第60話・本当の魔王
―――コリータ王国城外―――
『鋳造合成!』
ゴゴゴゴ……!!
「よし、これで最後だな」
魔法訓練場の外壁が完成し、これで北東に製錬育成所、北西に剣術訓練場、南西に魔法訓練場、南東に農業漁業育成所の形が出来上がった。ここからは内装作業班にバトンタッチする。
次はガッコウ作りだ。ガッコウは場内四隅の見張り塔内に作る。以前から構想があり、城壁を作る際に空間は確保していた。こちらは細部の制作と内装を入れ込んでいくだけだ。
「マリン、聞こえるか?」
「はい、ハルト国王。いかがされましたか?」
「今、コリータの人口はどのくらいなんだ?」
「現在10万人に満たないくらいですね」
「そうか……世代、種族別の人数を出しておいてくれ」
「わかりました。調べてみます」
僕は東町へと向かう。
「アカシア!待たせた!」
「国王様!楽屋はこの辺りでいかがですか?」
「なるほど、ここなら妖精族も近くていいか。図面を見せてくれ?」
「どうぞ」
「ここをこうして、あぁして、あぁなって……ふむ。鋳造合成!」
ゴゴゴゴゴゴ……!!
現れたのはミレーやエルフ達が音楽を練習するための建物。宿泊も出来るように設計されている。これで本格的に金……いや、幸せを世界に届ける!
「ピューイいるかい?」
「ほいほい!」
「ここでエルフ達と一緒に、音楽の才能のあるものを探してやってくれ」
「合点承知の助!」
誰に聞いたんだ、その単語。エルフと妖精からなるバンド。これは!!金……皆が幸せになるはず!
「えへへ……おっと。アカシア、次の設計をお願いしたい」
「はい。国王様」
「1つ目はガッコウのエレベーター、以前アリスが言ってたやつだ。2つ目は神社、これを妖精の森に作る。3つ目は大掛かりだがゴミの処理施設、水の浄水施設を城の北に建設したい」
「1つ目と2つ目は出来そうですが、3つ目は敷地内では難しいのでは?」
「そうなんだ。だからコリータ王国とネプチューン城の間に第3の街を作る!そこで新たな仕事を生む!ドムドさんにも声をかけておくから、一度設計してみてくれ」
「はっ!やってみます!」
ゴミ問題と汚水問題は前から気になっていたんだよね。基本的に郊外で燃やしたりしてたけど、いずれ行き詰まるから先手を打っておこうと思う。
ガッコウへ戻るとプリンとマリンを呼んだ。
「さてさて国王様。今日はどんな無理難題を?」
紅茶を飲みながらマリンが言う。するどい。
「アリス、ひとつ確認したいのだがこの世界の生物は昔、アリスが生成したものが形を変え色々な種族、色々な魔物に姿を変えた。という認識でいいかな」
「うむ。昔といっても数百年は前じゃがの」
「そうなんですか!興味あり過ぎです!」
興奮するマリン。
「そこでちょっと考えたんだが……金策についてだ。たぶんアリスが作った魔物はある一定の設定の元作られ、今に至る。例えば……」
僕は用意してきたドラゴンの絵を皆に見せる。
「国王様!こ、これはっ!?」
「下手すぎてコメントに困りますわっ!」
「ハルト、お前絵心が……ぷぅ!ぎゃははは!!」
キャッキャッと笑う3人。おい、その位にしとかないと僕は泣くぞ。
「こほん。絵の良し悪しは後で考えるとしてだ。このドラゴンを倒したら金貨が1万枚ドロップします。と言われたらどうする?」
「あっ!そういうことですか!」
「プリン食べ放題じゃないかっ!」
プリン、お前は頭の中までプリンか。
「複製複製複製……ぷぷぷっ!」
「おい、アリス。僕の絵をそこらじゅうに貼りだすな。何の罰ゲームだ」
「しかしじゃ。それはやってみた事は正直ない。例え金貨のドロップを最大値にして、倒せなかったら国が滅ぶぞ?」
「大丈夫。僕とアリスがいるんだから!」
「なっ!?お前っ!!……照れるではないか。ポッ」
その「ポッ!」は流行ってるの?
「わかった、少々時間をくれ。プリン。今から書くものを用意するのじゃ」
「はいっ!ねぇさまっ!」
「マリン、用意ができ次第討伐……いや、レイドを行う。場所は北の大森林。メンバーは……」
僕、アリス、プリン、ミヤビ、レディ、ベリアル、エル、リン、カエデ。ゼシカはウェスタン王国に戻っているから今回は不参加だ。
「わかりました!アリス様の用意が出来次第、ギルドから討伐依頼をかけ、国王様チームのみの参加で承認を取ります!……それと私も見たいのですが?」
「マリン大丈夫だ、魔法球を飛ばす。これで成功すれば副産物で知名度と、このコリータに攻める輩も減るだろう」
ここまでは道筋も出来た。あとはアリス次第だな。
「アリス。明日ネプチューンに説明しに行きたいんだが、他に用事があるか?」
「うむ。イカを仕入れたい」
「あ、うん。海近いもんね」
―――ネプチューン城―――
――翌日。
僕達はネプチューン城に来た。レディとカエデも一緒だ。
「おぉ!アリス殿にハルト殿!よう来てくれた!」
「だん……ハルト殿!アリス様!いらっしゃいませ!」
「だん?」
「おじいちゃん、おばぁちゃん、ただいまっ!」
「おぉ、レディ!よしよし、お小遣いをあげよう!」
「何だ、この田舎の実家に帰った感じは……」
「今日はどうしたんじゃ。皆揃って」
「あぁ、ネプチューン。実は北の大森林で魔物の討伐を行う事になったのだけど、これは故意的に行う討伐なので慌てず見守って欲しいと思って、お願いに――」
「なんじゃと!恋敵を見守るっ!?」
ちがうよ。いちいちツッコまないよ。
「……その時はまた連絡するから心配しないでくれ」
「わかった。また連絡をしてくれ」
「で、今日来たのはもうひとつ確認したい事があってね」
「ようやくイカじゃな」
「イカ?」
ちがうよ。アリス、まだイカは置いといて。
「ここで会った魔王の事を教えて欲しい」
「うむ。ちと長くなるが……あれは――」
――あれは今から数百年前。
マザーと海底神殿を築き、平和に暮らしている時じゃった。その者は突然現れた。「大切な人を救うため、己の命を捧げる覚悟で来た。力を貸して欲しい」と。
その者が欲したのは、神器天之叢雲。それはかつて、神である素戔嗚命の所有物であった。その者は天之叢雲の力で大切な人の呪いを解くと言う……それがその者の願い。
わしは付き合いのある神を通じて素戔嗚命を紹介したのじゃ。……しかし、うまくいかなった。
その者が呪いを解こうとしておったのが……素戔嗚命の姉、月夜見命。そしてその呪いをかけたのが素戔嗚命じゃったんじゃ。
それを知ったその者は、魔物の群れを従え素戔嗚命と戦った。結果は素戔嗚命の勝利。
……そしてわしらはその手助けをしたとして、マザーは呪いをかけられ、わしは地下牢に閉じ込められた。
この玉座に遺体があったそうじゃの。その者は最後まで月夜見命の身を案じておったのじゃろう。かわいそうに……。
その後、天之叢雲は行方知れずになり、月夜見命も無限牢獄に幽閉されたと噂で聞いた。代々語り継がれる魔王とはその者ではない。本当の魔王は素戔嗚命……なのかもしれないのぉ……。
「……と、まぁ、こんな話じゃ。数百年前じゃからの。多少忘れてしまってはおるがの」
「ネプチューン……その者の名は?」
「……ここに来たその者はナツト・チガ。あれは転生者じゃ」
「……そうか」
僕の代わりにアリスが小さくつぶやいた。




