と掲げて見せた。

「行けっ!」

その号令と共に盾の陰に隠れていた兵が一斉に敵軍に向って突進を開始する。ソルディスもその軍勢の中に入ると何とか敵に対応しようとしているトラント軍に切りかかって行った。





先陣の中で颯爽と剣を使っているソルディスの姿にビージェットは泣きたい気分で溜息をついた。

ソルディスの指揮のもと、軍を仕切る自分はこの場から離れられない。本当は連れ戻したいのは山々なのだが、迎えに行けば逆に少年の足手纏いになることは必至だ。

「どうしよ。これをマキシムさんに知れたら……」

「知られたら?」

自分の後ろから響いた声にビージェットはぴきぃぃんと背筋を伸ばすと恐る恐る後ろを振り返った。

とうとう本陣との戦に入りました。長かったです。

これで章の序盤(!)がやっと終わりそうです。

ちなみにマキシムはとってもソルディスに対して過保護です。可愛い妹に対するよりも過保護です。ゆえに副隊長を危険に晒した人物は妹に言い寄る人物よりもより厳しくイビリ倒されます。

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