正義
電話の後北条が鑑識の結果を持ってきた。
「鑑識の結果です。誘拐の証拠映像の車と田村薫の車が一致しました。それと彼女の自宅にあったワイングラスの指紋はその三人のものです」
「つまり昨日中野条透は田村薫に会っていたということか」
「それだけではありません。DNA鑑定待ちですが彼は彼女と同居している形跡があります」
「この事件の首謀者。リーダー。小木に一昨日接触した男。エース。そして酒井にライフルを送った人物。ミカエル。この三人が同一人物だとしたら」
「それと声紋テープの解析が終わりました。解析の結果は・・」
その事実は合田の推理を狂わせた。
「間違いないのか」
「はい。間違いないです。物的証拠もあります。ワイングラスの指紋とあの人の指紋を照合したら一致しました」
「どういうことだ。それとも俺の推理が間違っているのか。百歩譲ってあの人が犯人だとしても動機が分からない」
北条は笑った。
「動機なんてどうでもいいでしょう。物的証拠が揃っていますから逮捕は可能です」
「北条。逮捕だけが事件を解決する方法だと思うのか」
「それが私の立場。検視官兼鑑識の私の正義です」
「では私の正義は真相を暴くことだ。逮捕は出来ても動機が分からなければ事件は解決したことにならない。北条。行かないか。黒幕はあそこに必ず現れる」
合田と北条は車である場所に向かった。その場所に黒幕が現れると信じて。
原作者山本正純です。皆さん犯人が誰なのか分かりましたか。
さて推理小説にはルールがあります。ヴァン・ダインの二十則のよれば、事件の真相を説く手がかりは、最後の章で探偵が犯人を指摘する前に、作者がスポーツマンシップと誠実さをもって、全て読者に提示しておかなければならないとあります。最後の章である第六章までに事件の真相を説く手掛かりが隠されています。
第六章は一気に更新します。第六章に関しては小出しにして更新することにメリットがないので。