11話(閑話、アル視点) 不思議な婚約者
私は、アルノルトと言う、国王陛下の側近をやっているものだ。
普段は国王陛下の書類仕事を手伝ったり、仕事の補佐をしている。
そんな時、突然陛下から呼び出しを食らった。
案内された部屋に行くと、すでに陛下がいて、何かをたくらんでいそうな目をしていた。
この目をしている陛下は危険だ。
いいこと思いついたとか言って、ふざけた茶番につきあわされたり、仕事を体よく押しつけられたり、ろくなことがない。
陛下は、率直に「アル、お前嫁をとれ」と言われた。
陛下の話によると、最近ラーノルト侯爵家にいるカリナと言う娘が成人したらしい。
そして、ラーノルト侯爵家当主は、正直に言って怪しい。
反乱を企てている可能性があることが分かった。
このまま泳がせると危険だ。
そこで、私の側近であり、頼れる片腕であるお前が、カリナを娶れ。
情報局によると、侯爵家当主は随分とカリナを可愛がっているらしい。
いざというときの人質としても、結婚に興味がなく、婚約者が屋敷に来るたびに追い出してきたお前のためにも、ぴったりなものだろう。
と言って自分で満足していた。
しかし、陛下の油断ならないところは、私に相談するよりも前に、すでに私の名前で結婚したいと言う意思がはっきりと入った手紙を書いているところだ。
行動力が、他人が真似できないレベルでいい。
もとより、忠誠を誓っている陛下に提案されたことを断ることはできない。
それを陛下もよく分かっているからこそ、私を選んだのだろう。
こうして、私が「はい」という返事を言った途端に全てがトントン拍子に進み、婚約者が家に嫁ぐ日が来た。
これと言って興味はなかったものの、結婚まで行くのは確実のため、愛想を良くしておこうと考えながら出迎えをしようとしていると、馬車がやってきた。
馬車には、あらかじめむかいに行かせていた3人のメイドと、婚約者本人が立っていた。
そこで違和感に気がつく。
いくらなんでも輿入れ当日は、もっといい服装を着るものではないのか、と。
さらに、カリナと言う娘は、かなり傍若無人だという。
普通にあの格好で輿入れをしろと言われたならば、普通の貴族なら怒るだろう。
馬車から降りたところを見計らって声をかけようと近づくと、突然「えーっと、だれ?」と言われた。
慌てて笑みを取り繕い、自己紹介をする。
わがままな要素のかけらもない、普通の娘だった。むしろ友達のように気さくで、いい人だった。
度胸があるのか何なのかは分からないが、「お前のことを愛するつもりはない」と言ったときでさえ、ひょうひょうと受け流して、楽しく生活をしていた。
普通に楽しそうで、不快にならなかったので放置していた。
そんなある日、ルーと、王城へ行くついでに街に行った。
ルーと別れた後、用事が終わる前には帰っているだろうと思い、用事が終わった後、昼ご飯を食べたあと3時間くらいあとに屋敷に帰ると、だれもいなかった。
びっくりして、心配しながらも探させていたら、夜になってやっと帰ってきた。
しかも、知識ノ魔の者と言う、この国の側近ならばだれでも知っている者を連れて。
ルーは、かなり特別な人間らしいが、本人がそれを理解できていない。
そして、そんなルーに、興味が湧いていた。
少なくとも、結婚しても不快にはならないのだろうなと考えている自分がいた。