第6話・魔法剣とギルド
―――ウェスタン王国―――
――翌朝。
僕とアリスはドロップアイテムの鑑定と売却をするため武器と道具のお店を訪れた。
「――いらっしゃい」
「ドロップアイテムの鑑定、売却と手頃な武器を見せてもらいたいんですけど」
「はいよ。道具の鑑定に時間がかかるから、武器を先に見といてくれや。2階にもあるからよ」
店内はさほど広くはなく、こじんまりとしてはいるが2階にも商品があったりと品揃えは多そうだ。アリスは僕から離れ、ふら~と2階へと上って行く。
僕は安売りであろう無造作に樽に入れられた剣を物色する。刃こぼれした今の剣よりどれも立派に見えた。片手剣、両手剣、槍……どれがいいのかわからない。ガラスケースに入った高級そうな刀の様な物まである。
その時、2階からアリスの声がした。
「ハルトっ!ちょっと来るのじゃっ!」
「ん?」
僕が2階へと向かうと、薄暗い部屋の隅にアリスはいた。
「この剣を買うのじゃ」
「どれ?」
部屋の隅に置いてある樽に、こちらも無造作に入れてある剣のうち1本をアリスが指差した。鞘に入っていてわからないが、持った感じすごく軽い。僕は鞘から剣を抜いてみる。
「え?剣先が……無い!?」
柄まではあるのだが、刃の部分がないのだ。
「アリス、これはさすがに剣先がないと使えないと思うぞ」
「何を言う!それは魔法剣……わしが昔無くした物なのじゃ!」
「魔法剣!?そんな物があるのか!」
「たぶん……じゃが、魔法剣は魔力を使用し続けないと使えない剣なのだ。おそらく人間族ではそうそう扱える者もいまい。だから売れずにこんな所に放置されているのじゃろう。その剣は昔、伝説の鍛冶師ドワーフのユリゲルに作ってもらった名剣じゃ。ほれ、柄をよく見てみろ」
【ありす】そこには下手な字でそう書かれていた。
――キィィィィィィン……!
何か記憶の中にひっかかるものがある。何だろう?思い出せない……。
「アリス。これを複製したら、買わなくていいんじゃ……」
「たわけ。この世界に1本しかない貴重な剣を複製するな。神としてわしが許さん」
違うな、自分の思い出の品をここに置いて置きたくないだけだ。
「ちょっ、アリス!剣にスリスリするな」
「うぅん、懐かしいのぉ」
僕はこの魔法剣なる柄と、アリスが選んだ小型の剣を買うことにした。鎧は動きにくそうだからもう少し考える事にしよう。
「お客さん!鑑定終わったよ!全部で金貨10枚と銀貨3枚ていうとこだな!」
「わかりました。それでお願いします。その代金から、この剣2本をください」
「はいよ。その柄だけの剣は剣先もなくって、玩具みたいなもんだからやるよ。剣先を付けるなら鍛冶屋に行ってみるといい。もう1本の小型の剣は金貨1枚だ」
「ありがとうございます」
「カチーン!お、おもちゃだとぉ……!」
アリスが武器屋の亭主を後ろから殴っていたのは言うまでもない。すべて空振りだが……。
「こなクソ!こなクソ!」
「口わりぃな……」
プンスカしているアリスを連れて僕は冒険者登録をするため冒険者ギルドへと向かった。
なぜ僕が冒険者になるのかと言うと、アリスの最終目的は6人の神の子供なのだが、誰でも良い訳ではないそうだ。それ相当の純粋な血統の種族でなければ神の子は産まれない。血の濃ゆさというわけだ。
そこで冒険者になり、名声を高め有名になることで高貴な血族を探すというわけだ。この国で言うなら王族。『お姫様と子供を作りたい』と言っただけで死刑にされかねない。ならばと有名になった後、お近付きになり、口説く!という設定らしい。誘拐、監禁の案はすでに却下されている。
そういうシチュエーションも1度は体験してみたいとも思うのだが……。
―――冒険者ギルド―――
「ここが冒険者ギルドか。かなり大きいな」
大勢の冒険者がいた。僕が受付に向かうと、新顔か?という感じでジロジロと見られる。
「エルっ!この依頼にしよ!」
「だめだめ!魔法石の採取とか2人では無理だってば!もっと違うのにしよ!」
「えぇぇぇぇぇぇ!」
昨日、宿屋にいた2人だ。昨日は席が後でわかりにくかったが、エルと呼ばれる彼女は耳が尖っている。ギルド内にも何人も同じ耳の人がいる。あれがエルフ族か。
もう一人の彼女はいかにも魔法使いらしい姿だ。眼鏡がよく似合う。こっちは竜人族か?尻尾が見える。しかし、なんだ。胸のアピールというか、産まれもった冒険者というか、襲われやすい体質である事に間違いはない。
「すみません!ちょっといいですか!」
(※ナンパではありません。冒険者ギルドの受付です)
「はい!お待たせしました。冒険者登録ですか?」
「はい。聖都に来たばかりでよくわからなくて」
「わかりました。こちらの用紙に記入してお待ち下さい」
冒険者申込書。住所、氏名、年齢、固有スキル、サブスキルなどなど……あれ?僕って……住所……なくね?
「アリス、住所ってわかる?あと身元引受人」
「住所はそうじゃな。聖地のあった中央都市の住所を書くとして、身元引受人は『アリス』で良いのではないか?」
「あぁ、そのままでいいのね。名前がここで……えっと千家……春人……」
僕はアリスに言われるがままに記入し書類を提出する。しばらく待合の椅子で待っていると、受付から声がかかった。
「ハルトさぁん!センケハルトさんはおられますか?」
「はい。僕です」
「あっ、ハルトさん、ちょっとこちらへ」
受付のお姉さんの眉間にシワがよっている。予想通りというか、たぶんだけど駄目な感じがする。僕はお姉さんに案内され、応接室へと入って行った。




