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悲観の果て 2
「待て。だいたいこのマンションには今日初めて来ましたよ」
葛城のこの発言を完全に無視して合田は推理を話した。
「あなたは東都マンションを最期の舞台にしたかった。あることを訴えるためにこの事件を劇場型犯罪のように見せて」
「それが大工健一郎の脱税だ。ここで彼女は自殺した。その原因を作った大工が許せなかった」
合田は北条の推理を反論した。
「北条さん。あなたの推理は間違っています。全て三時間前の推理です。問題は誰を誘拐するのかではなく、なぜ誘拐するのか。ことの発端は半年前に起きた偶然の悲劇。半年前ここで桜井真が自殺した。しかし死んだのはここではない」