第51話・妖精ピューイ
―――コリータ王国―――
――祝祭から一夜明け、僕達は片付けに追われていた。
「くんくんくんくん。ハルトお主、なんかイカ臭いのぉ?」
「アリス!?き、昨日、イカ焼き4本も食べたからだろ!いいからそっち持って!」
「むむむっ!」
祝祭は大成功に終わった。聞く所によると、朝からコリータ国への移住希望者が外門に集まっているそうだ。人間族、エルフ族、亜人族、そして……。
「ワタシはピューイ。妖精族です!」
昨夜、花火が終わった後に気が付いた。僕の肩に妖精が止まっていたのだ。ビックリしすぎて、その場にいた全員の口が開いたままになった程だ。
ミレーさんにねぎらいの言葉をかけるはずが、全部こいつが持っていったと言っても過言ではない。しかもミレーさんの歌で号泣、僕の服で鼻水を拭いていた。
妖精ピューイの話では世界樹が植替えの為、伐採された際に世界樹から開放されたらしい。普段はエルフの森までしか行けなかったが開放された事であちこちに行ける様になったのだと言う。
僕がエルフの里から気になっていた『ピューイ』と言う口笛の正体はこの妖精だった。妖精族は普段は見えない希少種だとか。
と言う事は、もしかして昨日の教会の件もこいつは……。
「ところでお兄ちゃん!昨日の事は皆には内緒にしとくね。あれは交尾?て言うのかな。良い物が見れたよ……へへへ」
「んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然、頭を抱え吠える僕。皆が振り返りビックリする。
「ハルト様!大丈夫ですか?お疲れなのでしょう。休憩なさって下さい!」
「いや、マリン大丈夫だ。ちょっと考え事をしてた……」
まずい、こいつはまずい!何とか抱えこまなないと……。
「ね、ねぇ。ピューイさん?ちょっと相談があるんだけど」
「何かな?」
「城下に森を作るのでそこで末永く暮らしていただけませんか?もちろん3食昼寝付きです!」
「うーん……なるほど。いいねぇ、その交渉乗った!」
ニヤリとする妖精。不覚だった……まさかの出来事だ。余計な仕事が増えてしまった……。
――その日の夕食時。
「マリン、僕達がサウスタンの町の城壁を作りに行ってる間にやっておいて欲しい事があるんだ」
「あら?お急ぎですか?」
「あぁ、妖精族の事なんだが……ほっておくわけにいかないし、見えないけど城内には既に50人はいるらしいんだ。それで先にリンとアカシア達で城の北東に森を作れないかな。後、世界樹の伐採木を居住用に加工してやりたいんだ。出来れば世界樹の苗を中心に植えて妖精族に守ってもらいたい」
「まぁ、素晴らしい事ですわ。妖精さんは、金を運ぶって言いますしね。早速段取りしましょう」
「あとそうだな。クルミの所の3人……ショウとスーとシーだったか。森の管理を任せてやってくれ。食料調達や警備をお願いしたい」
「わかりましたわ。明日にでも説明しときます」
「頼む」
こうしてニヤリとするピューイを横目で確認し、妖精族を迎え入れた。翌日にはリン達が早速、妖精族の森の設計に向かい、合わせて魔族のサキュバス達がくつろげる様にと小さいながらも湖を作る事になった。
「コリータ国にもロドリゲス温泉欲しいなぁ。聖なる森の神を放って見ようかなぁ……」そんな事を思っていたらアリスに殴られた。
段取りが済んだ僕とエルは、ハンカチを噛んで涙ぐむゼシカを置いて元竜族の町、サウスタンへきりんに乗り向かったのだった。
―――サウスタンの町―――
「ご主人様、もうすぐ着きます」
「わかった。降りる前に全体の地形を見たいから、周辺を回ってくれるか」
「わかりました」
「なるほど……サウス山からの川も近くにあるし、もしかしたら温泉が引けるかもしれないなぁ……エル、着いたら水脈とついでに温泉があるかも探ってくれるか?」
「了解よ!」
僕達は元竜族の国、サウスタンの町へと着いた。邪神トカゲネビュラの爪痕がまだ痛々しく残っている。
「これはハルト様!来られるなら前もって言ってくだされば!皆、ハルト様がお越しだぞ!」
「ほんとだ!ハルト様だ!ハルト様っ!」
竜族たちが大歓迎で出迎えてくれた。
「大人気じゃの」
「旦那様はどこにいっても、モテるのぉ」
「やれやれ」
「なんか竜臭い」
「そんなに褒めるなよ、照れるじゃないか……て、をい。何か人数が多いぞ」
何人か呼んでない人が混じってる。しかも文句言ってる。
「お菊!プリン!いつの間に!」
「良いではないかぁ。旦那様、里帰りじゃよ、里帰り」
「私も里帰りなのですわ」
お菊はさておき、プリンお前は違う。しかし来てしまったものはしょうがない。
とりあえずサウスタンの町長に会い、城壁、水路の確保まで行う事を伝えて宿を取った。
―――サウスタン宿屋―――
僕達は町の地図を広げて作戦会議を行っていた。
「明日城壁を建てていくから、エルとお菊は水路をお願い」
「合点承知の助」
「わかったよ」
「私は何をしようか!」
「あぁ、プリン……そうだ!ちょうど良かった。アクアに頼まれてたんだけど、図書館が残ってたら『魔法書を探して来て欲しい』て言われてたんだ。何でも貴重な魔法書があるらしく一度複製しときたいらしい」
「ほう、貴重な魔法書か。興味がある……わしも本屋に行くぞ!」
「それならねぇさまと一緒に探しますわ!」
「本屋じゃないけどね。そしたら町長には僕から言っておくから、アリスと2人で探してきて」
「任せるのじゃっ!」
不安しかないが……腹減った、暑い、帰る、て横で言われるよりはいいか。僕はアクアに聞いた本の名前を書いたメモをアリスに渡した。
――翌日。
サウスタンの町長にその旨を伝え、僕は城壁の建築に向った。……と言っても、複製するだけだけど。
「鋳造合成&THE複製!!」
ズドォォォォォンッ!!
サウスタンの町の郊外に1つの城壁が現れ、それを複製していく。コリータの城壁を作る時は慎重にやっていたが、あれから改良を加え、1人でも組み立てが出来る様になっていた。
半日もするとほとんどの城壁が出来上がる。サウスタンは外壁のみで内壁は無いので、残りは内装工事だ。ここからは後日、リン達に任せよう。
「エルっ!こっちはほぼ出来た。後、水源の――!」
――その時だった!
町外れのちょうど図書館のある方向に、天から光が伸びてくるのが見える!
「ご主人様!あれは!?」
「え!?あれは何だっ!」
『ハルトォ!!まずい事になったのじゃ!プリンが天書を開いてしまい――神に居場所がバレっ――すぐに――!?』
「念話?アリス!どうした!アリス!」
アリスからの念話が途絶えた。
「ご主人様!急ぎましょう!嫌な予感がします!」
僕はきりんに乗り、図書館へと向かった……。




