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交渉
そして再び電話が鳴った。
「良平さん」
良平は再び受話器を握った。
「もしもし」
『一度しか言わないからよく聞け。身代金を詰めたアタッシュケースを十二時に東京駅に届けろ』
その声は変声器で声を変えてあった。
「すみませんがあなたの目的を分かりやすく説明していただけませんか」
『大工健一郎の不正を暴くことだと言っただろう。全ては桜井のためだ。そんなことより身代金は用意したのだろうな』
「はい。ちゃんと十三時間一分一秒分の身代金を用意しました」
『分かった。遅れるなよ』
誘拐犯は電話を切った。