私がやいちゃった話し|理解すると怖いホラー
2回読むと怖くなる、伏線バリバリホラー
※解説付き
ねえ?覚えていますか?
一緒に歩いた帰り道。
初めてつないだ手のこと。
ずっとずっと前のことなのに、昨日のことのように思い出します。
あれからずいぶん時間が経ちましたね。
お互い年を取ったね 。
本当なら少し悲しいけど君と一緒だから、私は嬉しかった。
歩いてきた証拠だもんね。
でも、ずるいよ。
ひとりで老けちゃって。
若白髪が多いって言いながら黒染めしたりして。
法令線を気にしてちょっと高い化粧品買ったり。
私がいないところでそんなことして。
結婚してこの間産まれた子供は貴方にそっくりで、私には似ていないから少し、やいちゃった。
ごめんなさい、もちろんあなたの子供なんだから大切でした。
でも、私も自分と似た子供がほしいって思うくらいのわがままを許して。
これからまたずっと一緒だからさ。
『ニュースの時間です。先日未明、市内の一軒家で火災が発生し、両親と子供の計3名の遺体が発見されました。遺体で見つかった男性(37)は、死んだ女性がつきまとうと普段から放言しており、警察は事件と事故の両面から捜査をしています』
※今回のショートは伏線を多く仕込んであるので、以下解説パートです。
読後の余韻を大切にしたい方は、このままスルーしてください。
まずは、もう一度読み直してみてください。
違和感が浮かんでくるはずです。
以下その伏線を解説します。
今回のショートを一言でいうと、
”死んだ元カノが怨霊となり、元カレと家族を焼き殺した。”
そういうお話です。
1.視点の切り替え
前半が生きていた頃、後半が死んで怨霊となった後と別れています。
『でも、ずるいよ。ひとりで老けちゃって。』
この時点で「私はもう老いることができない存在」だと示されています。
2.子供への違和感
『 結婚してこの間産まれた子供』
自分の子どもなら「産んだ」と言うはずです。
「産まれた」と表現している時点で、語り手は母親ではありません。
3.やいちゃったの意味
『私には似ていないから少し、やいちゃった。』
この文章は子供が男性にだけ似ていて、自分には似ていない。
そうヤキモチをやいている。
そう読める文章で。
しかし実際は自分は死んでいて男性と別の女性の子供。
だから似るはずがない。
つまり、やいちゃった ≠ 妬いちゃった。
嫉妬した怨霊は何を少し焼いたのでしょうか。
4.怨霊の謝罪
『私には似ていないから少し、やいちゃった。』
この文章は子供が男性にだけ似ていて、自分には似ていない。
だからヤキモチをやいている。
そう読める文章です。
しかし実際は自分は死んでいて男性と別の女性の子供。
もとより似るはずがない。
つまり、やいちゃった ≠ 妬いちゃった。
嫉妬した怨霊は何を少し焼いたのでしょうか。
5.最後の一言
『これからまたずっと一緒だからさ。』
”また”ということは今は一緒ではありません。
逆に殺されたこれからは一緒です。