事情聴取
九時二十分 警視庁取調室
高崎と青田は小木を連れて事情聴取をした。
「大胆なことをしたな。誘拐犯さん」
高崎のその言葉に小木は慌てた。
「だから誘拐犯は設定ですよ。これは第二試験という解釈でいいのかな。試験官さん」
「どういうことですか」
「だからこれはオーディションであなたは試験官」
「いいえ。我々は警察です」
小木は驚いた。
「本当に刑事さんだとは思いませんでしたよ。刑事風の試験官だと思いました」
「誤解は解けましたか。では事情聴取を始めます」
「待ってください。僕はただアルバイトに参加しただけです」
「どのようなアルバイトですか」
「昨日声優オーディションに参加したら不合格でした。その夜六本木のザーボンロックという店で飲みながらこのことをぼやいていたら、いきなり隣で飲んでいた男がアルバイトを紹介してきました。そのアルバイトが原稿の通りに電話するだけの仕事。うまくいけば声優の仕事がもらえる。電話の相手は芸能会社の人事部長だと説明されました」
「つまりアルバイトでもあり試験だった」
「はい。これは任意の事情聴取ですよね。帰っていいですか」
高崎と青田は小さな声で相談した。
「物的証拠もないしここは見張りを付けるか」
「はい。」
「最後にアルバイトを紹介した人物の名刺をお借りしてもいいですか。」
「はい」
小木は財布からその男の名刺を出し警察に提出した。
そして監視をつけて小木を釈放した。