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第四十六話


久々の晴天、軽い体。そのはずなのにどこかすっきりしない。


 あの後めぼしい情報はなかったが……なんか、引っかかんだよな。


 その違和感を押し除けるようにあたしは真っ直ぐ拳を突き出す。骨がひしゃげる感覚が右の腕に伝わってきた。


「さてと……これで、ここも片付いたな」


 魔物の残骸を避けながら周囲の状況を確認する。


 負傷者は0、問題ねぇな。


 『こちら2班。掃討完了だ』


 魔道具で状況を伝えると、すぐに返答が返ってくる。


 『こちら一班。想定より魔物が多いです。援護を要請します』


 『了解』


 短く答えあたしは部下たちを引き連れて指定のポイントへと足を進める。この1ヶ月でこの動きも随分と様になってきた。素早くポイントに移動し、戦闘体制を整える。


「エイダ、状況は!?」


 目の前の魔物を膝蹴りで屠りながら、ぐるりと周りを見渡した。負傷者は2、右手前で守ってる奴がいるから問題ねぇ。その奥に中級2と低級が5、集まってるからわかりやすい……が、建物のせいでさらに奥が見えねぇな。


「ざっとB級1、中級3、低級が20! B級は私が倒します。周囲の援護を!」


 なるほど、そういうことか。


「中級はあたしがやる。お前らは周りの雑魚を!」


「「「了解!」」」


 素早く指示を出し、あたしは瞬時に走り出す。流れていく景色、止まったような魔物たちの動き。


目を見開く一班の連中を尻目に、あたしはケルベロスのような魔物の首を一気に足で刈る。


 魔法によって強化された蹴り。それが叩き込まれた瞬間足の甲に伝わる、ウエハースが折れるような感覚。


 どさりと地に落ちる3メートル級の巨体を足場にし、右手にいるクマ型の魔物の肩へと飛び移る。首を捻るとゴキリと鈍い音がした。関節が外れる音、命が消える感覚。それを気にすることもなくあたしは次の標的をみて、ほぼ同時にそこから飛び降りた。眼下にいた骸骨型の魔物の頭蓋骨。それを踵で粉砕する。


「っとと、こんなもんか」


 一瞬着地でふらつくがすぐに立て直す。息を整え、ゆらりと立ち上がり周囲を見渡した。周りにいる兵士たちの息は上がり、疲労がありありと見てとれた。


 一班のやつら、だいぶ疲弊してるみてぇだな。


「一班、お前ら一回退け! 私がやる!」


 あたしの声に従って、一班の連中は即座に退く。その合間を縫って、拳を、蹴りを、膝を瞬時に叩き込む。


「やっぱすげぇ……なんも見えん……」


「エイダ様みたいな逸材が、まさかこんなとこに隠れてたとは……」


 周りの兵士の声と破壊される魔物の音をBGMに、あたしはひたすら舞い踊る。流れるようなその作業。ものの数分で魔物たちはただの残骸へと変わっていった。


肩で息をして、ゴキゴキと首を鳴らす。


「……流石ですね、ジュリ。まさかこの速度であの数を倒すとは」


「はっ、お前の方も随分と早かったな。B級ぐらいじゃ相手にもなんねぇか」


「それはお互い様でしょう」


 エイダはカシャリカシャリと鎧を鳴らしながらこちらへと歩いてくる。光に照らされた重そうな盾と鎧。そこにこびりついた返り血が、戦闘の跡をありありと感じさせた。


「当然だろ? あたしはお前に勝つって啖呵切ったんだ。この程度倒せなくてどうすんだよ」


「それもそうですね。それにしてもあのジュリがここまで動けるようになるとは。王立図書館に篭っていた頃はどうなることかと思いましたが……」


エイダ息を吐いて想いを馳せるようにそう呟いた。


「あの頃とはちげぇよ。あんな風にウジウジしてらんねぇし」


……まあ、そもそも中身が違うんだけどな。あの頃とは。

 そんなことを知る由もないエイダは、ほっとした様子でこちらを見る。


「もしや、図書館であっていた"誰か"の影響ですか?」


「誰か……?」


「ええ。私はジュリが図書館で何度か男性と会っていたと聞きました」


 聞き覚えのない人物にあたしは眉をひそめる。


 そんな設定ゲームであったか……? いや、あたしもファンブックまで完全に網羅してるわけじゃねぇし、知らねぇ情報があってもおかしくねぇけど。


「ガブリエルが凄まじい剣幕で探していましたが、結局一度も現場を見ることは出来なかったと。ですからてっきりその方の影響かと思いましたが、違いますか?」


 ガブリエルすら見つけられなかった人物……?

 その言葉に、ざわりと胸が騒ぐ。嫌な予感は当たらないものだ。だが……これは何か違う。何故か、そんな予感がした。

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