第52話・海底神殿と大岩戸
―――サウスタンの町―――
――図書館前。
「ハルトッ!!」
「旦那様!何事ですかっ!」
「エル!お菊!わからない!アリスの念話では天書とか言う本を開いてしまったとか何とか!」
「天書ですとっ!」
「とにかく中へっ!」
図書館の中へ走りこむ僕達。入口を入るとすぐに異変に気付く。天井から床までぽっかり穴が空き、砂埃が上がっているのだ。
「アリスッ!アリスッ!!」
アリスが中央の穴の側で倒れている。プリンの姿は見当たらない。
「アリスッ!」
「……ちょ、ちょっと待って……おれ……ぐっ……!」
アリスの姿が徐々に消えていく。
「アリスゥゥゥゥゥ!!」
僕は力いっぱい叫んだ!
「そんなっ……!?まさか……アリス……!」
すると、僕の胸の宝石が開いてアリスが出てくる。
「ふぅ。本体なら粉々だったかもしれぬな」
「へ?……そこにいたんかいっ!!」
「うむ。外は暑いからな」
「プリンも中にいるのか!」
「いや、あいつは本体で動いておった。そしておそらく神兵に連れて行かれたと思う。もしかするともう……」
握り拳を作り、悔しそうな顔のアリス。お菊が僕の横で呟く。
「昔……聞いた事がある。天書とは人の手で開いてもただの本……じゃが。神族が開くと天と地の架け橋ができ天界へ帰されると。あれはの誠の話であったか……」
「プリンが里帰りなんて言うからだっ!くそ……!何とかプリンを助けれないのかっ!?」
「今の話で思い当たるとすればネプチューンに頼む事くらいかの……じゃが、ネプチューンがどこにいるのか、生きておるのかすらわからん」
「ネプチューン?どこかで聞いた事がある様な……!確かレディがそんな事を……」
『ぐすん……そうなんれす。わたしは亜人なんです。ぐすん。竜族ではありません。海のネプチューンの子孫、人魚族です……はぁ』
「――そうだ!思い出した!あの時……!レディ!レディ!聞こえるか!」
僕はすぐさまレディに念話器で話しかける。今はコリータにいるはずだ。
「……はぁはぁはぁ……旦那様…」
「……もしもーーし」
「ひゃいっ!!だ、旦那様!失礼しました。ちょっと居眠りを……はは……は」
嘘つけ。
「レディ!急ぎネプチューンの居場所を知りたいっ!」
「……ネプチューン?大岩戸の洞窟じゃが、しかしあそこは……。旦那様、迎えに来てくださいませ。ご案内致します」
「わかった!すぐ戻る!お菊!エル!ここは任せた!」
「わかりました。ネプチューンにもし会えたら、マザーがよろしく言ってたとお伝えくださいまし」
「気を付けてね!」
僕とアリスはきりんに乗りコリータに急ぐ。そして、コリータの城門でレディが待っていた。
「レディ!すまない。行きながら話すよ!しっかりつかまって!」
「はい。旦那様!」
僕は、サウスタンでの出来事を話した。
「なるほど。それでネプチューン神なら天界とのコンタクトが出来るかも?と。しかし、もう数百年も前の話……期待はせぬように」
「うむ……」
僕達は魔王城の西にある海岸に着くと、山手に洞窟が見えた。その洞窟を指差すレディ。
「あの洞窟から地下道で行けるはず……」
僕達はレディの後に着いて行った。
「光球」
洞窟が明るくなる。歩きながらアリスに聞いてみた。
「そう言えば、以前はアリスも天界を行き来が出来たんだよね?もう行けなくなったって事?」
「……実はな」
深刻そうに話だすアリス。
「THE複製は、禁忌の法だと以前にも話したな。わしはハルトを助けるために法を犯し、神に捕えられた。そしてその行為が神々の中で『波紋』を呼んだのじゃ。禁忌なのに、なぜスキルとして存在するのかと。賛否両論じゃった。そして神々は答えを出した。最終的に禁忌のスキルを認めない、その法を犯す者には代償を支払わせると……あれからじゃの。複製を使う度に体がむしばまれていっておるのは……」
「!?知らなかった……。だから、魔力を失い中央都市から動けなくなって……」
「そうじゃ。本来なら肉体に魔力が干渉することはないのじゃが、これが罰と言う事じゃろう。魔力が尽きたわしはもう天界には帰る力がないのじゃ。まぁ、ハルトの体内で魔力を補給しながらであれば生きてはいける。が天界へ帰るというのは膨大な魔力がいるのじゃ。神族魔法10回を1度に放つようなもんじゃな。今のわしの体では持たん」
「話が大きすぎて、頭の整理ができない……」
「ししし……」
「旦那様、着いたぞ。ここが封印の扉だ。ただここは、選ばれし者しか開けれぬと言われている」
レディが立ち止まった先に錆びついた扉がある。扉を引いたり押したりしたがびくともしない。しかしこんな海底の洞窟で魔法を使えば溺死だ。
「どれ、わしが開けてみよう」
アリスが扉に触れると扉が光る!
「この扉は神の力で開くのか……!」
ガガガガガガ……
音を立て錆びついた扉が開いた。その奥に大きな岩戸があった。
「魔王はどうやってこの扉を開けてここまで来たのか。魔王は神族ではないだろう?」
「魔王が神か、あるいは魔王と仲の良い神がいるか、そう考えれば筋は通るのだがな……さて、この大岩戸の中にネプチューン神が本当にいるのかどうか拝見と行こうかの」
この大岩戸も押しても引いても、解除呪文でも、びくともしない。アリスが触れてみたが何も起きない。
「……これは!?」
レディが何か見つけた。大岩戸に小さい隙間がある。小人が1人通れるか通れないかの隙間だ。
「さすがにこれは通れないか。いちかばちか魔法で削ってみるか?」
「いや、それは危ないじゃろう。振動で洞窟が崩落せぬ保証はない。さて、どうしたものか……」
「ワタシなら通れる?」
「ピューイ!」
「へへへ。面白そうなので着いてきちゃいました!」
ピューイは隙間をするりと抜け、岩戸の中に入るとボタンを押した。ガガガ……と、スレるような音がし岩戸が開く。
内側に開閉ボタンがあったらしい。ピューイがいてくれて助かった。
だが岩戸の中には誰もおらず、さらに道が続き上り階段になっている。階段をしばらく進むと地上に出た。
「……そ、そんなバカな!?旦那様、ここは!」
そこは神殿だった。壁面にはネプチューン神と思われる肖像画や、人魚、ドラゴンの絵などが飾られている。
「ここは海底神殿……!しかし海底神殿は遠い昔に滅んだはず……ここはいったい?」
部屋を出て見るとそこは王広間だった。
「レディ、ここは普通に呼吸もできるし、位置的には地上には出たはずだけど?」
「地殻変動かの。神殿の下の海底が隆起し、地上までせり出してきたのじゃ。しかしそれなら外から見てもわか……っ!?まさか!おい!ここは魔王城かっ!?」
「アリス様、旦那様、間違いなくここは魔王城の王広間です……」
レディが緊張した声で答える。レディも知らなかった様だ。
かつてのネプチューンの海底神殿は地殻変動で地上にせり出し、魔物が住み着き魔王城と呼ばれるようになったのだと理解した。
僕達は……知らず知らずの内に魔王城の大広間に着いてしまったのだ。
……そしてベールに包まれた玉座に人影が見えた。




