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第十五話:一時の休戦

目の前の少年が自分の意思を汲み取ってとりあえず剣を引いたことに傭兵のトップである男は感心した。

やはり自分たちの雇い主であるトラント卿の話と目の前の少年の性質はかけ離れているようだ。これはきちんと読みきらなければ、自分の養っている傭兵部隊を無意味な危険にさらしかねない。

「やっぱり情報はきちんとしたものじゃねぇようだな」

戦場いくさばに立つものにおいて敵の情報は少しでも正しいものが必要だ。とくに自分たちみたいに最前線にだされる傭兵に対してはなおさらだ。そういう情報を与えないで戦場に送り出すような雇い主にはやはり高い金を請求しなければならないし、情報があまりにひどいようならば契約をさっさと破棄して戦場をさる方を選ばなければならない。

無論、そういう悪質な雇い主の話題は必然的に傭兵間の情報ネットワークに流される。

「そう思ってくれるなら、助かる。このままこの村の制圧舞台から抜けてくださるともっとありがたいですけどね」

村の防衛の要である少年はそういうと口元だけ笑って見せた。




一方、村の近隣にて敵と対峙していたフレイルも敵の士気が落ちていないことに懸念を示し始めていた。

彼の持ち場に攻撃を仕掛けてきているのは傭兵と騎士団の混合部隊であった。奇襲を受けた翌日だというのに彼らは僅かながらに連携をとりながらこちらを攻め落とそうとしている。

(昨夜の奇襲は概ね、成功だったはずだ)

フレイルは厳しい顔をしながら彼らの心の動向を読もうとした。

いったいどんな『隠し玉』で傭兵たちの気を引いたのか、それが問題だった。

(この村の資源を餌にするとしたのか?)

前々からこの近辺の山には豊富な量を誇る金鉱脈と銀鉱脈があると聴いている。だがそれを餌にすれば逆にもともとの金額よりも割高な料金にて兵を雇わなくてはならないはずだ。

(あのトラント卿という人物の性格を鑑みて、傭兵達にそんな余分を払う人物ではないと思ったんだが)

攻め来る傭兵たちを薙ぎ払いながら考え事を続けていたフレイルはそこではっと気が付いた。

(別に『何』も渡さなければいいのか)

用が済んでしまった傭兵を皆殺しにしてしまえば過剰に請求されている分に加えて、元来、自分たちが正式に支払わなければならない報酬分まで支払わなくてよくなる。

だいたい、傭兵をやっている人間は天涯孤独か、家族がいても長年連絡を取っていないものも多い。もし探しにくる家族がいるとしたら、戦場で死んだことにしてその家族にそれ相応の対応をすればいいだけだ。

(胸糞、悪い話だな)

たぶん、自分の『答え』に間違いはない。だが目の前に向かってくる人間にそのことを訴えても、決して信用されない。逆に怖気づいたと思われて更に攻撃に拍車をかけることになりかねない。

(少しでも信用、ないしは興味をもってくれたら相手の陣に壊滅的なダメージを与えられるのに)

昨日の時点でトラントの策に気が付いていれば、荷駄を燃やすときに火種となる噂として流せれたのだが今となってはもう遅い感がある。

(さて、どうするのかな。あの少年副隊長は)

たぶん、あの聡い少年も自分と同じように結論へと辿り着いているはずだ。

その少年がこの情報をどうするのか、少し見物みものでもある。

だがとりあえず、フレイルがすべきことは任された陣営をできるだけ目減りさせることなく手際よく使い、この場所を守りきることだ。

見れば、敵の陣は自分が読んでいた場所まで前進してきてくれている。後、数瞬で仕掛けてある第一の罠が発動する。

彼は横にいたビクターに視線を向けた。彼も心得たように頷くと伝令のために用意していた無地の高々と上げた。

それと同時に村の駐留軍は足並みを揃えて退却の形を取る。もちろん、仕掛けられている罠を踏まないように、そしてそれが存在していることを判らせないように巧みにこちらへと戻ってくる。

急に引き始めたフレイル達に傭兵達は気色ばんで一気に攻めへと転じた。

その動きを確認しながら罠の端に隠れていた兵士たちが綱を切る。それと同時に丸太を組んだ足場ががぅんと跳ね上がった。


まだ戦始まったばかりなのにソルディス、休戦に持ち込んでいます。

別に戦うのが好きではないのでこういう交渉はお手の物です。

逆にフレイルたちのいる軍のほうがしっかり戦っています。

と、言うかソルディス、大将が最前線出るなよというのは作者の感想です。

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