明かされる殺人犯の正体 前編
十二時。大工健一郎が警備員に囲まれ、裏口から入校した。その様子をライフルで狙っている男がいた。服装は黒服だった。引き金を引こうとした時だった。後ろから月影が声をかけた。
「暗殺ですか。酒井さん」
酒井は指を引き金にかけて言った。
「なぜ分かった」
「きっかけはそう。高野が殺されたと青田が言ったと報告された時だ。あなたはまったく驚かなかったと報告された。それなのにあなたは高野さんのことを覚えていた。菅野さんと飲んでいたと」
「それは知っていて当たり前でしょう。上司でしたから部下の交友関係くらい知っていても」
「いいえ。あなたは言いました。六本木のザーボンロックって店で飲んでいたと。これが変なのです。その店は三か月前に開店しました。つまりあなたは半年振りに高野さんに会ったのではなかった」
「たしかにそうだが俺が殺した証拠はあるのか」
「その銃です。その銃が高野さんを殺害した凶器ならライフルマークが一致するのです。それと筆跡です。赤い落書きの筆跡を鑑定すればはっきりするでしょう。あなたが殺人犯だとね。最後にあなたが誘拐した清水美里さんが証言するでしょう。彼女は唯一の目撃者ですから」