カフェで
十時三十分。小木はカフェに入店した。そのすぐ後に尾行をしていた葛城と西野が入店した。小木は伊東に会っていた。店内を見回すと菅野もいた。菅野は少し離れたカウンターでコーヒーを飲んでいた。葛城は小さな声で指示を出した。
「西野はあの二人の後ろの席に座って盗み聞きしろ。俺は菅野に事情を聴く」
葛城は菅野の隣に座った。そして言った。
「お一人ですか」
「はい」
「いつもこのカフェを利用するのですか」
「はい。ここのコーヒーは美味しいですからね」
菅野は間をおいて言った。
「警察の方ですか」
「はいなぜわかりました」
「弁護士の勘です。高野さんの件ですか」
「はい。昨晩あなたが被害者と飲んでいたそうですね」
「はい」
「その後口論をしたと飲み屋の店主が証言したのですが」
それを聞くと菅野は表情が変わった。
「その口論が動機になり、俺が高野を殺したということか。確かに店主の証言は正しい。俺は高野と口論をした。あいつが弁護士の才能ないとか言ったからだ。だが俺が殺したという証拠はない。まあアリバイの無いのも事実だが。証拠がない限りこれ以上は話さないだろう」
そう言うと菅野は会計を済ませて店から出て行った。葛城は西野のいる席に戻った。そして小さな声で言った。
「どうだ」
「ただの面接です。菅野の方はどうですか」
「黒に近いが証拠がない。あれは任意の事情聴取をしても黙秘するのが落ちだな」
それから三十分後。小木と伊東は別れた。そして二人は尾行を再開した。
かなり長文化した話。
前後編にしようにも切りどころがないので一話にまとめました。