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「なによこれ!私を馬鹿にしてるの!」
私の手作りのワンピースを渡したレイアの第一声はそれだった。
「ば、馬鹿になんかしてない、で、すけど…」相手が本気で怒っているのでこちらの声は尻つぼみになる。
クラスはレイアと私の二人きりになる時を狙って服を渡したのだった。レイアが気にするかもしれないから。
…そう、自分でもわかっていた。同級生から貰う類のものじゃあ無いことは。
…私がこれ作ったの。趣味で作ったもので、着てくれた人に感想を聞きたいからやってることなの。
だから、良かったら、これ、使ってくれたら嬉しいの!…
そう言えば彼女のプライドを傷つけずに渡せるはず。
さりげなく渡せるんだ、問題ないだろう!そう思っていた。
でも違った。こんなに怒らせるなんて…夜なべして苦労して作成する、なんてこと、しなければ良かった。
あ、涙が目の奥から溢れてきそうになってる。鼻の奥がツンとしてきた。まずい…
その時、ガラガラと戸があいて、男子生徒の一人が顔を出した。
「レイアさん!叫び声が聞こえたんだけど…」彼の名はクロード。ノービア子爵家の令息で同じクラスだ。
細身で金髪、銀縁眼鏡の奥に薄茶の目を隠している彼は、なかなか成績優秀な上に美形なのでこのクラスの女子生徒から一番人気だ。
この頃は、高位貴族以外は、学園を卒業してから正式な婚約者を決めるのが一般的なので、彼にもまだ婚約者はいない。
そのため、クラスの女子生徒のほとんどは彼の後を追いかけているのだ。どうにかしてお近づきになりたいわ~!と言いながら。
レイアは彼を見ると涙ぐんだ。「クロードさん…」そして私が渡した服を彼へ見せた。「こ、これをオリヴィアさんが私に渡してきたの。着るようにって。」
クロードは眉をひそめた。彼は何が問題なのか、よくわからないといった顔をしている。
レイアは彼の表情を見て言った。
「これ、使用人のお仕着せでしょ!
…私に、使用人の格好しろ、これがお前にはふさわしいからって嫌がらせなのよ!」
私は息をのんだ。そんなことは考えもつかなかったのだ。
ただ、渡したワンピースは、上位貴族の屋敷で使用人が着ているお仕着せに、似ていないこともない。
それらはシンプルで上品なものだ。
下手すると下級貴族の服装などよりも遥かに高価で上質な品である。
…見方をかえたら、素人の自分の腕前を最大級に褒められたような気がするけども。
でも、今のレイアは自分を侮辱されていると、
クロードの前で私のことを告発しているのだった。




