第71話・チハヤ、リン、メリー
―――校内食堂―――
俺達は食事をしながら、今後の事を話していた。
「月子、アルバムのこの子。医療関係を目指して勉強してたみたいなんだけど、この子も複製できる?」
「うむ……ちょっと調べてみる……」
「怪我とか病気の時に必要かなぁ、と思って」
「タイプなのですね、胸の大きめの方が。ふきふき」
チハヤ、口を拭きながら爆弾発言をありがとう。
「お主、そもそも回復魔法とか出来ぬのか?」
「回復魔法?そんなのあるのか?」
知らなかった。あるのなら覚えておきたい。
「そうじゃ。ナツトには回復魔法、お前達にはスキルを覚えてもらうか」
「スキルって後で覚えれるものなのか?」
「複製体じゃからな。わしの物真似で使えそうなスキルを埋め込むだけじゃ」
「へぇ、そうなんだ。あと武器も作らないとなぁ。明日してみるか。チハヤ、食料ってあとどのくらい持ちそう?」
「もって1週間……節約して2週間、ですかね。1人増えましたしね。チラ」
「もぐもぐむしゃむしゃもぐもぐ……ん?」
いや、リンが食料を確保してくれるから生活できてる。
「裏の山から生活水を引いて畑と田んぼを作ろうか。書庫に稲作の本があったはず。あと川岸を造成して、養殖もしてみよう」
「そうじゃな、ここにずっといるわけにはいかぬが。そうじゃな。今は食料が優先じゃな」
「……?」
月子が言う言葉が引っかかったが、今は食料調達を優先にしないと始まらない。
「食料は鋳造も複製できなかったんだよな?」
「基本無機物が対象じゃ。それにわしの複製は物真似スキルにすぎん。5割程度しか再現できんのじゃ。人間族の見た目を複製することはできても、魂を複製となると崩壊が生じる。言語、記憶、喜怒哀楽……とな」
「複製した食料を味見しましたが無味でした。見た目は美味しそうですけど」
「記憶や知識はこれから覚えていくことができるじゃろうから、五体満足でいれるなら良かろう」
「そうだな、わかった」
翌日から俺達は畑に田んぼ、養殖場の開拓を始める事になった。
――数日後。
「よっこいしょ。ようやく、作れたわい」
「神涼メリーと言いメス。ご主人タマ。よろしくお願いしデス」
白い肌に長い黒髪、そして美人な顔立ち。胸もリンに負けないくらいの……。
「どうかなさいましメシ?ご主人タマ?」
耳に髪をかきあげ、覗き込むメリー。
「い、いや、綺麗な方だなぁと。よろしく頼むよ」
「へイッ!」
「お主はあれか。胸が大きければ誰でも良いのか?」
じぃぃぃぃぃ、と俺の目を見つめる月子。
「ば、馬鹿な事言うなよ!そんな目で見てない!」
「ふぅん、まぁいいわい。3人共ちょっと来い」
月子は3人にそれぞれ固有スキルと、サブスキルを付与する。
チハヤには固有スキル・万能。掃除洗濯料理から、食材の鑑定などあらゆる家政婦業を得意とし、サブスキルに嗅覚。危険を察知し警戒できるスキルだ。
リンには固有スキル・千里眼。主に感知や探索を得意とし、サブスキルに召喚スキル。低レベルの召喚獣を呼び出せる。
メリーには固有スキル・司祭。回復や異常状態解除を得意とし、サブスキルに調合。薬などを作ることができる。
こうして、スキルの付与が終わり新しい仲間が増えた。
「鋳造合成!!」
近辺の山で少しずつ採掘した石や砂鉄で武器を作る。
刀、弓、槍、盾、防具、クワ、包丁、フライパンからスプーンまで思いつく限りの物を作っておいた。
「うむ。これだけあれば大丈夫じゃな」
「貯水タンクもようやく出来たし、水路を増やさなきゃいけないね。リン、水の源泉をどこかで見なかったか?」
「うん、たぶんあそこ。明日行ってみる?」
「そうだな。源泉から水道を作って行って、近くに簡易だけどダムを作っておきたいからね」
「わかったぁ」
――その日の夜。
2階の戸締まりを確認しながら部屋に戻る。音楽室に作った3部屋はチハヤ、リン、メリーの3人が使っている。俺の部屋は2階ホールの横に新たに会議室を併用して作った。月子はその隣の教室を1人で使っている。
2階には他に病室1部屋、軽い運動が出来る部屋を1部屋、図書室、薬剤保管庫、食材保管庫、美容室を設計した。ただ変わらず1階は手つかずのままだ。
「ふぅ、今日も疲れた。月子の部屋はもう電気が切れてる。疲れて寝たか」
窓から廊下を挟んだ向こうに月子の部屋が見える。
反対側はチハヤ達の部屋だ。こちらはまだ起きているようだ。明日は源泉の調査だな、と思いながら布団をめくる。
「……ん?ここ、俺の部屋だよな?」
辺りをキョロキョロしもう1度見直すと、やはりリンが俺のベッドで寝ている。
「うぅ……ん。ご主人様。もうお腹ぱ……」
寝言を言いながら寝返りをうつリン。服がめくれ、その、なんだ、もう例の物が見えそうだ。
人の形をしているがこの子たちは複製体。複製体。複製体。俺は自分に何度も言い聞かせる。と、リンが俺の腕を掴んだ。
「ご主人様いらしたのですか……一緒に寝……すぅすぅ……」
リンに掴まれ、胸の間に倒れ込む。顔が真っ赤になるのがわかる。
「んんんっ!(いかんっ!理性を失っては!)」
羊が1匹、羊が2匹、羊がやわらかい、羊がいっぱい、羊が……。
その時だった!ドアをノックする音が聞こえた。コンコン!カチャ……!
「ご主人様、リンが来てませ……きゃ」
「チ、チハヤ!これは違うんだ!リンに引っ張られ……」
俺の右手がリンの胸を既にわしづかみにしていたのは言うまでない。
「……ご主人様。私の胸を揉んでおいて、他の給仕に手を出すとはいい度胸してますよね」
「すびばせん……」
…
……
………
「あぁ、月が奇麗だな」
俺はチハヤにベランダへと追い出され、鍵を閉められた。
……そうだ。ベランダも広くなったし、ここに屋根をつけてバーベキューが出来るようにしよう……。
「寝るか……」
時々思う。俺の記憶はほとんどない、はずだった。バーベキューをした思い出や、部屋の内装等、記憶が徐々に蘇ってる気がする。
月子はいったい何者なのだろう。この世界はどこなのだろう。最近そんな疑問を持つようになった。考えてもわからないが……。
横になり、腕を枕代わりに夜空を見上げる。
「月子に一度話を聞いて……ん?」
上を見上げると、屋上に月子の姿が見える。
「あれ?月子?」
『――全員黙って聞け。今、お主らの頭に直接話しかけている。すぐに電気をすべて切り屋上へ来い。急げ』
すぐにベランダの鍵が開く音がした。チハヤはドアの向こう側にいたらしい。俺は主電源を落とし、チハヤはリンを起こし、メリーも眠たそうに出てきた。
「あれを見よ」
屋上に皆が集まると、月子が指差す。月子が指差す先には、月明かりの下に無数の魔物の群れがいた……。




