第73話・魔物との接触
――魔物との戦いから数日後。
「う、ぅ、眩しい……」
「ご主人様!気が付かれたのですか!メリー!!ご主人様が目を覚ましました!」
体のあちこちが痛い。
「俺はどのくらい眠っていた……?」
「3日間です。気が付かれて本当に良かった。うぅ」
涙を流すチハヤの頭を俺はそっとなでる。リンもメリーもかけつけ、無事を喜んでくれた。
「皆ありがとう。無事に戻ってこれたみたいだ。あの後……どうなった?」
「はい。あの後、リンとメリーと見に行ったのですが全ての魔物は塵と化してました」
「そうか……」
「かなりの量のアイテムや金貨が落ちていたので2日かけて、妖精さん達と集めました。後でご確認をお願いします」
「ありがとう」
月子の事はしばらく黙っていよう。
「ナツト様、我ら妖精一族しばしの間、ナツト様、いいえ、ご主人様にお仕え致したくお目覚めを待っておりました。どうぞ、ご自由に我らをお使い下さい」
「あぁ……構わないよ。月子はいないが……」
「いいえ、あなた様の中に月夜見命様と同じ力を感じます。是非、よろしくお願い申し上げます」
俺の中に……そうか。気付いているのか。
眉間にシワをよせると、目の前に文字が出てくる。
【name・ナツト 人間族+神族 固有スキル・鋳造合成 サブスキル・物真似】
月子の能力がサブスキルに入ったのか。おまけに混ざったことで神族の血が入ってる。
「みんな心配かけた。ありがとう。しばらくしたら動けると思う。またよろしく頼むよ」
「はい!ご主人様!」
皆がそれぞれの持ち場に戻る為、病室から出ていく。メリーは俺の包帯やシーツを代えたりと忙しそうだ。
「なぁ、メリー」
「ヘイ?」
「メリー達は作られた複製体……どうなんだ?こんな世界に生まれてきて」
「ご主人タマは少し勘違いしテールオルナー」
シーツをたたみながら、メリーが続ける。
「月子タマは写真から私達を作ったわけではナイ。あの方はご主人タマがこの世界で住みやすい様に過去に行ったのダヨ。きっと命がけだったにチガイナイ」
「どういう事だ?」
「私が作られた時に残ってる記憶でスガ、月子タマは写真の子が存在する時代に行き、本人から複製体を取って来られたと思いメス。写真からはそもそも人間族は作れないのダヨ。想像するにそういう事だと思いレス。私は複製ダガシカシ、記憶以外はほぼ元のメリーでゲス」
「俺の為に命がけで……。そんな……」
「私達の記憶にある命令は『ご主人様を守れ』という命令のみメス。愛しさや、悲しみ、同情などといった命令は受けていませんノダヨ。ですが、それらは自然と芽生えたのでスコト。思いやりと言うココロガ……。これってただの人形ではできませんコメ……フフ」
メリーの話を聞いて妙に納得できる自分がいる。
「たぶん、ご主人様も元は私達と同じ複製体……月子タマがそんな目でご主人様を見ておられましタカ?そうは見えませんでしたケドモシ。だから私達はこの世界で生まれて良かったとか、嫌とか、そういう感情では無く、ここでご主人様を守れるのが幸せなのでメス……」
「俺も複製体……!?そう言われたら……思い当たる事が多い……」
遠くを見たまま固まる俺をメリーがそっと抱きしめてくれた。その瞬間、急に涙が流れてくる。
月子は俺の中で生きている、そのうちひょっこり出てくるかもしれない。だけど目の前にいたのに守れなかった苦しみが今になって重くのしかかる。
自分が複製体という事実より、守れなかった事の事実が勝った。俺の生まれてきた意味はきっと月子を守る事なんだ。
「ご主人様、少しお休み下さい。目が覚めたら、お食事用意しておきますコメ」
そう言うとメリーは俺のおでこにそっとキスをした。俺は目をつむるとゆっくりとまた意識が遠のいていった。
◆◇◆◇◆
チュンチュン、チュンチュン……。
翌日、俺は小鳥の声で目が覚める。
「おはようございメス。ご主人様、お食事の準備が出来ていますコメ」
カーテンを開けながら声をかけてくれるメリー。
「おはよう。今日は体が幾分楽になったな……」
神族魔法を使った副作用で、体中にヒビみたいな跡が残っている。肉体が限界を超えたのだろう。ベッドから起き上がろうとしたら頭がフラついた。
「あぶネイッ!」
倒れそうになった俺をメリーが支えてくれる。俺は体制を崩しメリーの胸に頭からダイブする。
「ご、ご主人様!そんな所にお顔を……あぁ……私興奮シチャ……!」
「失礼します。ご主人様お食事の……きゃ」
「チハヤ!?これは違――」
はっ!とした顔で俺とメリーの目が合う。
「起きたと思ったらすぐそうなんですね。誰でもいいんですね。まったくもぅ!」
バタンッ!と力任せにドアを閉め、部屋を出ていくチハヤ。
「あはは……見られちゃいましタネ。ご主人様、私達も食事に行きましょウカ」
苦笑いをするメリー。あとでチハヤには弁解しておこう。
―――食堂―――
「いただきます」
朝食を取っていると、チハヤとリンから報告があった。
「ご主人様がお休みの間にリザードマン、ヴァンパイア、ウォーウルフ、オーク、ゴブリンがそれぞれ訪問しに来ました」
「魔物っ!?」
「あの子達は魔物だけど、すっごく良い子達だよ!魔界から来たんだけど、戦いたくないんだって。この前の進行の時は隠れてたみたい。話だけでも聞いてあげて欲しい!」
「リン、大丈夫なのか?」
「大丈夫!」
リンが魔物と接触したのか。
「……わかった。100%は信用出来ないから、万が一の時は戦闘も有り得るぞ」
「うんっ!ありがとござます!」
俺は翌日、魔物達に会う約束をした。
そして先日回収されたアイテムを見に行く。金貨、銀貨、剣にペンダント。そして様々な宝石が1階の教室に山積みになっていた。そもそも金貨や銀貨があるという事はこの世界に他にも生活している人がいるのかもしれない。
「ご主人様。こちらの武器を調べた所、1つは妖刀村正と呼ばれる古い妖刀。そしてこちらは獅子王丸と呼ばれる魔剣。邪を払うと言い伝えられています。後は天魔の弓に賢者の杖、命の指輪が御座いました」
「カルティア、ピュー、ありがとう」
どれも見た限り、俺が鋳造した武器が玩具に見える程だった。これはかなりの鍛冶職人が作らないと出来ない物だと……。
チハヤには獅子王丸。リンには天魔の弓、メリーには賢者の杖をそれぞれ渡した。また襲ってくるかもしれない魔物に備えて、今後は訓練も日課に取り入れようと思う。
――そして翌日。魔物達と会う約束の日になった。




