17話 犯人探し(後編)
先ほど、ラースさんにきいた、呪術の話。
これには伝承がある。
かつて、この世界では、呪術を使っている者たちが一定数存在していた。
呪術は、特定の人しか使えない魔法の一種類と考えられて来たからだ。
それでも、魔の者たちの使っている魔法の一種類ということで、迫害されていた事もあったらしい。
それでも、今よりも呪術を使う人がたくさんいた。
しかし、あるひとりの人の登場によって、呪術は使えなくなってしまった。
それが、聖ルベリオル王国の初代国王、レイナルド・ルイカである。
彼女は、魔法の中でも強力な、千変万化というものの使い手だ。
しかし、これはどちらかというと呪術に近い。
なぜなら、この千変万化は、歴代の中でもルイカしか使えないからだ。
ルイカは、望めば何でもできるこの力を、人々のために利用していた。
しかし、ルイカは一度だけ、呪術の再現をしようとして、呪術を発動させようとしたことがある。
そして彼女は知ってしまった。
呪術には、魔法と違ってリスクが存在することに。
呪術の世界では、まず刻印が刻めるかどうかで一つの関門がある。
刻印は、刻もうとして拒絶されることがほとんどなので、幼いうちはこれにリスクはない。
しかし、呪術の怖いところは、刻印を刻んでも、呪術の行使をする時に代償が必要なのだ。
大抵の場合、その代償というのは寿命である。
自分の使う呪術によって違っても、多くの場合、呪術を使う人ほどはやく死んでしまう。
そんな呪術には、何の皮肉か、人の役に立つものしか、基本的には存在していなかった。
ルイカが実験をするまでは、他者のために命をすてる覚悟のある人たちが、国を豊かにするためのものだったのである。
しかし、ルイカは実験を行った。
ルイカは、発動しようとした際に、自分の生きる力、すなわち生命力が吸われていくことを感じていた。
それで咄嗟に、発動をやめたのである。
ルイカは、「普通の」呪術の再現を行ったため、代償が存在したのだ。
ルイカが実験しようとしていたのは、実際に呪術として存在していた、「自分が作ったものを思い道理に動かすことのできる呪術」である。
これは、呪術としては協力な部類のため、ルイカが発動をやめてしまったのも、納得がいくくらい、変化がすごい呪術なのだ。
だが、ルイカが発動をやめたことで、ルイカから好きだったエネルギー(生命力)が行き場を失い、そのエネルギーが暴走することで、新しい魔法が生まれてきてしまった。
その魔法が、「霊たちに一度だけ命令を聞かせる魔法」である。
ルイカは、この魔法を、ひいては呪術を恐ろしく感じた。
ルイカは、だれにも話さずに、自分にしか解けない魔法で、呪術を存在しなかったことにする。
だれもが寿命を全うできるように。
しかし、ルイカは晩年、一つの村へ行った。それが、その伝承があった村である。
ルイカの指示なのか村人の判断なのか、この話は、村の人たちの間でずっと話されていっているのだ。
という話だ。
ちなみに、この話では村人から聞いたものをそのまま言っているのではなく、村人からきいた言葉をそのまま写した物を、現代語に翻訳したものらしい。
村人に伝わっていた言葉は、存在したのかも疑われていた古代語で、解読に長く時間を食ったらしい。
ストーリーとしてはここまでなのだが、村の長老に会った際、長老が、「国王様なら封印を解くのは簡単なのだがな」と言った。
引っかかりを覚えたがために問い詰めると、驚きの事実が分かった。
なんと、長老にしか伝わっていない、その呪術の封印の解除法が。
長老に教えてもらうと、どうやら王族は、その封印を、ある言葉をいうだけで解除できるらしい。
その言葉は、
「我は今は亡き、ルイカ様の子の子孫。ルイカ様の判断によって封じられしこの術を、自身の身を持って使用し、国家の安寧を保つため、その使用を許可してください。」
である。
そして、これを使用した場合、長老に伝わるようになっているらしい。
そこでは、現国王、ルイスの使用が確認されたらしい。