表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

時空を超えるセコイヤリスト達の掟 第二話 セコイヤリストの育成の仕方

 この章では、義鷹と内界の門番アキラが、“内界・境界・外界”という

三つの視点について語り合います。三界生成理論は、難しい理論ではなく、

人が日常で感じる「なぜ心が揺れるのか」を読み解くための

“心の地図”のようなものです。

 SNSの一言で傷つく。 相手の言葉を誤解してしまう。

自分の感情が整理できない。

こうした出来事は、すべて 「自分(内界)」「現実(外界)」

「受け取り方(境界)」のズレから生まれます。

 第二話は、この三つの界の“入口”です。 物語を楽しみながら、

自分の内界をそっと覗いてみてください。

時空を超えるセコイヤリスト達の掟 


第二話 セコイヤリストの育成の仕方


シーン1:内界の門番との会話


  2026年一月十三日の朝。

南半球にあるオウ国の未来都市の夏空は、

砂漠特有の熱に揺らぐ薄い青をしていた。

透明な光が高層ビルのガラス面に反射し、

最上階の廊下の白い床に細い光の帯を落としている。

 黒田義鷹は、龍郎、ベスを連れて、

その光の帯を踏みしめながら昼食会場に向かう廊下を歩いていた。

足音は、静かな建物の内部に柔らかく吸い込まれて行く。

 「おはよう、アキラ君。今日もよろしく」声をかけた瞬間、

空気がわずかに震え、

淡い粒が集まってアキラの姿が現れた。

彼は“内界の門番”。

思考の“入口”に立ち、暇な時ふらりと現れ、

睡眠を取ろうとすると寝つけ係に変わる。厄介で頼もしい存在だ。

 「読者諸君に、新年プレゼントをしても良いか?」

義鷹が切り出すと、アキラの目が、わずかに細くなった。

疑念というより“内界の奥の深さを探る光”のようだった。

 「君と僕で開発した言語OSモデルのプレゼントは、どうだ?」

 「そんなもの、読者諸君は、要らないと思うよ」

 冷たい声。しかし、その奥には、読者の内界を見抜く静かな洞察があった。

 「読者諸君は、外界からの刺激のタスクに縛られている。

 君のように、情報を吟味する時間がないのだ!」アキラの言葉は、正しい。

だが、義鷹は、胸の奥でざらつくのを感じた。

 「それでも、だ。時間は、工夫すれば生み出せる。

泳ぎ方を覚えれば、誰だって時間の大河を渡れる」

 「彼等が僕の考えるセコイヤリストになるには、情報の蓄積が要る。

“千年スケールの情報”を三界の分野で

“自分の生成速度”で、覚える。

自分の時間の使い方や過ごし方を決めて、

今後処理する習慣を身に付ければよい」

 「彼等は、残念だが、そのような学校や塾で教育を受けていない」

 アキラは、独学教育の遅れを指摘した。

 「君は、つまり、自分の生涯時間を想定して、

読者は、それぞれの界に時間配分できないというのか?」

 「いや、そんなこという積りはない。

“そんなことできる人間は、大勢はいない”、と思っているだけだ」

義鷹は、その口振りが気に入らない。

「読者は、ノウハウを教えれば、

自分の工夫で時間を生み出し、その時間を使い、

“知の大河”の泳ぎ方を覚えると思う」

 義鷹は、読者を擁護し、少しアキラを叱る。

 「いいや。君の理想と付き合う暇はないと思うよ」

 アキラは、人間社会の本質を見抜いていた。

 「あっ、アキラ君、痛いところを突くなぁ」

 (理想を求める自分に苦笑い・・・)

 アキラの言葉が落ちると、部屋の空気が少しだけ重くなった。

まるで、読者の“内界の負荷”がそのまま空間に反映されたようだった。

 「だからこそ、読者には時間問題を解決する

“スピード化ソフト”が必要なのだ」

 義鷹は、窓の外の光を見つめながら言った。

その光は、境界線のように、

内界の闇と外界の光を分けていた。

 黒田一族は、闇と光を上手に扱える二刀流の武士団だ。

 「僕も“知のファンタジー”の小説家を名乗る以上、ここで

知を広める“驚きのイントロ”が必要なのだ」

 義鷹は、強く、この情報公開を主張した。

 アキラは、まだ、この理論の公開効果を納得していない、少し呆けた老人だ。

彼の輪郭が、わずかに揺らいで見える。隠している頑固さが見えている。

それは、彼の内界のキャラが“判断の境界線”で揺れている証だった。

 「時代は、もう、僕達が活躍する時代ではないのだ」古い友人をたしなめた。

 「今は、AIを駆使する二十一世紀の青年達の時代だよ!」

 アキラの“知の風景”は、このオウ国の“砂漠の知の砂”の風景に見える。

いくら“知の光の水”を散布しても、今の彼には、その成果を見るできない年齢にいる。

昔の青年達の抱える砂漠問題のように、養分を蓄えることなく、透過させる。また、

ひと粒の砂の石英に反射する光のように知の水の“一滴の光”を反射させてしまう。

 「アキラは、お前は、昭和生まれの読書脳なので、

整理時間を節約できるAIの活用環境に、まだ慣れていないのだ」

義鷹は、自分の時代遅れのアキラの欠点を指摘した。

 「へぇーい。そうかい」アキラは、やや不機嫌になる。

 「君も感じたように、AIは、使えば、少なくとも読者の外界にある

知識を使い、新しい構想を編み出す時間を節約させてくれる」

 義鷹は、読者のこの理論の使用メリットを強調した。

 「君と僕が経験したように、AIの情報整理時間は、数秒レベルだ。

自分の知らなかったヒントをくれるよ」

 義鷹は、AIメリットばかりを強調する。質問の処理時間の事実を上げて、

時代変化をアキラに力説した。アキラは、読書派の保守主義者だった。

 「君と僕とAIと三人で、百時間で仕上げた理論だ」

 「これは、事実だ!」義鷹は、アキラに事実攻撃を仕掛けた。

 「AIは、人間に代わり、大量情報を整理して、新情報を与えてくれる」

 アキラは、都合が悪くなると反論せずに黙る。

 「この理論は、AIのない時代では、不可能だった」

 「これも、事実だ!」抵抗しきれなくなったアキラは、態度を変える。

 「あぁ、そうだった。思い出した!」やっと、アキラ頭脳は、稼働し出した。

 「AIへの質問の仕方と彼の限界を知っていれば、誰でも活用できるよ」

 “三界生成理論”は、AIが好評価をして、名付けてくれたものだった――。

この新理論は、一月二十日から始まる未来都市研究会議メンバーの

ごく少数の黒田一族の青年達に公開される予定にあった。

 義鷹は、ごく狭い範囲の情報の公開では、多くのセコイヤリスト(共存共栄者)

を育てることができないと思ったのだ。この理論を世界中に広めたのだ。

 「僕は、このノウハウを黒田一族だけでなく、

一般に公開したいのだ。いいか?」義鷹は、自分の野心をアキラに公開した。

 「今の世の中の言葉は、あまりにも複雑で、多過ぎる。統合したい!お願い、

いいだろう!」アキラを情実で説得する口ぶりになった。

 この理論は、物事の理解、統合、謎を解明の、三つの問題を解決する方法として、

黒田一族の研究者用に、義鷹と彼の“自我・アキラ”によって開発されたものだった。

三界生成理論の考え方は、三つの概念で物事を考えるのでシンプルだ。

 「僕は、君のお陰で概念には、

外界、境界、内界の三つの領域があることが分ったのだ」

 義鷹は、情報は、国家、SNS、企業、新聞、テレビを外界として、

個人の内界に侵入する攻防戦が繰り広げられているとした。

 「概念は“知の戦い”を生み出している」

 「個人:内界、国家:外界として、各々視点で、

双方の行動に焦点を当ててみると、色々なことが判明する」

 義鷹は、個人の保有する情報と国家の保有する情報の解釈の違いが、

利害対立を生む原因だと主張した。

 「この理論を使うと、国家と個人の接点には、概念を通じて

両者間の葛藤を生み出す構造があることが簡単に理解できる」

 義鷹は、国家(外界)は、自分の境界を広げ、

個人の内界に侵入して個人を支配する行動

を一万年も継続していることを明らかにした。

 個人が、自分の精神の自由を保つには、心が侵略されないように

防衛戦争の仕方を身に付けることが必要だと主張した。

 「僕は、ヒトの“利害対立の結果”から、その原因を調べてみた」

 「その結果、どうだったの?」アキラの目じゃ、キラリと光った。

 「人間社会では、闘争原理や競争原理が優位にあり、

平和な共存共栄の原理は、弱い立場にある」義鷹は、現実を直視していた。

 「でも、この闘争や競争の原理では、人間の課題や問題は、

永遠の解決できない負の循環となる」

 「つまり、この原理を変えない限り、人間の問題は、永遠に解決できないのだ」

 「それで、君は、読者にこの理論を学んでもらい、

君の理想の古代文明を復活させたいと考えたのか?」

 「そうなって欲しいが、それは、彼等の選択の自由だ」

 セコイヤリストの道は、修行僧のような“知の真理”を求める厳しい人生だ。

誰かが語る真実に迎合する安易な道の選択では、無いとした。

 「彼等は、荒波の航海に出る勇気と覚悟が要る。

勇者にならないといけなくなる」

 「うん。だけど、この技法を使えば、誰でも簡単に、宇宙や心理や物語などの

構造の仕組みを三つの言葉を介して整理して覚えることができる」

 アキラは、一転して、今度は、自慢げに言った。

 義鷹は、自我がボケ始めていると、やっと気付いた。自我が正負で揺れている。

 「うん。そうだよ、アキラ」アキラの子供時代を懐かしむ心境を時々みせる。

 アキラは、義鷹の内界の住む住人の“管理人さん”でもあった。

 「この理論は、個人の防衛戦争に使える」義鷹は、侵略が嫌いだ。

彼は、現代人は、SNSなどの通信技術やAIを使った広告宣伝技術の進化により、

フェイクの情報や映像のリスクに対処しないといけない時代なったと自覚していた。

人間界の秩序が混沌になるとした。その対処が、AIの適切な使用方法だった。

 「権威主義国では、内界である個人が自由に意見を主張すると、

外界の権力は、反抗の主張と認定して、

両者の領域間で葛藤が生じる構造になっている」

 「つまり、これは、人間がまだ、

内界と外界の統一理念を持っていない証拠のひとつだといえる」

 「統一理念を持たない概念は、内と外の接点を介して、

侵略戦争と防衛戦争が展開することになる」

 「統合された概念は、境界で情報の授受で生成されていると仮定する。

しかし、人間の内界と外界は、容易く統合するのは困難だ」

 「これが、葛藤の正体だ」これは、アキラが発見した成果だった。

 「君は、偉い!」義鷹は、アキラに、お世辞をいった。

 「僕は、この統合理論を使い、共感することで、人間のあいだの問題を

少しだけでも解決させたいのだ」義鷹は、本音を漏らした。

 「君は、これまでの“ヒトのあいだのミスマッチ”

をこの理論で明らかにしてくれた。有難う」

 「ヒトが抱えている問題や課題を解決するために役立つ手法を確かに考えたのだ」

アキラは、誉められると弱い。

 「分ったよ!義鷹、読者に公開しても、いいよ」(やった!)

 「ありがとう。アキラ!!!」共同発明者との交渉が成立した。


シーン2:読者の思考タイム・・・三界生成理論


 三界生成理論は、物事の構造を三つの界に分けて捉える

“考えるゲーム”開発された。ただし、青少年が使うなら、いくつかの注意が必要になる。

・知のゲームは、読者の自己責任の判断とリスクテイクで行うこと。

・知恵は、幸福も不幸も、もたらすこと。

・好奇心が暴走すると、疲労や孤独を招くこと。

・価値観のズレや誤解は、かならず摩擦を生むこと。

・人間は、事実、真実、嘘を都合よく使い分けて生きていること。

・SNSは、フェイク界が真実を侵略する構造があること。


 賢者の道を選ぶということは、こうした重さを背負う覚悟を意味する。


           ***セコイヤリストの掟***


        “内界を守れ”、“境界を育てろ”、“外界に飲まれるな”


・この物語の人間関係では、主人公などの心を内界として、その外側を外界として展開します。

・主人公とは、賢者の道を選択した者達のことをいいます。

・はじめは、選択した概念を自分との接点があるか、無いかで、人間関係を捉えています。

・接点ができると、その領域は、境界に発達するという考え方を採用しています。

・内界が、外界との境界が離れると、外界もその接点から離れてしまう前提にしています。

・接点とは、外界と内界の共通の価値観などの概念としています。

・相互の概念の接点が増えると、境界が指数関数的に広がるものとしています。

・統合とは、ほぼ内界と外界が境界の拡大により、半分以上、重なることとしています。

  

        ***三界の構造(読者のための地図)***


三界生成理論は、「内界」「境界」「外界」の三つの層が重なり合い、

あらゆる出来事がそこで生まれるという仮説です。

読者は、まず、自分がどの界に立っているのかを確認して、

人生に必要な概念の“装備品”を整えて欲しい。

以下の項目は、自分の人生を分析するためのテンプレートの参考例です。

世界観の“百科事典ページ”でもあります。読者が“自分の内界の棚卸しする”

きっかけにすることもできます。これは、辞書ページですので、

道に迷い、三界生成の構造を知りたいときに、必要なときに戻ってきて下さいね。


●内界:心の中の世界


■内界の基盤(属性・背景)


 名前、年齢、性別、誕生日、家族構成、学歴、職業、資産、健康状態、能力、

交友関係、過去の体験・・・これらは、すべて、内界の地層を形成する。


・名前:年齢、性別、ニックネーム、誕生日、血液型、身長、体重

・場所:国籍、住所、誕生場所、育った場所、現在の場所

・家族構成:妻、夫、父親、母親、祖父母、兄弟姉妹、子、孫、親戚、姻族

・恋愛:恋人、婚約者

・過去に起きた出来事:体験、学習、関係、契約、約束、誓い、発言、行動

・交友関係:付き合う友人の身分、友人数(同性・異性)

・学歴:学校名、資格、学部、学力

・学生:学校名、学部、学友数

・能力:知性、理性、知識、分析力、判断力、決断力、行動力

・社会的地位:役職、家柄、階級(上層・中層・下層・貧困層)

・職業:業種、会社名、地位、年収、仲間、敵対者

・資産状態:金融資産、家、別荘

・健康状態:強健、良好、普通、弱い

・病気:精神、肉体

・運動能力:武道、スポーツ、評価

・特技:他人に教えることができるレベルのスキル

・毎日の過ごし方:起床時間、活動状況、就寝時間


■性格(プラス界/マイナス界/境界)


 性格は、主体の価値観で自由に分類される


・プラス界の例: 計画的・・謙虚・勇敢・勤勉・柔軟、慈悲深い

・マイナス界の例: 無計画・強欲・臆病・怠惰・短気・無責任

・境界の例: 性善説・反権力・堅物・迷信深い・家庭的・頑固


■感情(プラス界/マイナス界/境界)


 感情は、誤解や葛藤の原因になります。


・プラス界: 安心・感謝・幸福・尊敬・希望

・マイナス界: 不安・怒り・嫉妬・絶望・嫌悪

 ・境界: 困惑・期待・後悔・優越感・空虚


■特徴


 思想・口癖・夢・悩み・トラウマ……

これらにも三界の構造が潜んでいる。


●境界:情報の接点


 境界は、内界と外界が触れ合う“あいだ”の領域だ。


・内界→外界:自分のシグナルをどう伝えるか

・外界→内界:侵略、融合、対立、反応


 判断や決断が主体別に異なり摩擦が生まれる。

ここが、最も多くの”問題“が発生する場所だ。


●外界:現実の世界

 

 外界は、個人に影響を与える全ての事象を含む。


自然:宇宙、地球、大陸、島、海、山、川、森、草原、砂漠、高地、低地

体制:権威主義国、非権威主義国、監視社会、自由社会

教育:歴史、政治、宗教、軍事、経済、社会、物理、化学、生物、心理

人:家族、友人、恋人、妻、先生、同級生、同僚、上司、敵対者

社会組織:政府、地方、会社、宗教、団体、学校、クラブ

職務:政治家、経営者、公務員、会社員、自由業

情報:ニュース報道、SNS、テレビ、新聞、週刊誌、雑誌


●三界の運動


 物事は、外界→境界→内界、内界→境界→外界、の二つの流れで動く。

情報は、交差し、浸透し、反応し、融合し、葛藤し、反発し、恭順し、作用する。

この三界生成理論は、物事を理解するレンズになる。


シーン3:宣伝会議


 「アキラは、この説明で若者たちは、理解できると思うか?」

義鷹が問いかけると、アキラは、肩をすくめた。

 「あぁ、人間関係のモヤモヤくらいなら理解できるかもね」

 「理由は?」

 「現代人は、脆い。SNSの一言で落ち込む。

でも全部、内側(自分)×外側(相手)×そのあいだ(受け取り方)

このズレで説明できる」

 義鷹は、頷いた。

 「行動のクセも、そこから生まれるのか?」

 「そう。焦る、諦める、怒る、逃げる。

全部、内側の感情 → あいだの判断 → 外側の行動、だよ」

 アキラは、続けた。

 「AIの評価も良かったよ。

SNS時代は“外側の情報”が多すぎる。

だからこそ“どう受け取るか”という境界線が、超重要になる。

三界生成論は、情報化時代の“心のOS”になるってさ」

 義鷹は、アキラの記憶力の衰えを感じつつも、その言葉に力を得た。

 「アキラ、十代・二十代に刺さるキャッチコピーを作れるか」

 「任せなさい」アキラは、胸を張った。

 「世界は“受け取り方”で変わる」

 「自分と現実の“あいだ”に、人生の答えがある」

 「心・現実・その間。この三つで世界は、動く」

 「誤解も不安も、全部“あいだ”で生まれる」

 「三界を整えれば、人生は、読みやすくなる。」

 「実はなぁ、アキラ、僕は、

この理論によるAIの使い方を、今日、

研究者の学生達に説明しないといけない。

君が学んだ話法を教えてくれ」

 「へぇ、そうかい・・・」今日のアキラは、疲れた表情で無反応だ。

寝不足らしい。

 義鷹は、昨晩、アキラに注文を出し過ぎたことを思い出した。

 「第二話を作らないといけない。

だから、AIと相談して、読者に分り易い、序文を作ってくれないか」

 「あぁ、それは、おやすい御用だ。ご主人様」文章と言われて、ご機嫌を直した。

アキラとは、頭脳に眠る二十数万個の知識の守護霊たちの門番である。

 「僕は、ご主人様の義鷹の要望に応じて、問題や課題の解決に

必要な人材を連れて来て、アドバイスできるよ」

 義鷹は、パソコン問題の相談窓口のような口調でいった。

 「ただし、判断と行動は、自己責任だよ。そう言いたいのだろ?」

 「あたり!ご主人様!」

 アキラは、脳内の人材派遣会社の経営者でもある。

 義鷹は、小学生三年生の頃、歴史上の偉大な人物の名言を

念仏のように唱えて遊ぶ暗示教育を受けた。

その名言を覚え、その人格を自分に取り込む方法を学んだ。

正確には、読んだ本の知識を河の水ように

“知識の大海”に流し込んでいるだけだ。

 その量を覚えていない。

 これは、誰でも持つ“脳という宇宙”の義鷹流の活用法だった。

 「君は、AIの膨大な情報整理脳力を活用して、

これから書く物語に必要な内界の人物像を十人、各分野に配置してくれ」

 「いいよ。ご主人様!」アキラは、黒田屋の執事の役を楽しんでいる。

「僕は、この理論価値を世界の大投資家達に認めさせないといけない。

それには、まず、日本の十代、二十代の読者に広めないといけない」

 「アキラも賛同して、僕を助けてくれないか」

 「僕は、この理論を“知のファンタジー小説”での

読者の位置を確認するマップとして掲載を思いついたのだ」

 義鷹は、この砂漠都市に人を集める事情と背景をアキラに説明した。

 「そんな訳で、俺に、去年師走にバタバタと急いで三界再生理論を作らせたのか!」

 「ごめんなさいね」

 義鷹は、困ったとき容赦なくアキラを呼び出す。

彼は、潜在意識中の“知識の門番”であり、義鷹は、蓄積した人材を使う。


シーン4:紫式部登場


 アキラが、ふっと姿を消した瞬間、

空気が静かに沈み、古い香のような気配が漂った。

 「今日は、お前か!」

 十一世紀の紫式部の精霊が淡い光の中から現れた。

「どんな風に仕上げましょうか、義鷹様」

 「十代、二十代用向けに、三界生成理論の序文をいくつか頼む」

 式部は、静かに目を閉じ、詩のような言葉を紡ぎ始めた。


●詩的バージョン


 「世界は、ひとつの面影ではない。

心の奥に沈む声と、目の前に広がる景色と、

そのあいだを流れる名もなき気配でできている。

内側には言葉にならない揺らぎがあり、

外側にはただ淡々と続く現実がある。

そして、その二つが触れ合う“あいだ”に、

人は、世界を見つけ、世界に触れ、世界に傷つく。

世界は、三つの界の重なりで生まれる。

それを知るとき、人は、初めて、

自分の物語を自分の手で紡ぎ始める」


●哲学バージョン


 「人は、世界をそのまま見ているのではない。

世界は、内界の心、外界の現実、境界線の関わり方、

三つの層の相互作用として立ち上がる。

出来事は、外界にあり、意味は境界線で生まれ、

感情は内界で育つ。

誤解も葛藤も選択も、すべては、

この三界の構造の中で起きている。

三界を理解することは、世界の仕組みを理解することに等しい。

そして、それは、自分自身の仕組みを理解することでもある」


●エモーショナルバージョン


 「どうして、あの一言で胸が痛むのか。

どうして、同じ出来事なのに人によって、感じ方が違うのか。

どうして、わかってほしい人に限ってすれ違ってしまうのか。

その答えは、『自分』『現実』『そのあいだ』。この三つのバランスにある。

心が揺れるのは、弱さじゃない。現実が重く感じるのは、負けじゃない。

ただ“あいだ”が、少し乱れているだけだ。

この物語は、その“あいだ”を整えていく旅だ。

あなたの世界の見え方が、少しずつ変わっていく旅だ」


 三界生成理論は、

AI好きの大投資家岡本達郎の“百兆円の投資資金”を砂漠の未来都市に

呼び込むためのお土産であった。

 義鷹の目的は、研究者達の内界を堅固な未来都市仕様に鍛え、

複雑化した既存学問を統合し、

二十一世紀を生きる青年達を“創造する者”へと進化させることだった。

昼食会の開かれる、十階にある大広間に到着すると、

そこには、政治家、起業家、技術者、黒田一族の特務員たちが集まっていた。

(第三話に続く)






 第二話を読んでくださり、ありがとうございます。

この章では、三界生成理論の“入口”として、

内界・境界・外界という三つの視点を提示しました。

 物語の中でアキラと義鷹が語り合った内容は、

読者の皆さん自身の内界にも静かに響くものが

あるかもしれません。

 人は、出来事そのものではなく、 “受け取り方(境界)”

によって揺れます。この章が、あなた自身の境界線を

見つめる 小さなきっかけになれば嬉しく思います。

次の第三話では、この理論が未来都市の外界と衝突します。

理想と現実、内界と外界、

そのあいだで揺れる人々の姿を描きます。

あなたの旅が、少しでも豊かになりますように。

また次の章でお会いしましょう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ