4話 街におりようかな
本を読み終わって顔を上げたら、アルがいた。
神出鬼没にも程がある。執務室でずっと座っていればいいのに。
何ならこの屋敷にいなくていいって、とか考えていると、アルに、食事の時間であることを教えられた。
でも、言われるまで全然今が昼前であることを、さっき確認したにも関わらず忘れてしまっていた。
忘れっぽい性格は災難なのである。
しかし、まぁ屋敷のご飯は美味しいからいいなと考えていた時に、ちょうどお腹が、「グー」と間抜けな音でなってしまった。ということで、お昼ごはんにした。なぜか屋敷の外にあるごはん屋さんで、いや、おいしかったけど、おいしかったけどもなぜ外なのだ。と思っていたら、どうやら午後に仕事で、王城に行く機会があるらしい。
アル曰く、「お前はどうせ引きこもるんだろ」とのことです。
合っているけれども、的外れではないにしても、私は普通に本が読みたいだけだ。
不満顔をしていることがバレたのか、アルは、「本屋に行って、どんな本があるのか観てくれればいい。」
とのことだ。
正直ありがたい。街をぶらぶらしながら、面白い本を探そうと考えた。物は考えようだな。
街におりることになった私は、ご飯を食べた力で、街をぶらぶら歩いていた。途中でいくつかの本屋さんにであった。でも、本屋さんは買わないと読めないので、全然本は読めていない。
でも、普通に面白そうな物が多かった。
街の本屋さんでは、物語のようなものが多く、ラノベが大好物の私からしたら、かなり天国のようなものだった。
この街には、本屋もたくさんあってびっくりしたのに、びっくりしたのは、図書館があったことだ。王都のように人が多いところでは、治安が悪くなりそうだし、図書館とか無さそうだと思っていたので、とても嬉しかった。
図書館に入って驚いた。普通にいろいろな本があって屋敷にあるような学習的な本や、本屋さんにあった、恋愛系の小説や、本屋さんにはなかった、ラノベではない物語などがたくさんあった。
普通に本を読みたいと思っていたが、普通に本をいろいろみていたので、もう日が傾きかけていた。
一応帰っておかないと、と思ったが、いろいろな本をみて、ちょっとくらいいいんじゃないの?と自分に言い聞かせて、本を手に取ってしまった。
あれは不可抗力だと思う。本がいっぱいあったら読みたくなる、それはしょうがないことだと私は思うのだが、たいていの人は、「頭おかしいんじゃないの?」みたいなことを平気で言ってくる。
でもしょうがない。
そしたらなんと、読もうとした、その瞬間に、図書館の人に、「もう閉館時間なので帰ってくださいと言われてしまった。」
ふと、周りを見ると、人がいなくなっていて、空が真っ暗になっていた。
まだ読んでいないのになんで?
と思ったら、本の横によだれがたれていた。
どうやら、本を読もうとした時に寝てしまっていたらしい。
とりあいず、閉館時間らしいので、本を元の場所に戻そうと手を触れると、本が赤く光りだした。咄嗟に手を引こうとしていると、本がひっついてきた。
図書館職員の人に相談しようとすると、その人は気絶していた。
なぜ?
と思う間もなく、私にひっついてきた本が、形を変えて、なんか生き物のように変化していく。
「なんだろう?」と思いながら眺めていると、その生物の変化が完了した。でてきたのは、でかいドラゴン!
ではなく、ちっちゃくてかわいいきつねだった。
しかも、普通のキツネよりも愛嬌があって、ぬいぐるみみたいな、普通に可愛いキツネだ。
かわいいなと思って愛でていると、突然きつねがしゃべった。
「お前に力を与えよう。」
いや、ツッコミたいところありすぎて、ツッコめないじたいになっている。
あいつの声、かわいいのに男の声だった。
なんかやだなー。
あと、上から目線すぎない?
とか思っていたところ、向こうに、「返事しろ」と言われたので、「だれですか?」と聞くと、「人に聞く前に自分が名乗れ」と言ってきた。
アニメみたいだと思いながらも、私は偉いので、きちんと名乗る。「ルーカラだよー。ルーって呼んでねー。よろしくー。」というと、そっちの「お前に聞いているのはその名前ではない。お前がかつて、この人物に生まれる前の名前だ。」と言われた。
まさか誰かに見破られるとは思っていなかったので、すごくびっくりしたが、まぁそれは後回し、とりあいず、前世の名前である、風香を名乗る。
しかし、このきつね、「いまイチな名前じゃな」とか言ってきたので、「なら、ルーとよべ」といっておいた。
とりあいずいったんこの問題はあとまわし、
まずはこのきつねが、だれなのかという問題なのである。
本人曰く、かつての魔の者の生き残りで、人間を食べないタイプらしい。
彼は、あまり強いわけではなかったので、封印されるだけで済み、その封印も、忘れ去られていたらしい。本来なら、1500年たったらなくなってしまう封印で、それをこのきつねは、自力で頑張って破ったらしい。
それで、名前を聞くと、「名前はないから、こんさんとでも呼ぶがいい。」と言われた。
そして、先ほどの、力を授けるということについて、詳しい説明を聞くのであった。