第四十七話
あのクソ重シスコンヤンデレストーカーのガブリエルすら見つけらんねぇやつ……? そんなもん本当に存在すんのか? 幽霊だろうがなんだろうがあいつなら見つけそうだが。
「あぁ……なんかいたな、そんなやつ。ただのダチだよ」
とりあえず適当に話を合わせる。ここで否定する理由もねぇし、あんま明言しない方が良さそうだ。
にしても気味が悪りぃな。あとでガブリエルに聞いてみるか? ……いや、やめよう。ぜってぇややこしくなる。
「そうですか。では、何故急に変わったんですか?」
エイダはじっと私を見つめる。
「そりゃあ……婚約者とられそうになったら誰だって必死になるだろ。なんでんなこと今更聞くんだよ」
「……最近、ノアの様子がおかしいからです。ぼんやりすることが増えて、この前もほとんど目が合わなくて」
エイダは不安げに瞳を揺らす。普段はあまり見ない、自分を抱きしめる様な腕の組み方。その仕草がエイダの心のうちを語っていた。
「こんな事を言うつもりはなかったのですが……。私は、貴女に勝ちたい。ノアを渡したくない」
エイダは噛み締める様にそういって、縋る様な目でこちらを見つめる。
「だからどの様な手段で貴女が変わったのか、私と貴女の違いは何か。それを、知りたいのです」
初めて聞く弱気なセリフにあたしは言葉を失った。
……まさか、そんな事を言われる日が来るとはな。
正直、答えてやる義理はないと思う。そんな敵に塩を送る様な真似、メリットなんて1ミリもねぇ。
だが……その真っ直ぐな姿勢は、嫌いじゃなかった。
「違い、か……強いていうなら、相手の速度に合わせられるかじゃねえか? お前真っ直ぐ過ぎんだよ」
「真っ直ぐすぎる、ですか?」
エイダは目を丸くして、呆けた様にそう呟く。
「お前は決断も早えし、意思も強い。でも強過ぎて隙がねえんだよ。いつか、置いてかれそうだって思うぐらいにはな」
「私が……ノアを置いていく……?」
エイダは口元に手を当て、ふっと目を伏せる。
「どうするかはお前次第だ。……けど、お前にうじうじされると気が滅入るんだよ。あたしのライバルならシャキッとしろ、シャキッと」
バシンとエイダの背中を叩く。冷たい鎧の感覚が、肌をジワリと冷やした。
「ジュリ……そう、ですよね。私、負けません。貴女のライバルとして」
エイダはいつも通りの凛とした目で、きっとあたしのほうをみる。
「はっ、そうこなくちゃな」
あたしは短く鼻で笑い、ゆっくりと歩を進める。
……揺れてる癖に口だけは一丁前だよな、あたし。
心の中でそう毒付く。けれど何故か、気持ちはどこか晴れやかだった。




