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異世界ざこぴぃ冒険たん  作者: ざこぴぃ
第八章・この世界の希望
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第95話・神の子


 ――素戔嗚尊(スサノオ)との激戦から10年後……。


 やわらかい。

 深夜に目覚めた布団の中で、僕以外の誰かが寝ている。なぜか腕枕をしていて、なぜか反対の手で相手の胸を揉んでいる気がする。僕は無意識になんて事をしているのだ。

「んん……はぁ……」

 吐息が聞こえる。胸の大きさからして、アリスではない。エルでもない、エリサとも違う。この感触は記憶の中にあまりない誰かだ。はじめまして?に近い感じがする。

「ん……」

 向こうを向いている彼女が寝返りを打つ。布団を被っていて顔がよく見えない。と、ふいに唇が合わさる。

「ん……はぁ……」

 彼女の腕が僕にしがみつき離れない。……ふと、記憶の中にある甘いスイーツの香りがする。

 その時、パチンッ!と急に部屋が明るくなった。明かりが点いたのだ。

「ん……トイレ……」

 カチャ……キィィィィィィ……。

「ん?」

 布団から顔を出す僕。どうやらアリスがトイレに行った様だ。いい加減、自分の部屋で寝て欲しい。

 そして布団の中の彼女が目をこすりながら顔を出す。

「んんん……朝?」

 裸のまま、僕にしがみついていたのは……プリンだった。どうりで甘いプリンの香りが……。

「……あっ」

「へ……?」

「プリン、おはよう……」

「……ハ、ハ、ハルトっ!!ひぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 城内に響き渡る悲鳴の後、間もなくして僕は廊下で正座をさせられていた。


―――コリータ王国食堂―――


 チュンチュンチュンチュン……。

「おはようございます。国王様」

 食堂に入るとメイド達が朝食の準備をしていた。

「おはよう、マリン。今日は腰の具合はどうだい?」

「おはようございます、国王様。おかげ様で腰の具合もだいぶ良いですわ」

「ご主人様、おはようにゃぁ」

 シッポをパタパタするクルミ。

「おはよう、クルミ。今日は白兎は一緒じゃないのかい?」

「白兎は昨夜、他の兎と遊びに出て帰って来てないにゃ。ふしだらな男は駄目なのにゃ!」

「あ、そ、そうなんだ……」

 耳が痛い。

「まったくぅ、誰に似たのかしら。ふぁ、おはようございます。ハルト様」

 耳がさらに痛い。

「アクアおはよう。今日はギルと子供達を頼むよ」

「ははは!おはようございます、国王様。朝からやられてますなぁ」

 僕のほっぺには赤い手型が付いている。

「ギル、おはよう。勘弁してくれよ。昨夜は一晩中、廊下だったんだから……」

「フンッ!」

「こら!エルッ!ご主人様、おはようございます。エルったら朝からずっとこんな感じで……ホホホッ。あっ!こら!ノエル!挨拶なさいっ!」

「エリサ、エル、ノエル、おはよう。いや、いいんだ。ははは……」

「おはようございます、ハルトさん」

「ハルト殿、おはようございます」

「ミレーさん、ベリアルさん、おはよう。わざわざ来てくれてありがとう」

 カツン……カツン……カツン……。

「アナタ……オハヨウゴザイマス……」

「あ、あぁ……メリダ、オハヨウ……」

 メリダの目が怖すぎる……。

 すると、待ってました!かのようにひょこっとアリスがテーブルの下から顔を出す。

「スケべ」

「ちょ、だからアレは不可抗力で!」

「10年経ってもスケベ」

 言い返す言葉もない。

「あのぉ……ハルト……」

「あ、あぁ、プリン。おはよう。そのぉ……昨夜はすまなかった」

「いや!そうじゃなくて。あれから色々思い出したら、私の方も悪かったな……て。あとたぶん。わ、わ、わたしの初めての人がハルトで……」

 真っ赤になるプリン。

「ちょっと待てっ!その言い方は誤解を生むっ!今すぐ!あっ!」

 ポキポキ……指を鳴らすアリスとメリダ。

『ほほう。いい度胸だな……』

「ちょっ、ちょっ!!」

「わしの妹に手を出しおってからにっ!」

「あなたっ!今日と言う今日は許しませんっ!」

「ちょ、ちょっと!たんまっ!」

 ガッシャーン!!椅子から倒れる僕。近くにあったコップを一緒に落として割ってしまう。

「こらっ!!そこの3人!!朝食抜きですよ!」

『すびません……』

「はははっ!朝から賑やかだのぉ!旦那様!」

「レディ。来るの遅い」

 レディがよしよしと、頭をなでてくれる。カエデがどこからともなく現れ、床を掃除し始めた。

「ママ!パパが怒られてる!」

「はははっ!ステラは女の子を泣かせたら駄目だぞ!」

「わかった!」

 カチャ……。

「ウェスタン国王様と王妃様がご到着です!!」

「おはようございます。とうさん、またやらかしたのですか?」

「兄様。ほどほどになさいませ」

 はぁ、とため息をつく2人……。

「あぁ、サルト、チグサ。おはよう。これには深い事情があって……」

 プリンがしがみついてくる。

「ねぇ……わたしのこと、す、す、す、すす……すき?」

 上目遣いで見てくるプリン。

「……え。いや、そんなつも――」

「おい。ハルト。わしの妹がこんなにも頑張ってるのに『いや』とはなんだっ!もう許さんっ!!」

 ゴゴゴゴゴ……!!

『出でよ!地獄(ヘルズ)――』

 ペシッ!

「もう2人共やめなさいっ!!」

 びくっ!

「ご、ごめんなさい……」

 マリンに怒られ、打たれ弱いアリスが大人しくなる。そして行き場を失った地獄門(ヘルズゲート)が申し訳なさそうに静かに消えていく。

 おい、何て危ないものを召喚してるんだ。

「はいっ!皆、黙って席に付きなさい!」

 ガタ、ガタ、ガタ。

 マリンの一言でようやく静かになり、皆席に着いた。

「こほん。それでは頂きますっ!」

『頂きますっ!』

 カチャカチャ……。

 子供はお菓子を渡すと静かになると言う。大人も同じなのだ。皆黙々とご飯を食べる。

 ミレーの曲が食堂に流れ始め、朝のせわしなさを穏やかにしてくれる……。

 

 ――10年前のあの日から、僕の隣の2席は空席のままだ。

 ゼシカとリンが者食い(モノグイ)を受け、床に伏せしばらくしてから、リンが帰らぬ人となった。ゼシカは意識を取り戻し体調も回復の兆しを見せていたのだが……。子供を産んでから床に伏せることが多くなり、日に日に弱っていき最後には目を覚まさなかった。

 ……あれから10年が経つ。

 この大陸はほとんど魔物もいなくなり、平和な時代を迎えている。ゼシカとリンが生きていたら――と思うといつも涙が出た。

 エリサが教えてくれた……昔、チハヤとリンとメリーの産まれたその日から、この世界は変わったのだと。そしてその歴史は繰り返されるのだと……。


◆◇◆◇◆


 現在、僕には6人の子供が出来た。

 亡くなったゼシカが産んでくれた子は『千春(チハル)』と名付けた。僕の隣で美味しそうにパンをミルクに浸けて食べている。

 レディとの間に産まれた子は『ステラ』と名付けた。ネプちんじいさんが命名した。

 エルとの間に産まれた子は『千夏(チナツ)』と名付けた。ナツトの夏の字を一文字もらった形だ。

 エリサとの間に産まれた子は『ノエル』と名付けた。エリサが娘のエルに兄弟が出来たら付ける予定だったそうだ。

 メリダとの間に産まれた子は『愛花(アイカ)』と名付けた。愛花には戦いの無い平和な時代を生きて欲しいと願い名付けた。

 ――そしてもう1人。いや、6人目の最後の子供は……。

「皆、食べながら聞いてくれ。1ヶ月後の8月に行うお盆祭りには、大陸中からたくさんの人が来ると思う。そこで神の子として6人を大陸中に紹介しようと思う」

 6人目。それは……。

「国王様、お着きになられました」

「入れ」

 カチャ……!食堂の扉が開き、見慣れない親子が入ってくる。

「皆様、初めまして。これからよろしくお願い致します」

 皆が食事の手を止めて2人を見る。大勢の人に見られ、母の後ろに隠れる子供。

「ここに座りなさい」

「はい、ご主人様」

 僕の隣の席へと案内する。

「彼女の名前は秋子(アキコ)。そしてその子供の千秋(チアキ)だ」

 彼女は席に着く前に皆に会釈をした。

「秋子の祖母の名は……秋音(アキネ)。秋音は皆の知っての通り、僕の複製体だ」

 ガタッ!!食堂の空気が変わった。口を開けたままびっくりする者、席からズリ落ちそうになる者、そして駆け寄る者……。

「あなた様が……まさかアキネ様にお孫さんがおられたとは……うぅぅ……」

「はじめまして。ミレーと言います。お会い出来て光栄です。うぅ……」

 普段、気丈なベリアルが泣いている。ミレーも涙が溢れていた。

「あ、はい!初めまして!祖母の事は覚えておりませんが!よろしくお願いします!」

「アリス、これで6人だ」

「うむ。秋音の孫であればスサオ……いや、神族の血が流れているのであろう。長かったがこれでようやく6人揃ったのじゃな……」

「あぁ。これで僕の使命は完結した」

「ご苦労じゃったの、ハルト」

 少し寂しそうな、それでいて何か吹っ切れた様な……そんな顔をアリスはしていた。

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