21話 国王陛下との食事会
非常に気まずい。
私は今、国王陛下と2人で食事会をしている。
おそらく、内密な話があることを察してくれたのだろう。
食事をしている広間は、完璧な人払いがされていて、入ってくるのは食事を運ぶメイドだけ、それでさえ、用件が終わったら外へでていってしまうのだ。
私は、自分から話をするのは苦手だ。
だが、今回の場合は、自分から切り出さないと始まらない。
しかし、あまりこういう場所に慣れていない私は、萎縮しまくっていて、明日言えばいいのではないのか、などと、弱気なことを考えている。
そして、大抵の場合は、そういう話が苦手な人こそ、単刀直入に、一番最初に話すべきだった。
しかし、私はその機会を逸してしまった。
大ピンチである。
そこに、こんさんの声が聞こえてきた。
あわてて耳を澄まして聞いていると、
「大丈夫、俺はずっとみてるんだから、勇気出して切り出しな」
と言われた。
こういうのは、きっかけが大切なのである。
そして、私の場合、、きっかけはこんさんがくれた。
感謝しかない機転の利かせようである。
私は、勇気を出して話を切り出す。
「今日来ていただいたのは、陛下の魔法について聞きたいからです」と。
その瞬間、陛下の表情から余裕が抜け落ち、無表情になる。
今までで一番怖い表情。
長い間、いろいろな修羅場をくぐった表情。
そして、その無表情の中に少しだけ、悲しみが見えた気がした。
そんな陛下は、
「バレてたんだ」
とつぶやくと、せきを切ったように話し始めた。
私は、先代の唯一人の子供として産まれた。
私が唯一の跡取りだったためか、私の父は、いろいろな教育を行ってきた。
その一つが魔法教育だ。
私の祖先であるルイカ様は、呪術を使うことは、本能的に危険だと察知してやめた。
しかし、ルイカ様は、寿命が縮むことが分かったからやめたのだ。
しかし、ルイカ様が一度やろうとしていたことは、ルイカ様の子孫に大きな影響を与えた。
ルイカ様の子孫の半分近い者たちが、呪術を使うようになってしまったのだ。
ルイカ様は、自分の子供たちが、呪術によって体を蝕まれることに、とても気を病まれたが、それを救ったのは、他でもない、ルイカ様の子供だった。
ルイカ様の子どもたちは、産まれたときから教育を受けてきた者たちだった。
その子どもたちに、ルイカは勇気をあたえられた。
しかし、自分の子供たちには教育を施すことができても、他の子供は分からない。
そこで、きちんと呪術を使うことのできる自分の子孫にのみ、呪術を使うことを許可した。いや、許可せざるを得なかった。
そして、呪術を封印し、王族のみがほそぼそと伝承を伝え、国家のために使わせていた。
王族は、子供がたくさんいるわけではない。
基本的に、子供は一人だけである。
そして、その子供が死んでしまった場合、子供を別で引き取る。
そのため、国王の子供は、特別大事にして育てられる。
それはさておき、国王陛下は、魔法の勉強を受けた際に、魔法を使えないことが判明した。
つまり、呪術の使い手だったのである。
このことは、本来秘密になっているはずだった。
しかし、それが秘密になっていなかった。
本来なら、確実に秘密にしなければならない情報を、魔法を教える先生が漏らしたのである。
他でもない、ラーノルト侯爵家、私の実家に。
私の妹を嫁がせようとしたのは、人質としての意味と、国王としての警戒心が入り混じった、打算だった。
ラーノルト侯爵家は、悪意を隠すのが上手だった。
本来なら、とっくに気づかれてもおかしくない計画の全貌や証拠が、どれだけ探しても洗い出せなかった。
しかし、呪術しか国王が使えないことを知られるわけにはいかない。
国王としての使命があった。
だからこそ、国王として振る舞ってきた。
ラーノルト侯爵家は、金を渡すことで黙らせた。
そんなある時、ラーノルト侯爵家が、呪術を使えることをバラすと言ってきた。
当初、ラーノルト侯爵家は、呪術が使えることしか知らなかったはずなのに、いつの間にか能力を知られるようになってしまった。
その能力は、
「何かしらと対話する力」
これは、かなり協力な呪術の部類に入り、よほど運が向いていない限り、使えばしばらくの後、悪くて数時間、遅くて1年で死んでしまう。
国王に対して、その呪術を使って知識ノ魔の者たちを滅ぼせと言ってきた。
呪術を使えということは、死ねと言っているのと同じだ。
だからこそ、国王として、国王としての役割を全うしようとした。
国王としての役割は、後継者を作り、それを周囲に示して納得させることと、国王としての役割を引き継がせることだ。
そのため、あえて下手にでたが、
「時期は任せてもらう」
と言って時間を作り、引き継ぎの準備を進めていった。
そんな中で出会ったのが、ルーだった。
私とにているところのあるルーを、国王に据えようと、準備することにした。
貴族を丸め込み、引き継ぎもアルに託したことで準備ができた。
そしてその日に、霊達と対話し、霊達にルーを襲わせた。
ルーを襲わせたのは、犯人が分かるようにするためだった。
このために、いろいろな資料を置いておいたり、作ったりした。
私はここで、国王として死ぬ。
後を頼んだ。
□ □ □
そう言って、国王陛下改め、ルイスは息絶えた。
国王として、立派な最期だと思う。
少なくとも、私には真似できない最期だ。
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