その誘拐は誤算だった。
ここから過去編です。別の言い方だと壮大な前降りです。
話は七年前にさかのぼる。その三日月の夜清水美里は公園のベンチで、コンビニで買ったおにぎりを食べていた。すると銃声が公園に響いた。美里は銃声の聞こえた方向に振り向いた。その先に何かが吊り上げられていた。
何かがと言ったのは、100メートル離れた木に吊るされていたからだ。よく見ると人のように見えた。美里は悪戯だと思い近づいた。50メートル進んだ時彼女は後悔した。なぜなら吊るされていたのは人形ではなく人だったからだ。あたりを見回すと、帽子を深々と被った黒服の男が遺体の正面の壁に落書きをしていた。その男は彼女が目撃したと思い、彼女をスタンガンで気絶させた。目撃者を作ったことは犯人にとっての誤算だった。黒服の男は電話をした。
「俺だ。犯行を女に見られた。女は気絶させたがどうする」
『お前は落書きを完成させろ。俺はその女を誘拐する。まだロープが余っているだろう。そのロープで彼女を縛れ。五分でそっちに行く』
「分かった」
その五分後共犯者の車が来た。
「この女か。早速運ぶとするか。女の財布を高野の鞄にいれろ。では例の館でまた会おうぜ」
「ああ。後十分で完成させる」
三十分後、黒服の男は落書きを完成させた。