40話 静かなる襲撃
人気のない場所に入った瞬間、とても強い魔力を感じる。
私はもちろん、商会の人たちもプレッシャーを感じているらしい。
明らかに雰囲気が変わった。
しかも、膨大な魔力の塊は、かなり近くにいる。
それこそ、馬車の付近だ。
そして、ハッとした時には、弓がこちらに向かっていられていた。
咄嗟に反応して叩き落としたが、次がいつ来るか分からないし、かなりの速さだ。
おそらくではあるが、このまま消耗戦になれば勝ち目はない。
そして、私がもう一つ、気になることがあった。
それは、狙った人の位置である。
さっき矢が飛んで来た位置は、完全に私をターゲットとしていないものだった。
つまり、私以外の商会の人たちが襲撃されているのだ。
しかも、気配から察するに、かなりの人数それこそ、10人近くが潜んでいる。
しかも全員手練だ。
この状況下だと、馬車を貸してもらったところも、グルである可能性が高いであろう。
おそらく金を握らされた。
しかも、暗殺に慣れているのか、かなり放射状に広がっていることがわかる。
しかも、精密な気配の探知ができないように、微量の魔力をあちこちに漂わせている。
魔力というのは毒のようなものだ。
毒というのは量次第だとよく言うであろう。
あれは魔力にも当てはまってくる。
具体的にいうなら、魔法使いは魔力を持っている。
しかし、魔力が大きすぎている者は、定期的に魔法を使うことで魔力を消費することが大切になってくる。
魔法や魔力は、日常にかなり役に立つが、魔力じたいは毒になってしまうのだ。
しかし、それは量による。
事実、治癒魔法などであれば魔法によって毒を薬として扱っているのだ。
だが今回の場合は違う。
これは、明確に殺意を持って漂わせている毒だ。
おそらく、魔力をかなりの密度に圧縮することで、毒性の帯びた魔力を放たせているのだろう。
私は、抵抗が強いから大丈夫なのだが、商会の人たちは苦しそうだ。
それでも、普通の人間が浴びれば即死してしまうほどの猛毒なのだから、一応うごくことのできる商会の方々が奇跡と言ってもいい。
とは言え、死なれたら困るので結界をはった。
結界にいる限り、毒を自動で浄化することのできる物だ。
結界をはったことで、先ほどまで苦しそうだった様子が徐々に良くなってくる。
しかし、依然としてこの結界の内部には毒があることは確かだ。
とりあいず治療をしていたが、さっすがの私でも疲れてくる。
しかも、依然として相手側のやりたいことが全く分からないし、ボスが誰かも分からない。
いや、決定的な証拠がない。
正確にいうと、犯人の狙いもだいたいわかるし、犯人も想像がついた。
だが、それを認めたくないだけだ。
つまり現実から逃げたい。
だが、私の推測を決定づけるような声が降ってきた。
「大丈夫?」
とひとこと告げると、私の周りの暗殺者たちが次々と倒れていっている。
これだけ見ていれば、すぐに分かる。
こんさんだ。
こんさんは、はたから見れば優しい人だろう。
自分が疑っていたのに、ピンチの時には助けてくれた英雄だ。
しかし、それは違う。
私は騙されない。
何回も何回も見てきたから。
こんさんの魔力、こんさんの術式、こんさんの魔法も全部だ。
だからこそ分かる。
この襲撃のリーダーはこんさんであることが。




