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レイアの父は彼女が幼い頃亡くなり、母も同じ頃すぐに亡くなった。
一人だけになったレイアが途方に暮れているとき、親戚は貧しい者が多く、彼女の引き取り先で揉めたという。
連中は、もしレイアが皇弟殿下の落とし胤であれば、引き取りに悩まなくてすむのに、謝礼出るから争って引き取るだろうだの、あるいは皇弟殿下その人から引き取られたりしたなら、レイアは裕福な生活できるだろうにねえ、などと本人の前で声高に話したという。
それらが、両親を亡くしたばかりの子供の精神に、どのように作用したのか。
それがレイアに深く影響を与えたとわかったのは、最初の引き取り手である親類の家でだった。
レイアは、皇弟殿下が私の本当のお父様で、そのうちお迎えに来られるのでしょ?と彼らに言った。
親類がそんなことはないと諭しても聞かず、私にたいして無礼でしょなどといい出した。
そして、親類の家でレイアのために貧しい中必死に準備した物品を、皇族の血を引く私にはふさわしくない品物ばかりだわ、もう少し良いものは用意できないの?と言い放ったらしい。
最初の引き取り先の親類は激怒し、レイアを引き取ることを拒んだ。
その後レイアは親戚中をたらい回しとなったが同じことの繰り返しとなり、とうとう引き取り手がいなくなった。
そして、孤児院の預かりとなったのだ。
「なんか凄い話だわ。でも、今のこの話と皇妃様とどんな関係があるの?」
ある日、皇弟殿下が亡くなられた後の遺品を整理していると、レイアの母がモデルをしていた時代の絵画がでてきた。
それを見た皇妃様が、今このモデルさんはどうされてるのかしら、と何気なく問いかけたそうな。
そしてモデルはもう亡くなり、子は孤児院にいることが判明した。
皇妃様は孤児院は慰問していたが、その話が頭にひっかかり、慰問の際にモデルの子をなんとなく探すようになったそうな。
そして幾つ目かの孤児院にレイアを見つけた。
でも彼女の振る舞いをみるに、もう幼い子でもないのに、自分は皇族の血を引いていると発言していることがわかった。
孤児院の院長は非常に恐縮しながら、レイアは来たときからこんなだが、
孤児院に寄贈された本で気に入って常に読んでいる本が、本当は皇族の血を引いている女の子が孤児院に入れられている、という内容の小説なので、その本がさらに深く影響を与えたかもしれませんと答えた。
これには皇妃様は、まいってしまわれた。というのも、その本は、皇妃様がご自身で手慰みに書かれた小説だったのだ。
皇妃様が書いたことは隠して変名で出版しているため、孤児院の院長も皇妃様が作者だとは知らない上での発言だった。
そして皇妃様は、自分の本がもたらした影響について、責任を感じられるようになられてしまったらしい。




