16話 犯人探し(前編)
先ほど、霊が出現してしまった。
霊は本来出現しないはずなのにあらわれた。
これはつまり、誰かが霊を強化させ、襲わせたことになる。
霊は基本的に、知識ノ魔の者たちを狙う。
知識ノ魔の者たちは普段は分散しているため、ねらうとしたらみんなが集合する、会議となる。
なぜ知識ノ魔の者かというと、魔の者たちは悪魔として、この世界の必要悪として君臨しており、恨みを持っている人が多いことに加えて、知識ノ魔の者たちは、霊にしか分からない気配を放っていて、霊は基本的にそっちに集まってくるからである。
だが、今回の場合は違う。
霊たちは、私を狙っていた。
私を狙うということは、霊たちにはかなり難しいことだと思う。
なぜなら、先ほども言っていた気配があるからだ。
気配は、会議中であればかなりたくさんでている。
霊たちは、私を狙うことができるわけがないのである。
つまり、かなり強い信念を持った霊がいたということである。
しかし、これにも納得がいかない。
自分の意志で行動できる霊は、存在していないことになっている、というか存在しない。
つまり、自分の意志で行動し、私を狙うことは不可能なのである。
だが、自分の意志ではなく、他人の意志であれば可能なのではないのだろうか。
霊を自在にとは言わないにしても、単純な命令であればこなせる可能性がある、というような魔法が存在している可能性だ。
それが一番可能性としては考えられる。
いろいろと考えていたことが一段落して顔を上げると、キュッキュっという音が響いていた。
いつの間にかこんさんが、私の考えていたことを、いつの間に用意していたのかホワイトボードに書いていたのである。(ホワイトボードってあったんだな)
しかし、私もこんさんの知識を活用していたのでお互い様ではあるのだが。
しかし、さらにびっくりしたのは知識ノ魔の者たちの様子である。
相棒の人を含めて、食い入るようにホワイトボードを見つめている。
先ほどのふざけた雰囲気から一変して、である。
どうやら、オンオフをつけかえるのが得意なタイプらしい。
雰囲気も違うものである。
しかし、霊を操る魔法が存在しているのかどうかは、こんさんも知らない。
こんさんは、知識ノ魔の者たちの中でも情報屋なので、こんさんが知らないとなると、思考が堂々巡りになってしまう。
そんな重い沈黙を破ったのは、1人の、以外な人間であった。
ミライさんの相棒である。
その人物は、おそるおそるといった雰囲気で自己紹介をしだした。
「ミライさまの相棒である、ラースと申します。みなさんご存じかと思いますが。」
ということだ。
ラースさんは、「知っています。霊を操る方法」
と言って切り出した。
結論から言うと、魔法ではない。
魔法というのは、人間が使えるものであっても魔の者たちが使えるものであっても、呪文を唱えることができることと、魔力があることが条件になる。
そして、今回の場合は、大昔、それこそこの大陸に人が移住して、少し経つか経たないかの時代に、一回だけやったと言われている呪術である。
呪術は、自分の体に刻印を刻み、呪文を唱えて発動させる。
体に刻印を刻むことのできる人は、この大陸内に1人しか存在しない。
つまり、刻印を刻むことのできる人が死ねば、新しい人が生まれるのである。
刻印を刻むと、刻印として刻んだ呪術のみにしか魔力を使えず、一回に使用する魔力も多いため、かなり危険なのである。
なぜこんさんがその存在を知らないのかというと、こんさんが基本的に本しか読んでいないからである。
ラースさんとミライさんは、口伝えによる伝承も記録していたらしい。
そこで、その伝承を見つけた。
それは、ある地域に代々伝わっている伝承で、それを口伝えで伝えるのがならわしらしい。
伝承を伝えている人に頼み込み、何とか記録を取らせてもらったらしい。
3回更新しようと思います。