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悲観の果て 1
事件解決から四時間が経った。それにも関わらずまだ真犯人は逮捕されていない。合田と北条は真犯人が東都マンションの屋上に来ると推理したのだが中々来なかった。張り込みから四時間が経った二十時。ついに屋上に一つの人影が見えた。二人はゆっくりとその人物の後ろに近づいた。
「あなたでしたか。葛城さん」
「私は夜景を見に来ただけですよ」
「そうでしょうか。あなたはここで自殺をしようとしているのではないですか。三年前にここで自殺した桜井真さんと同じ方法で」
「桜井真。誰ですか」
「とぼけても無駄だ。あなたと桜井の関係はもう知っている。あなたは桜井を自殺に追いやった大工とマスコミが許せなかった。だから関係無い清水美里さんを誘拐した。大工の政治家生命を断つために」
「北条さん。三時間前まではあなたと同じことを考えていました。真相は別にある。清水美里さんは偶然誘拐された訳ではない。この誘拐事件は必然でした。このマンションの住人だったら誰でもよかったのだから」




