エピローグ
暖かな春の日差しが差し込む庭で、カトリーナは静かに微笑んだ。
「ママ!見て!お花が咲いたよ!」
小さな手が彼女のスカートを引く。元気いっぱいの少女が、摘み取ったばかりの花を誇らしげに掲げていた。栗色の髪にエドワードと同じ深い青の瞳。カトリーナとエドワードの娘、アメリアだった。
「まあ、綺麗ね。アメリアが大切にお世話したからね。」
カトリーナが優しく微笑むと、アメリアは満面の笑顔を浮かべ、カトリーナの手に花をそっと乗せた。
「パパにも見せてくる!」
そう言うと、アメリアは元気に駆け出した。その先には、エドワードが息子を抱き上げている姿があった。
「リオン、今日もご機嫌だな」
エドワードは高い高いをして、赤ん坊のリオンを嬉しそうに笑わせていた。ふわふわの金色の髪とカトリーナに似た琥珀色の瞳が、春の陽射しを受けてきらきらと輝いている。
「きゃっ、きゃっ!」
無邪気に笑う息子の姿に、エドワードは目尻を下げた。そして、駆け寄ってきたアメリアを片手で抱き上げると、二人の子どもを腕に抱えながら、カトリーナのもとへ歩み寄った。
「君がここにいてくれるだけで、私は本当に幸せだよ。」
エドワードは穏やかに微笑みながら、カトリーナの頬に優しく触れた。カトリーナもまた、彼の手のぬくもりを感じながら微笑み返した。
「私も……幸せよ。」
彼女は遠い昔、どれほど辛い思いをしていたのかを思い返したこともあった。だが、今は過去ではなく、この愛おしい現在が彼女の全てだった。
「ママとパパ、だーいすき!」
アメリアが無邪気に言うと、リオンも真似をするように「ばー!」と笑いながら小さな手を伸ばした。
「私も君たちが大好きだ。」
エドワードはそう言いながら、カトリーナの肩をそっと抱き寄せた。
風が優しく吹き抜け、家族の笑い声が邸宅の庭に広がる。
──カトリーナの人生は、ようやく穏やかで幸せに満ちたものとなった。
彼女が歩む未来には、もう苦しみや孤独はなかった。
愛する夫と、愛しい子どもたち。
彼女はもう決して独りではなかった。
「さあ、お茶にしましょう。」
そんなカトリーナの言葉に、エドワードも子どもたちも嬉しそうに頷いた。
春の陽射しの下、幸福に満ちた午後が静かに流れていくのだった──。




