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第一話:内乱の日々の中で

ウィルフレッドが内乱を勃発してから3年、リディア国内は数々の戦闘とそれなりの安定を保っていた。

当初、バルガスに替わる王として喜びで迎えられたディナラーデ卿ウィルフレッドであったが、彼が王族と精霊族との間に生まれた『忌むべき運命の子』という事実と、何より、バルガスの時と然程替わらない国税の徴収に、次第に民人の心は離れつつあった。

しかし、更に酷かったバルガス王の時代に戻るのは如何な民衆といえども、望みはしない。

それゆえに、あの日、補佐人つきという条件はあるが、正しき『王位継承権』を得た王子ソルディスが蜂起するのを国民は待ち望んだ。

だが、彼はすぐには兵を起こさなかった。それ以上に彼の王都脱出後の彼の足取りを知るものすら居ない状態だった。

民衆は、噂した。

彼は一人で王位に立てる時期を待っているのだ、と。

彼は臆病風に吹かれて兵を立てないのだ、と。

いや、彼は王都脱出後に死んでしまったのだ、と。

その、噂はどれも信憑性があったが誰にも証明はできなかった。



そして、物語は、動き出す。



ベネシェンド近郊の村・ランクビット

のどかな田園風景の中にあるその集落は、農村としてだけではなく温泉を有する保養地として有名である。

その地は南方将軍と呼ばれるオージェニック将軍の腹心・ランズール卿の有する軍により統治されていた。しかし隊長であるランズールは殆どベネシェンドを離れないため、村の保安をするのは実質副隊長権限をもつ16歳の少年だった。

少年の名前はソリュート・アドラム。黒い髪に水色の瞳を持つ美しい少年だ。彼の本名はソルディス・エンデドルグ────周りには勿論、オージェニック達にも知られていないが、正式な王位継承権を持つ王子だ。そしてディナラーデ卿の軍が血眼になって探している人物でもあった。

兄弟たちと別れてブロージェカからベネシェンドへと南下した彼はオージェニック卿の庇護の元、制しいにランズール卿の指揮下に入り、その権能でと知性を持って着実に副隊長となるまで地位を高めていた。

当初、あまりに若すぎる副隊長就任に村の人間や既存の兵隊は彼の出世を訝しんでいたが、日が経つにつれ、普段は読書をして存在いる不在いない判別わからないくせに問題が発生すると鮮やかな手腕で解決していく彼を認めるようになっていた。

それに普段あまり偉ぶらない態度は部下たちにも好印象をもたれている。



ソルディスはいつもどおりにお気に入りの木陰で読書に勤しんでいた。上げるべき書類は午前中に上げてある。補佐に入ってくれている自分より年長の人間は彼のこの時間を大切にしてくれてよほどの事が無い限りは少年の穏やかな時間は保たれるはずだった。

「なあなあ、聴いた?ソリュード」

話し掛けてきたのは隊の中でもソルディスと同じ年齢の少年グループの一人だった。

彼らは副隊長という彼の立場に臆することもへつらうこともなく、いつも気さくに話し掛けてくる。今日も何か面白い話題を仕入れたみたいで、早速、自分の所に話に来たらしい。

ソルディスは読みかけの本から顔をあげると声をかけてきた少年に感情の乏しい顔を向けた。

「なにを?」

首を傾げる仕草は16歳より少し幼く見える。余程、小さいときの栄養状態が悪かったのか、彼は同年代の少年たちに比べて少し身体が小さかった。

そんな彼の仕草に彼らはソルディスを囲んで座ると、最初に声をかけてきた少年が話を続けた。

「ベネフの村の攻略の話さ」

「ああ」

それは郡内にて今、一番、話されている内容だった。

正確にはベネフ周辺の村を攻略しようとしている敵に対して、神業みたいな戦法で勝ち方を教えていく軍師の話だ。

昨日、ベネシェンドのオージェニック将軍から回ってきた報告書に彼のことが記載されていた。

名前も年齢も不詳、茶色い髪を持ちその容姿から20代後半だろうと推測されている。

ソルディスやけにのんびりしています。

この章から彼の一人称が『僕』→『俺』へと変更です。

その方が普通の少年っぽくていいかな?と思ったからです。

最初暫くはきちんとソルディス中心に話がすすみます。

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