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第五十七話


どこまでも冷たい、白く美しい部屋。3人で独占するにはいささか広すぎるこの部屋で、あたしは2人の人間と相対していた。


 正面に立つ俯いたノア様と、その向かいにたつあたし。その隣には悲しげな表情のエイダがいた。


「さて……半年、たったな」


 あたしの声に、ノア様はそっと顔を上げる。


「えぇ。……今ここで、話さなければいけないことがあります」


 ノア様は震えた拳をぐっと握り、視線をエイダの方へと注ぐ。


「エイダ。……貴女は、素晴らしい人だ」


 エイダはその言葉に、ぴくりと肩を振るわせる。


「勇敢で、気高く、強い。……私は貴女のその眩しさに惹かれました」


「ノア……」


「しかし……それは恋ではなく、憧れだったのかもしれません。自分でも愚かなことを言っていると、そう思います」


 ノア様はあたしの方へ視線をむける。その瞳は揺れているが、決して俯くことはしない。


 その直向きさが、誠実さが――あたしは、好きだった。


「私は……隣に立ちたいと、共に歩みたいと言ってくれるジュリに……恋を、してしまったのです」


 ノア様の手が、そっとあたしに手を差し出す。


「一度婚約を破棄したいと言ったにもかかわらず貴女を選ぶこと、簡単に許されることではないと思います。……しかし今度は私が、あなたの隣にたつに相応しいと証明していきたいのです」


 青い瞳が、あたしを捉える。ずっと欲しかったはずの、まっすぐな視線。あたしだけを見る、その視線。


「こんな未熟な私では、貴女の隣に立つには相応しくないかもしれません。しかしそれでも私は……貴女を、選びたい。貴女は、それを許してくれますか?」


 この半年の思いを、記憶をたどりながら。あたしはそっと目をふせた。


 ――これが、あたしの選択だ。


 ゆっくりとその手に、自らの右手を近づける。それに合わせるように手首についた紫色のブレスレットがゆらりとゆれ、不気味にきらりと淡く光った。

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