12話 謁見式がやってくる
一悶着も二悶着もありながら、いよいよ謁見式が始まるらしい。
しかし、ここで問題が起きた。
今になってめちゃくちゃ緊張してきたのである。
待機していたときは、「なんとかなる、大丈夫」と言い聞かせ続けたのだが、謁見の間に近づくにつれ、とてつもなく緊張していた。
それを和らげたのが、こんさんの言葉だった。
こんさんの喋り声が脳内に降ってくるやつ。
こんさんに、「大丈夫だよ。国王陛下を暗殺しようだなんてたくらんでいない限り、死ぬことはないから。」とのことだ。
すごく勇気の出る言葉だね。普通に緊張がほぐれた。
気合を自分の中で入れているうちに、とうとう謁見の間に到着した。
この世界では、位の高い者から順番に入っていく。
そのため、ただの婚約者である私は一番最後ということになる。
だけど、この文化ひどいと思う。
だって一番くらいの低い最後の人は、全員が揃った状態で、一番注目される。
注目されるのはあまり得意じゃない。
ちなみに、今回の謁見には、国王陛下と、大臣が5人らしい。
一切のルールを知らないまま、謁見が始まった。
とりあいず、「はいれ!」と言われたので部屋に入る。
部屋に入ろうと一歩踏み出した瞬間、大臣方のヒソヒソ声が耳に入ってくる。
気にしないふりをしようとしてもなかなかできず、自分を奮い立てていたものがなくなっていく感覚を感じながら、ゆっくりと前に進もうとすると、突然声が届いてきた。
こんさんである。
救世主こんさんは、「アンタがやると、陰口しか言われなくなる。俺が代わってやる」というなり、私から体の制御を奪い、本来の礼儀である、謁見の際に頭をしたに下げながら、ゆっくりと歩き、国王陛下の前で深々と一礼。
大臣たちは、私の(こんさんの)完ぺきな所作に、言葉を失っている。
国王陛下の、「顔を上げろ」という許可が出たところで、意識が切り替わり、私が話すことになる。
私は、図書室にいたこんさんと会ったことや、話をしたことを国王陛下に告げると、話を締めくくった。
国王陛下や大臣にも、特に呼び止められなかったので、納得のいくものだったのであろうと解釈をし、さっさと退出する。
緊張したが、思った以上にあっけなかった。
こんさんのおかげである。
そして私は、もともと謁見の前に待っていた部屋に行き、再度じっくりと待つことになった。
この部屋にはたくさんの本があるので、暇にはならなかった。
その頃、謁見の間に残された大臣と国王陛下は、話し合いになっていた。
話し合いの内容は、こんさんと、こんさんとつながりを持ったルーについてである。
ある大臣は隔離、ある大臣は現状維持、ある大臣は情報を集めてから考える、などのいろいろな意見が出された。
しかし、国王陛下の鶴の一声で、とりあいず放置しておくことになった。
その後国王陛下は謁見の間を退出なさっていった。
国王陛下の向かう先は当然、ルーがいる部屋である。
ルーがいる部屋につくと、勢い良くドアを開けて入ってきた。
私は本を読んでいた手を止め、前を見ると、国王陛下が立っていた。
国王陛下は、そのままソファーに座ると、アルとの関係について根掘り葉掘り聞いてくる。
アルとどういうことをしているのかとかどういう関係なのかとか、しつこいくらい尋ねてくるので、さっきの謁見が何もなかったかのように気安く話しかけてくる。
さっきと違う、二重人格でもあるんじゃないかと疑ってしまうレベルだった。
ちなみに質問攻めは、ざっと2時間は続いたのである。