第61話・レイド開始!
―――ネプチューン城―――
「そうか……」
アリスがつぶやく。ナツト・チガ。魔王城の玉座に座り、息絶えていた人物の名だ。そして……。
「そやつはハルトの複製……じゃな」
「やはり、そんな気はした。ん?待てよ……?」
「ん?待て!と言う事はこの世界にまだ月夜見命様が生きてる可能性があるんじゃないか!月夜見命様は殺されてはいない。どこかにまだ幽閉されているんじゃ!」
「えっ!?そうか……それは気付かなかった。確かにそうじゃ。捕らえられたは言え、あやつが簡単にくたばるはずはない……。実際、天之叢雲はイスタン帝国にあった。と言う事は、無限牢獄もどこかにあるかもしれないと言う事じゃな……」
「カエデ頼む!天之叢雲のあったイスタン帝国周辺をもう1度探ってくれないか!」
「はっ!ただちにっ!」
すぅと消えるカエデ。先日は大臣コブラの件で頭がいっぱいだった。もし牢獄があれば他に捕らわれてる人も他にいるかもしれない。
「まったく、旦那様の発想にはいつも驚かされる。さすがは我が旦那様。あ、おじいちゃん。このハルト殿と結婚する事になったのじゃ。正室として……もう身内みたいなもんじゃ!ハッハッハ!」
ちがうよ。側室って言ったよね。
「なんとっ!ムコ殿!これはめでたい!」
「あらあらまぁまぁ。今夜はお祝いしなくちゃね」
「ちょっと待て、皆、一旦落ち着け」
「うむ。わしはイカをご所望じゃ」
ちがうよ。今はそこじゃないよ。
――こうしてその夜、元魔王城でお祝いが盛大に行われた。タイやヒラメやサキュバスが舞い踊り、イカ焼きを食べすぎたアリスが気分が悪くなり、脱ぎ出したレディを必死で止め、踊っていたタイをネプチンが食べ、酔ったお菊が城内でドラゴン化して城を破壊し、もうそれはそれは……地獄だった。チーン……。
◆◇◆◇◆
――翌日。
「レディよ。これをお前に授ける。天之叢雲にも劣らぬ神器。わしはもう振るう事も無いのでな」
「おじぃちゃん、これは?」
「天十握剣と言う。海を切り裂き、奇跡を起こすと言う神器じゃ。持って行きなさい」
「ん?村正?」
『カタカタカタ……』
レディの持つもう1本の妖刀、村正が小刻みに揺れている。
「レディよ。まさか、村正を持っておるのか?何と奇遇な。それはかつて、互いに思いを寄せた神がそれぞれ持っていたという。離れ離れになっても引き寄せ合うという伝承がある。まるで二人の愛の様じゃな」
「いやいやさすがにそれはウソでは……」
『ガタガタガタガタッ!!』
「ごめんなさい。村正さん落ち着いてください……」
レディは神器・天十握剣を受け取り、僕達は帰路に着いた。
そう言えばネプチンが後で贈り物を送るって言ってたな。楽しみしておこう。
―――ウェスタン王国北の森草原―――
数日後。僕達の周りを魔法球が飛び回る。魔法球はウェスタン王国、コリータ王国、エルフの里、サウスタンの街、そしてイスタン帝国にも配置してある。これで僕達の戦いは近隣諸国に映し出されると言うわけだ。
ここはウェスタン王国北の森を抜けた草原……かつて10万の魔王軍と対峙した場所。ここでいよいよレイドが始まる。登録メンバーがこちら。
【1チーム3人制】
①ハルト、アリス、カエデ
②ミヤビ、エル、リン
③プリン、レディ、ベリアル
④メリダ、セシル(サキュバス)、ロゼ(人魚族)
この12人で挑む魔物がアリスが先程召喚した……地上最悪最強の『マスターロードドラゴン』。何とドロップ金貨1億枚!
「ほんとにいいのじゃな……?」
「あぁ。アリス、やろう」
「武者震いしてきたぞ!」
「天十握剣、村正……行くぞ!」
「おいおい、こいつはヤバい匂いしかしないな……」
「……切る!」
「やばっ!ウケる!!」
「ちょっとデカすぎじゃない……?」
「ぼく、ちょっとちびったかも……」
「回復はお任せを!セシル!ロゼ!行きますわよ!」
「はいっ!メリダ様!」
『グオォォォォォォォォッ!!』
マスターロードドラゴンの雄叫びで、ついにレイドは始まった!
「マサミカ大陸の皆様!こんにちは!さぁ始まりました!最恐最悪の魔物マスターロードドラゴンと勇者ロドリゲスとその仲間達のレイド戦です!解説はコリータ王国より私マリンと――」
「――妹のアクアの2人でお届けします!」
「オオォォォオォォォォォォォォ!!」
各国の街に歓声が上がる。そして魔法球に映し出されるマスターロードドラゴンの姿。
「さてやりますか!まずは手始めに……光の雨極み!!」
数千の光の雨がドラゴンに降り注ぐ!!
「グガャァァァァァァァ!!」
「なっ!皮膚が硬すぎてほぼ無傷か!」
僕はドラゴンの攻撃を避けつつ、魔法剣を抜く。レディとベリアルもドラゴンの足に攻撃を始める!
「月陰咆哮二之太刀!」
「月陰奥義月花!!」
レディとベリアルが斬り込むとドラゴンの足から血が吹きでる!!
「グギャァァァァァァァ!!」
凄まじい雄叫びと同時にドラゴンの尾が飛んでくる!慌ててエルとリンが援護魔法を唱える!
「ちょっ!待て待て待てっ!!ふぎゃぁぁぁ!」
「魔法障壁!」
「高速移動!」
レディがぎりぎりの所でドラゴンの尾をかわす!掩護魔法がナイスタイミングだ。
「私の出番の様ですわね!行きますわよ!『極大火球』♪」
「おいっ!プリン!今は危ないっ!全員――!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴ……!!
地鳴りがしたかと思うと、空から直径数百メートルの火球が落ちてくる!
「全員退避っ!!退避!!プリンのばかっ!!」
ズゴドオォォォォォォォン!!!
超大型の火球が直撃し、ドラゴンが火に包まれる!
「グギャァァァァァァァ!!」
「嘘だろ……あれでも効いてないのか……」
ちょっとだけドラゴンが焦げた匂いはした。
「無双千草!!」
すかさず、見えない速さでミヤビがドラゴンの足を切りつけるっ!!
「煙玉っ!」
カエデがドラゴンの視界を奪う!
「わしに任せろっ!くらえっ!イカの丸焼き投げ!」
ひゅゅゅぅぅぅぅぅぅ………びちゃ。
アリスの食べかけのイカでドラゴンの足がジタジタする!
「アリス!!食べ物を粗末にしては駄目だっ!」
「ちっ!」
イカがもったいない。
「金剛弓連奏!!」
キュイィィィィィン!シュゥゥゥゥゥッ!!
「これはどうだっ!」
7本の矢がドラゴンに向かって飛んでいく!しかしこれも虫に刺された程度か、簡単に振り払われる。
ミヤビ、レディ、ベリアルも必死に攻撃を繰り出すが深手を負わせるまでのダメージはない!
「はっはっは!これは愉快!まったく歯が立たぬ!」
「レディ!」
「旦那様よ!おじいちゃんにもらったこの神器の力をとくと見よ!『海斬覇』!!」
天十握剣が光輝き、剣から召喚された1匹の水龍がドラゴンの尾を噛みちぎるっ!
「ウギャァァァァァァァァ!!!」
「え?嘘だろ。まさかの尻尾が切れた……?」
「うぅ……はぁはぁ……こ、これは、魔力の消費がパない……はぁはぁ……」
「レディ!大丈夫――!?」
尻尾を失ったドラゴンが空中へ飛び立つ!そしてレディめがけて火炎を吹出した!
「ガァァァァァァァ!!!」
「危ないっ!!」
ミヤビがレディをかばい、炎に包まれる!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「まずい!メリダ!2人を下がらせて!回復を!」
「はいっ!あなた!セシル!ロゼ!」
「はいっ!メリダ様!」
「リン!魔法の準備を!エルはリンの姿を隠してくれ!」
「わかった!」
「プリンとベリアルさんでドラゴンを引き付けてくれ!」
「私の出番ですわね!」
「承知!」
「アリス!!」
「くちゃくちゃ……おう!いつでもこいやっ!」
アリスだけなぜか緊張感がない。いつもの事で慣れてはいるが……。
「さぁ!どうなるっ!現在!負傷者2名!次回クライマックスです!」
To be continued.....!




