9
「座りなさい」
学園から帰るとお父様から執務室へ呼び出されて、座らされた。
「オリヴィア。その、お前の学園から生徒の保護者宛へ緊急で連絡があった。
生徒へもそれぞれ早急に伝えてほしいとの話なので、少し話をさせてくれ。お前にも関係した話だ。」
なんだろう…変な話で無ければいいけど…
「レイアという女の子がお前のクラスにいただろう。お前が最初の頃、話しかけて世話をやいていたらしいな。」
「世話というか…余計なことしていたというか…最初のうちだけで、あとはこちらは避けていた感じなんです。」
…レイア本人から嫌がられたりしましたよ…それに、後から色々嫌味を言われたりもしましたよ…
私は彼女との会話を、覚えてる限り、全て話した。するとお父様は「そうか…」とうなづいた。
「実はな。あのレイアは、自分は皇族の血筋だと話していただろう。
それは事実ではないんだ。本人が吹聴していただけなんだ。
あの子は平民なのだ。皇族どころか、貴族の血自体、かけらも入っておらぬ。
ノービア子爵家のクロード氏などは血筋の話を本気にして、彼女に正式に婚約を申し込む気でいたようでな。」
…えーっ!そんなことで嘘ついたら、困るどころの話じゃないじゃないのよ!
不敬罪とか、偽証罪とか、お縄になるでしょ!…
「なぜ彼女はそんな嘘ついたんですか!
それに、皇太子殿下がわざわざ彼女の様子見に来られるとか、髪や目の色などが皇族に近い色だから、本人がそう言うと、みんな本気にしてたと思うんですけど…」
…実は、私も本気にしてたわ!
「皇太子殿下の件は皇妃様の意向だ。まあ、事情を最初から話せば長くなる。」
お父様は話しはじめた。
現在の陛下には、下の御兄弟が何人かいるが、末の弟である故皇弟殿下は、生前、趣味で絵を描いておられた。趣味といってもかなり本格的にお上手であられたらしい。
そんな彼が、ある平民女性のモデルの絵を熱心に描いた時期があった。
レイアの母がそのモデルだ。
皇族ぽい色の髪や目は、血筋のせいではなくただの偶然だ。
単に皇弟殿下がそういう色合いが好みで、レイアの母がちょうど該当した、というだけらしい。
レイアの母はそのうち平民の男性と結婚してレイアを産んだが、一時期、もしかして皇弟殿下の落とし胤ではないかという噂が流れた。
だが皇弟殿下は、自分の妻を溺愛しており、ただのモデルと愛人関係になることは決してなかった。
レイアの母も特に皇弟殿下との仲を匂わせたこともなかったという。
「それで、なぜレイアが自分を皇族の血筋だと言い出すことになるんですか?」
「…それはな」




